【完結】蟠龍に抱かれて眠れ〜美貌のご落胤に転生?家老に溺愛されてお家騒動に巻き込まれる〜

鍛冶谷みの

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4章 対決 桑名城

6 襲撃

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「増蔵は、髑髏組だったの?」
 賭場で増蔵を見かけてそばによった。
 家を別にしてから、顔を合わせるのは、ほとんど賭場だった。

 増蔵は、色町を縄張りにしていて、そちらの方に入り浸っている。

「まさか、その頃は、わしもまだ餓鬼やで。・・・でも憧れやった。景、夢を見させてくれておおきにな。重いもん背負わせて、すまんかったな」
 頭を優しく撫でられて、思わず抱きついていった。
「おいおい、わしはそんな趣味はないって言うとるやろ。ムラムラするやないか」
「こんなんで、良かったのかな。おれ、髑髏を背負えるだけの男になってた?」
「ええ男や。光徳院さまらしいし、景三郎らしい。上出来っちゃうか」
「よかった~」
「そうだな」
 増蔵が耳元に口を寄せて囁いた。
「もうそろそろ潮時かもしれん。ずらかれ」
「え?」
「こんなことは、長くやるもんやない。意地を見せたればそれでええ。もう十分、お上に刃向かった。この先は危険や。髑髏組は忽然と消える。・・・ええやろ」
 と、得意げに胸を張ってみせた。
「増蔵・・・」
「あほ、泣くやつがあるか。留吉を連れて逃げろ。城下を離れるんや」
「ありがとう」
「こっちこそ、楽しかったぜ」
「若」
 と、留吉が呼びにきた。
「元締のところへ」

 元締の部屋へ行き、羽織を脱いだ。
「ご苦労やったな、景さん。ええ思い出ができた。命懸けやったがな」
 元締にも抱きついた。
「ありがとう。でも、それがかぶき者でしょう?」
「そらそうや。景さんは立派なかぶきもんや。留吉にはいい含めてある。・・・元気でな」
「うん」
 危険が迫っていると、みんな肌でわかるのだ。
「髑髏組は忽然と消える。ええ筋書きや」



 表からではなく、裏からそっと出た。

「留吉、いつからそんな話になってたの?」
「わいも今日初めて聞かされました」
「どこへ逃げるんだ?」
「とりあえずは、上方へ」
「そうか・・・」
 城下を離れることになってしまった。
 そうするべきだとは思うものの、本当にこれでいいの?

「伊織は?」
 さっきから、伊織の気配がない。
「どこ行ったんだろう」
「さあ、すぐ戻ってくるんちゃいます?」
「だといいけど」
 伊織がいないと不安になる。

 もう隠れ家に着こうとするところまで来て、伊織が走ってきた。
 それだけで、異常事態だとわかる。
「若、今すぐ久松さまの別邸へお行きください。殿はお戻りになっておられます」
「式部が? なんで・・・」
 おそらく、取り決めが破られたからだ。

「留吉どの、若を頼みます」
「はい」
「伊織は?」
「賭場が襲撃を受けています。伊賀者の仕業です。少しでも食い止めなければ」
 愕然とした。
 まさか、もう来たのか。
 右京もいるのか?
「おれも行く! 元締を助けなきゃ」
「なりませぬ! 若が行っては足手纏いです」
 いつになく厳しい口調で言う。
 が、思い直したようにそばによると、手を伸ばして頬に触れた。
「生きなければなりませぬ。・・・生きて。私の分まで。・・・よろしいですね」
 微笑んだ。
 踵を返して闇に消えた。

 後を追おうとする景司を、留吉が抱きとめた。
 腰に抱きついて体重をかけるようにして、行かせないようにしている。
「行かせてくれ、留吉!」
「ダメです、若!」
「行かせろ!」
 暴れた。
 賭場の方角の空が妙に明るい。
「まさか!」
 火事か。
 火をつけられた。
「ごめん、留吉!」
 股間を蹴り上げた。



 賭場が燃えている。
 伊織が伊賀者と対峙していた。
 忍びの死体が足元に転がっている。
 なんの感情も持たない冷たい刃物のような表情を、炎が照らし出している。
 伊織の腰が沈んだ。
 動き出す瞬間。
 上から襲いかかる忍びに、逆袈裟で斬り上げた。
 返す刀で、振り向きざまに後ろの敵を斬る。
 鮮やかな太刀捌きに、息を呑んだ。

「さすがだ。早乙女伊織」
「服部毅八郎」
 毅八郎が姿を現した。
「今日こそ決着をつける」
「望むところだ」
「色小姓などと、もう侮りはせぬ。・・・いざ」
 刀を抜いて、構えた。

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