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第5章
初対面(1)
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打ち合わせは順調に進み、拓人は休憩の合間に桃華の様子を見に行った。
「桃華、調子はどうだ?」
「あ、平気……」
桃華は拓人の高校時代の数学の教科書をパラパラめくっていた。
拓人はその様子に安心して
「俺の教科書まだ残ってたんだな。扱い悪くて汚くてごめんな」
と笑った。
「ううん、見た目はボロボロだけど、中は真っ白だから見やすい」
高校時代……デビューが決まってから最低限の日数しか学校に行かなかった拓人の教科書は、確かに何の書き込みもされてなくて真っ白だった。
拓人は桃華にそう言われて、苦笑いを浮かべるしかなかった。
「ずっと勉強してたのか?」
「うん、何かしてないと落ち着かなくて……」
「そうか。今日はそんなに遅くならないと思うから……早く終わるように頑張るよ」
拓人が桃華の頭に手を置いて数回撫でると、桃華はやっと教科書から目を離して拓人を見つめた。
そして、立ち去ろうとする拓人の手を掴んだ。
「どうした?」
拓人は優しく桃華を抱きしめて聞いた。
「ううん、何でもない。ちょっと寂しくなっただけ……」
桃華はそう返すと、拓人から離れ
「ごめんね。お仕事頑張ってね!」
と笑ってみせた。
拓人はそんな桃華にそっとキスをして、再びリビングに戻った。
「遅いぞ拓人! 休憩時間とっくに過ぎてんぞ!」
拓人がリビングに足を踏み入れると、ドアの傍でギターを掻き鳴らしていたヒロが声を上げた。
「悪い……」
と言いながら拓人はみんなの輪の中に入った。
その後も順調に打ち合わせは進み、夕食時には一通り話がまとまった。
「今回はまたひと味違った曲になりそうだね」
一先ず今日はお開きになり、ハルキがそう言って席を立つ。
「なぁ、今夜みんな拓人ん家で夕飯食ってかへんか?」
各々帰り支度を進める中、カイトがみんなに声をかけた。
「何勝手に決めてんだよ!」
拓人は慌ててカイトに向かって言う。
「だって桃華ちゃん居てるんやろ? そろそろ俺らに紹介せぇや!」
「確かに! みんなで一緒に食った方が楽しいぜ!」
カイトとヒロは盛り上がりだした。
「それ、おまえらが楽しみなだけじゃ……」
拓人が2人に言いかけた時
「とりあえず桃華ちゃんの意向を聞いてきたら?」
とハルキに言われ、拓人は自分の部屋に向かった。
「桃華?」
「あ……終わったの?」
桃華は相変わらず勉強していたようで、テーブルの上は消しゴムのカスだらけになっていた。
脇にはいつの間にかお昼を完食したみたいで、空の皿が並んでいた。
「うん、まぁ。あのさ、うちのメンバーが桃華と下で一緒に夕飯食ってきたいって言うんだけど……」
桃華は瞬時に目を輝かせた。
「えっ! えっ!? それって、NEVERのメンバーと一緒に夜ご飯を食べれるってこと!?」
桃華が今日1番の明るい声を出した。
「まぁ……」
「絶対食べる!!」
桃華は勢い良くそう言うと、手鏡を取り出して簡単に身なりを整えて、傍にあったノートとペンと持って拓人に尋ねる。
「……皆さんにサイン頼んでもいいかな?」
拓人は苦笑しながら
「頼んでやるよ」
と言った。
桃華が早く下に降りたそうにするので、拓人はそのまま桃華を連れて下に降りた。
「桃華、調子はどうだ?」
「あ、平気……」
桃華は拓人の高校時代の数学の教科書をパラパラめくっていた。
拓人はその様子に安心して
「俺の教科書まだ残ってたんだな。扱い悪くて汚くてごめんな」
と笑った。
「ううん、見た目はボロボロだけど、中は真っ白だから見やすい」
高校時代……デビューが決まってから最低限の日数しか学校に行かなかった拓人の教科書は、確かに何の書き込みもされてなくて真っ白だった。
拓人は桃華にそう言われて、苦笑いを浮かべるしかなかった。
「ずっと勉強してたのか?」
「うん、何かしてないと落ち着かなくて……」
「そうか。今日はそんなに遅くならないと思うから……早く終わるように頑張るよ」
拓人が桃華の頭に手を置いて数回撫でると、桃華はやっと教科書から目を離して拓人を見つめた。
そして、立ち去ろうとする拓人の手を掴んだ。
「どうした?」
拓人は優しく桃華を抱きしめて聞いた。
「ううん、何でもない。ちょっと寂しくなっただけ……」
桃華はそう返すと、拓人から離れ
「ごめんね。お仕事頑張ってね!」
と笑ってみせた。
拓人はそんな桃華にそっとキスをして、再びリビングに戻った。
「遅いぞ拓人! 休憩時間とっくに過ぎてんぞ!」
拓人がリビングに足を踏み入れると、ドアの傍でギターを掻き鳴らしていたヒロが声を上げた。
「悪い……」
と言いながら拓人はみんなの輪の中に入った。
その後も順調に打ち合わせは進み、夕食時には一通り話がまとまった。
「今回はまたひと味違った曲になりそうだね」
一先ず今日はお開きになり、ハルキがそう言って席を立つ。
「なぁ、今夜みんな拓人ん家で夕飯食ってかへんか?」
各々帰り支度を進める中、カイトがみんなに声をかけた。
「何勝手に決めてんだよ!」
拓人は慌ててカイトに向かって言う。
「だって桃華ちゃん居てるんやろ? そろそろ俺らに紹介せぇや!」
「確かに! みんなで一緒に食った方が楽しいぜ!」
カイトとヒロは盛り上がりだした。
「それ、おまえらが楽しみなだけじゃ……」
拓人が2人に言いかけた時
「とりあえず桃華ちゃんの意向を聞いてきたら?」
とハルキに言われ、拓人は自分の部屋に向かった。
「桃華?」
「あ……終わったの?」
桃華は相変わらず勉強していたようで、テーブルの上は消しゴムのカスだらけになっていた。
脇にはいつの間にかお昼を完食したみたいで、空の皿が並んでいた。
「うん、まぁ。あのさ、うちのメンバーが桃華と下で一緒に夕飯食ってきたいって言うんだけど……」
桃華は瞬時に目を輝かせた。
「えっ! えっ!? それって、NEVERのメンバーと一緒に夜ご飯を食べれるってこと!?」
桃華が今日1番の明るい声を出した。
「まぁ……」
「絶対食べる!!」
桃華は勢い良くそう言うと、手鏡を取り出して簡単に身なりを整えて、傍にあったノートとペンと持って拓人に尋ねる。
「……皆さんにサイン頼んでもいいかな?」
拓人は苦笑しながら
「頼んでやるよ」
と言った。
桃華が早く下に降りたそうにするので、拓人はそのまま桃華を連れて下に降りた。
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