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第6章
病魔の影(3)
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──ドクンッ。
(やだ……こんな時に……苦しい……拓人……)
拓人は背後から聞こえた物音で振り返る。
「桃華っ!!」
拓人の視界の先には、地面に倒れ込んで丸くなる桃華の姿があった。
拓人は直ぐさま桃華に駆け寄り、大声で桃華に呼びかける。
「おいっ! 桃華!! しっかりしろっ!!」
「……う、苦し……い……」
拓人の脳裏に、ジュンが心臓発作を起こした日の記憶が過ぎる。
あの時のジュンの様子と、目の前の桃華の様子が拓人の頭の中で重なった。
──心臓発作。
桃華は心臓発作を起こしているんだ。
早く誰か呼ばないと、ここじゃ人気がなさ過ぎる。
拓人が助けを呼びに行こうとするも、桃華は拓人の腕を掴み、離そうとしない。
「行か、ない……で……」
「でも、このままじゃ……」
「……た、くと……か、ない……で」
本当にこのままじゃ桃華が──。
埒が明かないので、とっさに拓人は桃華を抱き抱えて走り出した。
それはものすごいスピードで。
ものすごいスピードで病院内に向けて──。
病院内に入り込むなり拓人は大声で叫んだ。
「心臓発作を起こしています!! 誰か! 誰か助けて下さい!!」
無我夢中で叫んだ。
何度も何度も。
TAKUの存在に気づいて指さす人の存在も気に留めることすらなく、大声で──。
──桃華を、助けて下さい──。
桃華は直ぐさま気づいた病院職員によって運び込まれた。
拓人は、桃華が運び込まれた部屋の前にあった長椅子に崩れ落ちるように座ると、全身を襲う恐怖に頭を抱えた。
──俺のせいだ。
──俺があの時、桃華を責めたから。
──俺は最低だ。
桃華……──。
神様、あなたは本当に存在するのですか──?
もし、もしも存在するのならば……。
桃華を助けて下さい──。
桃華を連れて行かないで下さい──。
俺から桃華を奪わないで下さい──。
何故、桃華なのですか──?
俺の勝手だって分かってるけど、俺には桃華が必要なんです──。
大切なんです──。
拓人は必死で願った。何度も何度も。
桃華はなんとか一命を取り留めた。
あとひと足遅ければ危険だったらしい。
桃華が助かった──。
目の前の事実に拓人は胸を撫で下ろした。
拓人が桃華の姿を目にした時、桃華はベッドの上でまだぐっすり眠っているようだった。
拓人は優しく桃華の手を取り握りしめた。
「桃華、ごめんな……」
拓人の目から大粒の涙が桃華の頬にごぼれ落ちた。
桃華は微かに顔を歪めるが、再び気持ち良さそうな寝顔に戻る。
本当は、桃華が目を覚ますまで傍に居てあげたかった。
しかし、病院に駆け付けた桃華の母親に
「桃華を本当にありがとうございます。後は私に任せて今日は帰って下さい」
と言われてしまい、無理に傍に居る訳にもいかず、その日は一旦帰ることにした。
(やだ……こんな時に……苦しい……拓人……)
拓人は背後から聞こえた物音で振り返る。
「桃華っ!!」
拓人の視界の先には、地面に倒れ込んで丸くなる桃華の姿があった。
拓人は直ぐさま桃華に駆け寄り、大声で桃華に呼びかける。
「おいっ! 桃華!! しっかりしろっ!!」
「……う、苦し……い……」
拓人の脳裏に、ジュンが心臓発作を起こした日の記憶が過ぎる。
あの時のジュンの様子と、目の前の桃華の様子が拓人の頭の中で重なった。
──心臓発作。
桃華は心臓発作を起こしているんだ。
早く誰か呼ばないと、ここじゃ人気がなさ過ぎる。
拓人が助けを呼びに行こうとするも、桃華は拓人の腕を掴み、離そうとしない。
「行か、ない……で……」
「でも、このままじゃ……」
「……た、くと……か、ない……で」
本当にこのままじゃ桃華が──。
埒が明かないので、とっさに拓人は桃華を抱き抱えて走り出した。
それはものすごいスピードで。
ものすごいスピードで病院内に向けて──。
病院内に入り込むなり拓人は大声で叫んだ。
「心臓発作を起こしています!! 誰か! 誰か助けて下さい!!」
無我夢中で叫んだ。
何度も何度も。
TAKUの存在に気づいて指さす人の存在も気に留めることすらなく、大声で──。
──桃華を、助けて下さい──。
桃華は直ぐさま気づいた病院職員によって運び込まれた。
拓人は、桃華が運び込まれた部屋の前にあった長椅子に崩れ落ちるように座ると、全身を襲う恐怖に頭を抱えた。
──俺のせいだ。
──俺があの時、桃華を責めたから。
──俺は最低だ。
桃華……──。
神様、あなたは本当に存在するのですか──?
もし、もしも存在するのならば……。
桃華を助けて下さい──。
桃華を連れて行かないで下さい──。
俺から桃華を奪わないで下さい──。
何故、桃華なのですか──?
俺の勝手だって分かってるけど、俺には桃華が必要なんです──。
大切なんです──。
拓人は必死で願った。何度も何度も。
桃華はなんとか一命を取り留めた。
あとひと足遅ければ危険だったらしい。
桃華が助かった──。
目の前の事実に拓人は胸を撫で下ろした。
拓人が桃華の姿を目にした時、桃華はベッドの上でまだぐっすり眠っているようだった。
拓人は優しく桃華の手を取り握りしめた。
「桃華、ごめんな……」
拓人の目から大粒の涙が桃華の頬にごぼれ落ちた。
桃華は微かに顔を歪めるが、再び気持ち良さそうな寝顔に戻る。
本当は、桃華が目を覚ますまで傍に居てあげたかった。
しかし、病院に駆け付けた桃華の母親に
「桃華を本当にありがとうございます。後は私に任せて今日は帰って下さい」
と言われてしまい、無理に傍に居る訳にもいかず、その日は一旦帰ることにした。
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