【旧版】桃色恋華

美和優希

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第5章

初対面(3)

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「さて、うるさい拓人はおらへんなったし、俺らと楽しく話そな?」

 カイトが桃華に話しかける。


「桃華ちゃんの中で俺らの顔と名前も一致してる!?」

 ヒロがすかさず聞く。


「はい! えっと、右からSHINJIさん、KAITOさん、HIROさん、HARUさんです!」


「正確っ! さすが桃華ちゃん!」

 ヒロが右手の親指と人差し指で小さく丸を作った。


「シンジもカイトもヒロも名前はそのまんまだけど、俺は本当はハルキって言うんだ。拓人がNEVERでTAKUって名乗ってるのと同じだよ。だから俺のことはハルキって呼んでくれたらいいから」

 ハルキが持ち前の優しい笑顔で言う。


「それ、おまえが名前で呼んで欲しいだけちゃうか?」


「違うよ! 俺は自己紹介しただけだ!」


 カイトが横槍を入れるので、ハルキは慌ててカイトの言葉を訂正するが、


「さてどうだか。後で拓人に殴られても俺知~らないっ!」


 とヒロにまでからかわれてしまった。


「そういえばさ、桃華ちゃんはNEVERのどこが好きなの?」


 シンジが聞く。


「そうですね、全体的にかっこ良くて、元気が出るとこです! 曲も聴いてて明日も頑張るぞって気になれるんですっ!」


「へぇ~そうなんや! 嬉しいなぁ!」


 カイトが笑顔で言う。


「俺らひとりひとりでなんか思ってることとかある? ……まさか拓人しか見てないとか」


 ヒロがムンクの叫びのようなポーズをしながら聞くので、みんなは一斉に笑った。


「えっと、まずヒロさんとカイトさんはトークがお上手で、面白い人なのかなって印象があります。シンジさんは、物静かでいつも周りを冷静に見ている印象で、ハルキさんは優しそうで大人っぽい印象ですね」


 桃華は両方の手のひらを自分の顔の前でくっつけながら話す。


「だいたい合ってるね、演奏してる時のイメージは?」


 ハルキが頷きながら聞く。


「まず、ハルキさんとヒロさんのギターのハモりは最高ですっ! いつも間奏のデュエットはウットリしてしまいます! シンジさんのベースはしっかり曲を支えてるって感じでジーンときます! カイトさんのドラムはとても力強くてかっこいいです!」


「嬉しいこと言ってくれるね! ありがとう!」


 ハルキはそう言いながら、桃華の頬にそっと手を触れた。


「あ~! ハルキが手出した! こりゃ本当に拓人にボコられるの決定だな!」


 ヒロがハルキの桃華に触れた手を指さして言う。


「そういうつもりで触れたんじゃないから! 誤解するなよ!」


「怪しいもんだぜっ!」


「はいはい、ヒロもハルキも桃華ちゃんの前でかっこ悪いで? 桃華ちゃんは、ほんまに人を褒めるん上手いなぁ~」


 カイトが2人を止めて言う。


「えっ!? 私は思ったことを述べただけですっ!」


「だって桃華ちゃん、これだけ俺らのこと褒めといて本命は拓人やろ?」


 カイトにそう返されて、桃華は頬を赤く染めた。


「桃華ちゃんったら赤くなって~! ほんま素直やな~! 拓人のどんなとこ好きなんや?」


「俺にも聞かせて? 拓人には黙っとくからさ!」


 ヒロもカイトを押しのけるようにして桃華に聞く。


「えっ!? えっと……優しくてかっこ良くて、何に対してもすごく一生懸命で真っ直ぐで。いつも辛い時は助けに来てくれて……」


 桃華は真っ赤な顔を下に向けながら話し続ける。


「めっちゃ拓人愛されとるやん! 羨ましい~」


「憎いね~! 聞いてるこっちが恥ずかしくなってきたわ!」


 カイトとヒロは桃華が話し終えるのを待たずに声を上げた。


「……あ、すみません……」


 桃華はとっさに謝った。


「謝らなくていいよ! 俺らが聞いたんだし! なぁ、カイト!」


 ヒロが桃華の肩を組みながら言った時だった。


 ──ゴツンッ。

 鈍い音が部屋中に響いた。
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