【旧版】桃色恋華

美和優希

文字の大きさ
上 下
55 / 95
第4章

拓人の部屋で(2)

しおりを挟む
「幸せ……拓人にこんな風にしてもらえて。私の人生の良いところ、この日のために全部取ってたのかな?」

 桃華は幸せそうに微笑む。


「桃華は今まで辛いこといっぱい耐えてきただろうから、その分幸せにならなきゃな!」


「でも……良いところ全部使い果たした気がする……」


「また桃華はそんなこと言う! もっと気持ちを強く持て! もっと幸せになってやるぞって」

 拓人は桃華の顔を見つめた。


「人間って、意外と心で感じたように動く生き物だからな。弱い気持ちに左右されるのは良くない。同じように気持ちに左右されるならさ、良い方向に考える方がいいだろ? それならいっそ、自分はこうなりたいと思ったことを、こうなるんだって思い込ませてしまおうぜ!」


「拓人、私もっと幸せになる! もっと長く拓人と一緒に居る!」

 桃華は力いっぱい拓人に抱き着いた。


 拓人はそんな桃華の頭を撫でながら、

「その意気だ」

 と笑いかける。


 桃華は少し照れ臭そうに笑うと、

「えいっ」

 と一声上げて拓人をベッドに押し倒し、唇を奪う。


「驚いた?」


 桃華は嬉しそうに笑う。


 拓人は一瞬驚いたような嬉しいような表情を見せ、今度は拓人が桃華の唇を奪う。


「仕返しだ」


「えへへ、仕返しされちゃった」


 桃華は嬉しそうに笑って、拓人の胸板に頬を乗せてぴったりとくっついた。


 拓人は自分の上に覆いかぶさる桃華を抱き締め、頭を撫でる。


「可愛い……」


「そうかな?」


 桃華は顔を上げ、恥ずかしそうな表情を浮かべる。


「そうだ。俺の中では桃華が1番可愛い」


 今度は桃華の目を見ながら言う。


 あまり可愛いとか言われ慣れていない桃華は恥ずかしさに耐えられなくなり、目を逸らして拓人の胸元に顔を隠した。


「どうした?」


「ん……何でもない……」


 拓人はそのまま桃華ごと身体を反転させ、今度は拓人が桃華の上に覆い被さる状態になった。


「きゃっ」


「きゃっ……じゃねぇよ」


 桃華は真っ赤な顔を覗かせる。


「だって、拓人がそんな真剣な表情で可愛いとか言うから……」


「悪いか?」


「……悪くないです」


 拓人はそんな桃華を見ると、勝ち誇ったような笑みを見せた。


「でも、そういう拓人はかっこいいもん……」

 桃華は顔を逸らしながら恥ずかしそうに言う。


「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか」


 拓人は桃華の頭を撫で、桃華の額にキスをした。


 桃華はくすぐったそうに目をつむる。


 拓人の唇は、桃華の額から頬に移動し、そしてお互いに唇を重ねた。


「好きだ……桃華」


「私も、大好き……」


 桃華は唇を離す拓人の頬に両手を添え、再び唇を重ねさせる。


「桃華……?」


「もっと、して欲しい……ダメ……?」


 拓人は優しく微笑むと何度も唇を重ねた。


 何度も何度も。


 次第に自然とお互いに舌を絡めていた。


 今度は優しく、ゆっくりと。


 舌を動かす度に、桃華の口から漏れる甘い声と少し恥ずかしいキスの音だけが部屋中に響き渡った。


「桃華……愛してる」


 拓人は唇を離すなり、桃華を抱きしめて耳元で囁いた。


「拓人、私も……愛してる……」


 桃華も甘い声で囁くと、拓人の気持ちに応えるように拓人の身体に腕を回す。


 それを合図に、拓人は桃華の首筋に顔を埋めて、唇を伝わせた。


 拓人の手が少しずつ桃華の身体に優しく触れる。


 その度に、部屋中に桃華の甘い声が響いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

自信家CEOは花嫁を略奪する

朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」 そのはずだったのに、 そう言ったはずなのに―― 私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。 それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ? だったら、なぜ? お願いだからもうかまわないで―― 松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。 だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。 璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。 そしてその期間が来てしまった。 半年後、親が決めた相手と結婚する。 退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

〖完結〗私が死ねばいいのですね。

藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。 両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。 それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。 冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。 クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。 そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全21話で完結になります。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

再会は甘い誘惑

真麻一花
恋愛
最低の恋をした。 不実で、自分勝手な彼に振りまわされるばかりの恋。忘れられない恋となった。 あれから五年がたつというのに、思い出せば未だに胸を突き刺す。それが、ただの不快感であれば良かったのに。 会社からの帰り道、すれ違いざまに振り返った先に、五年前別れた彼がいた。再会した彼は、別人のように穏やかで優しい、誠実そうな男へと変わっていた。 だまされない。もう、私に関わらないで――……。 小説家になろうにも投稿してあります。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

処理中です...