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序(二) 深窓の姫君
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ここからは、姫さまが語られたこの旅の経緯をお話しします。
それは、姫さまとして振る舞わなければならない私が、心得ておかないといけないもの。
道中、おつむの弱い私のために、わかりやすく説明してくださった。
まずは、どうして姫さまが深窓の姫君と呼ばれるのか、というところから。
お父上はもちろん、お殿さま、ご老中でもあられる榊阿波守さま。
お母上は、領内の村の娘で、お殿さまが鷹狩りのおりに見そめられたのだとか。
お城に上られることを頑なに拒み、村で姫さまを産み育てられた。
藩内でもそのことを知る者は少ない。
私もまったく知らなかった。
だから、姫さまのお供を探しているというお話を聞いた時は、本当に驚いたのだ。
特別に選んだのだと姫さまはおっしゃっておられたけど、どうして私のことを知ったのだろう。
何をかくそう、鈍臭くて家事も何をするにも要領よくできない質なのだ。
お料理はすぐに焦がしてしまうし、縫い物はまっすぐに縫えないし、そろばんもちんぷんかんぷん、字だってミミズがのたうったようなもの。
だから、どこかの家に嫁いだところが、苦労しかないことが目に見えている。
姫さまならいざ知らず、何もしなくてもいいような嫁ぎ先があるわけもないのだから。
できることはって?
それは、食べることと、寝ることと、ええっと・・・?
本当にこんな女が、姫さまとご一緒していることが信じられない。
ということで、このお話をいただいた時、親も私もありがたくお受けした。
親からすれば、嫁の貰い手のない娘の働き先ができただけでもありがたいことなのだ。
そう、私は、完全に行き遅れていた。
要するに厄介払い。
兄がお嫁さんをもらうのに、小姑がいては邪魔になるということだ。
あ、私の話はどうでもよかった。
姫さまのお話。
姫さまを見ていて思うのだけど、母上さまはきっとものすごい美人だったに違いない。
その母上さまは、十年前に亡くなられたそうだけれど、姫さまはそのまま村に残り、お育ちになった。
村育ちだからと侮るなかれ。
とても厳しい教育係が村にいて、大名の姫として、どこに出しても恥ずかしくない教養や立ち居振る舞いを学んでこられたようだ。
旅の道中、姫さまとずっと一日一緒に過ごしてきて、本当に素晴らしいお方だと思った。
腰元としての姫さまのお働きは、さすがとしか言いようがない。
恐れ多いことながら、このまま私のお世話をして欲しいと思うほど申し分なかった。
よきに計らえ、ってなんて便利な言葉なの?と感動してぐうたらしっぱなしの私とは、雲泥の差なのだ。
こんな役立たずで、腰元になろうとしていたなんて恥ずかしいくらい。
まあ、姫さまの代わりのお役目なればこそ、なのかもしれない・・・。
姫さまが今回、江戸に赴く目的は、お殿さまと、将軍さまにお目見えすること。
この度、姫さまは将軍さまの養女というなんともありがたいご身分を賜ることになったのだ。
そして、それだけではなく、その道中に寄らなければならない場所があった。
それは、
伊那代藩。
姫さまの嫁ぎ先の候補地。あくまでも候補であって、決まったわけではない。
将軍の養女になられるのは、断っても良いという含みを持たせるためだという。
姫さまの判断に任せると、お殿さまからの御文にも書かれていたと。
でも、そもそもなぜ、深窓の姫君にこの話が降ってきたのか。
それは、将軍さまのお言葉から始まった。
お伺いしたお話を再現してみると・・・
この会話はあくまでも私の想像のもので、実際のものではないのでご容赦を。
「のう、阿波守。どこぞに年頃の姫はおらぬか」
上様が突然おっしゃった。
「はて。年頃と申されましても・・・」
阿波守は困った。大名の姫君は、そのほとんどが幼少の頃からお相手が決まっている。
残っているとすれば、どこかに問題がある姫。
離縁されたとか、お相手が突然亡くなってしまったとか、気鬱の病であるとか・・・
「その姫をいかがなされるおつもりで?」
「余の養女にして行かせたいところがあるのじゃ」
「はあ。それはいずれに?」
「伊那代じゃ」
「伊那代・・・あの?」
前藩主が突然亡くなってしまったために、跡目争いが起き、未だ解決していない。
嫡男はちゃんといる。
いるのだが、うつけだとのもっぱらの噂だった。
そのために、縁談は次々に破談。
家柄は良いというのに、まとまりかけては壊れ、今度はよかろうと思ってもまた壊れ、の繰り返し。
うつけに大事な姫はやれん、ということらしい。
「それは難しうございましょう」
「やはりのう」
「伊那代にご養女を送り込んでどうなさるのですか」
「知れたこと。決着をつけさせる。いつまでも揉めていては、取り潰さざるを得なくなるでな」
「そのような大層なお役目、果たせる姫がおられるとは・・・」
思えないと言いかけて、ふと思い当たる。
「取り潰しても良いのじゃが、あそこは身内でもあるゆえに、そうそう簡単には潰したくないのじゃ」
親戚関係にあるらしい。
「じゃが、大和が藩主に相応しくないと判明したときはやむを得ぬ。その姫が良いといえばそのまま残るし、ダメだと判断すれば取り潰すこととする。その公正な判断が下せるような姫がおらぬかのう」
上様は頭を抱えた。
大和とは、そのうつけの若殿の名前だ。
そんな力がある姫君がそうそういるとも思えない。
将軍の養女という身分を与えるのは、姫を後押しし、大和が大人しく縁組を受け入れ、藩主としての自覚を持てるようにという配慮でもあるのだ。
「良い策じゃと思うたのじゃがのう」
「・・・」
阿波守は言い出すかどうか迷った。
だが、美鶴ならばできるという確信にも似た思いに突き動かされ、ついに
「恐れながら、我が国元に、娘が一人おりまする。十七になりましたが、未だ嫁さず、どこにも出したことがございませぬ。いずれはと思うておりましたが、良い機会なのではと」
「なに、そのほうに隠し子がおったとな」
上様が驚きの声を上げた。
「それは良い」
と膝を打った。
「されど、身分低き家の女子ゆえ、大和さまが承知なされるかどうか」
「大和に否やを言う権利などないわ。もし不服ならば即刻取り潰しじゃと言うてやる」
ということで、とんとん拍子に話は進んだ。
お殿さまの文を持った佐伯さまが、江戸から国元へ参り、姫さまにことの次第が伝えられた。
「姫さまはそれで良いのですか?」
「わらわか?」
姫さまはお笑いになった。
「面白そうじゃから二つ返事で引き受けた」
「えーーっ」
「隠密みたいじゃないか」
ふふふって。
「御身が危うくなるかもしれないのに?」
「うつけの若殿とやらも気になるしな」
「どのようにうつけなのでしょう」
「さあ、それも行ってみての楽しみじゃ」
「まさか、姫さまとして、私がお目見えするのですかー!?」
「そうじゃ」
「嫌でございますーー!」
私は姫さまに取り縋って揺さぶった。が、あえなく却下された。
私と姫さまの取り替えは、姫さまの策だという。
そのほうが動きやすいからの、と当然のようにおっしゃった。
いざ、伊那代。
国入が近づいてきた。
それは、姫さまとして振る舞わなければならない私が、心得ておかないといけないもの。
道中、おつむの弱い私のために、わかりやすく説明してくださった。
まずは、どうして姫さまが深窓の姫君と呼ばれるのか、というところから。
お父上はもちろん、お殿さま、ご老中でもあられる榊阿波守さま。
お母上は、領内の村の娘で、お殿さまが鷹狩りのおりに見そめられたのだとか。
お城に上られることを頑なに拒み、村で姫さまを産み育てられた。
藩内でもそのことを知る者は少ない。
私もまったく知らなかった。
だから、姫さまのお供を探しているというお話を聞いた時は、本当に驚いたのだ。
特別に選んだのだと姫さまはおっしゃっておられたけど、どうして私のことを知ったのだろう。
何をかくそう、鈍臭くて家事も何をするにも要領よくできない質なのだ。
お料理はすぐに焦がしてしまうし、縫い物はまっすぐに縫えないし、そろばんもちんぷんかんぷん、字だってミミズがのたうったようなもの。
だから、どこかの家に嫁いだところが、苦労しかないことが目に見えている。
姫さまならいざ知らず、何もしなくてもいいような嫁ぎ先があるわけもないのだから。
できることはって?
それは、食べることと、寝ることと、ええっと・・・?
本当にこんな女が、姫さまとご一緒していることが信じられない。
ということで、このお話をいただいた時、親も私もありがたくお受けした。
親からすれば、嫁の貰い手のない娘の働き先ができただけでもありがたいことなのだ。
そう、私は、完全に行き遅れていた。
要するに厄介払い。
兄がお嫁さんをもらうのに、小姑がいては邪魔になるということだ。
あ、私の話はどうでもよかった。
姫さまのお話。
姫さまを見ていて思うのだけど、母上さまはきっとものすごい美人だったに違いない。
その母上さまは、十年前に亡くなられたそうだけれど、姫さまはそのまま村に残り、お育ちになった。
村育ちだからと侮るなかれ。
とても厳しい教育係が村にいて、大名の姫として、どこに出しても恥ずかしくない教養や立ち居振る舞いを学んでこられたようだ。
旅の道中、姫さまとずっと一日一緒に過ごしてきて、本当に素晴らしいお方だと思った。
腰元としての姫さまのお働きは、さすがとしか言いようがない。
恐れ多いことながら、このまま私のお世話をして欲しいと思うほど申し分なかった。
よきに計らえ、ってなんて便利な言葉なの?と感動してぐうたらしっぱなしの私とは、雲泥の差なのだ。
こんな役立たずで、腰元になろうとしていたなんて恥ずかしいくらい。
まあ、姫さまの代わりのお役目なればこそ、なのかもしれない・・・。
姫さまが今回、江戸に赴く目的は、お殿さまと、将軍さまにお目見えすること。
この度、姫さまは将軍さまの養女というなんともありがたいご身分を賜ることになったのだ。
そして、それだけではなく、その道中に寄らなければならない場所があった。
それは、
伊那代藩。
姫さまの嫁ぎ先の候補地。あくまでも候補であって、決まったわけではない。
将軍の養女になられるのは、断っても良いという含みを持たせるためだという。
姫さまの判断に任せると、お殿さまからの御文にも書かれていたと。
でも、そもそもなぜ、深窓の姫君にこの話が降ってきたのか。
それは、将軍さまのお言葉から始まった。
お伺いしたお話を再現してみると・・・
この会話はあくまでも私の想像のもので、実際のものではないのでご容赦を。
「のう、阿波守。どこぞに年頃の姫はおらぬか」
上様が突然おっしゃった。
「はて。年頃と申されましても・・・」
阿波守は困った。大名の姫君は、そのほとんどが幼少の頃からお相手が決まっている。
残っているとすれば、どこかに問題がある姫。
離縁されたとか、お相手が突然亡くなってしまったとか、気鬱の病であるとか・・・
「その姫をいかがなされるおつもりで?」
「余の養女にして行かせたいところがあるのじゃ」
「はあ。それはいずれに?」
「伊那代じゃ」
「伊那代・・・あの?」
前藩主が突然亡くなってしまったために、跡目争いが起き、未だ解決していない。
嫡男はちゃんといる。
いるのだが、うつけだとのもっぱらの噂だった。
そのために、縁談は次々に破談。
家柄は良いというのに、まとまりかけては壊れ、今度はよかろうと思ってもまた壊れ、の繰り返し。
うつけに大事な姫はやれん、ということらしい。
「それは難しうございましょう」
「やはりのう」
「伊那代にご養女を送り込んでどうなさるのですか」
「知れたこと。決着をつけさせる。いつまでも揉めていては、取り潰さざるを得なくなるでな」
「そのような大層なお役目、果たせる姫がおられるとは・・・」
思えないと言いかけて、ふと思い当たる。
「取り潰しても良いのじゃが、あそこは身内でもあるゆえに、そうそう簡単には潰したくないのじゃ」
親戚関係にあるらしい。
「じゃが、大和が藩主に相応しくないと判明したときはやむを得ぬ。その姫が良いといえばそのまま残るし、ダメだと判断すれば取り潰すこととする。その公正な判断が下せるような姫がおらぬかのう」
上様は頭を抱えた。
大和とは、そのうつけの若殿の名前だ。
そんな力がある姫君がそうそういるとも思えない。
将軍の養女という身分を与えるのは、姫を後押しし、大和が大人しく縁組を受け入れ、藩主としての自覚を持てるようにという配慮でもあるのだ。
「良い策じゃと思うたのじゃがのう」
「・・・」
阿波守は言い出すかどうか迷った。
だが、美鶴ならばできるという確信にも似た思いに突き動かされ、ついに
「恐れながら、我が国元に、娘が一人おりまする。十七になりましたが、未だ嫁さず、どこにも出したことがございませぬ。いずれはと思うておりましたが、良い機会なのではと」
「なに、そのほうに隠し子がおったとな」
上様が驚きの声を上げた。
「それは良い」
と膝を打った。
「されど、身分低き家の女子ゆえ、大和さまが承知なされるかどうか」
「大和に否やを言う権利などないわ。もし不服ならば即刻取り潰しじゃと言うてやる」
ということで、とんとん拍子に話は進んだ。
お殿さまの文を持った佐伯さまが、江戸から国元へ参り、姫さまにことの次第が伝えられた。
「姫さまはそれで良いのですか?」
「わらわか?」
姫さまはお笑いになった。
「面白そうじゃから二つ返事で引き受けた」
「えーーっ」
「隠密みたいじゃないか」
ふふふって。
「御身が危うくなるかもしれないのに?」
「うつけの若殿とやらも気になるしな」
「どのようにうつけなのでしょう」
「さあ、それも行ってみての楽しみじゃ」
「まさか、姫さまとして、私がお目見えするのですかー!?」
「そうじゃ」
「嫌でございますーー!」
私は姫さまに取り縋って揺さぶった。が、あえなく却下された。
私と姫さまの取り替えは、姫さまの策だという。
そのほうが動きやすいからの、と当然のようにおっしゃった。
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