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第4章
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拓人が去って行き、1人狭くて薄暗いスタッフルームに残されるミカ。
ミカは涙で床を濡らした。
不思議とこういう時って、仲良くしてた頃の記憶が鮮明に蘇る。
そんな時だった。
扉が再び開いた。
ミカは思わず顔を上げたが、期待とは違い、そこに居たのはカイトだった。
ミカはそのまま小さくため息をついてうつむいた。
「拓人やなくてごめんな?」
カイトはひざまずいてミカに話しかけたが、ミカは無言のままだった。
「俺……おせっかいやったみたいやな」
「そんなことない……ありがとう」
ミカは小さな声で答える。
「床やと冷えるから椅子座り? 持って来たるから」
カイトが再び立ち上がろうとした時、ミカはカイトの上着の裾を引っ張った。
「ミカね、完全にフラれちゃった……大嫌いって言われた……ミカ、取り返しのつかないことしちゃった……」
ミカはそのまま泣き崩れてしまった。
どこにも行くなと言わんばかりにミカがカイトの上着の裾を引っ張るので、カイトはそのままミカの隣に腰を下ろした。
「ミカ……小さい頃からずっと拓人だけを見てきたのに……本当にダメになっちゃった。カイトくんも仲直りできるように協力してくれたのに……」
「俺こそ何も力になられへんくてごめんな」
ミカは首だけ横に振って答える。
「もとはと言えばミカが悪いんだし……もう、本当に無理なのかな……」
「どうしても……拓人やないとあかんのか?」
ミカは黙ったまま頷く。
「何でやっ……! こないにミカちゃん傷つける男のどこがそんなにええんや……」
「何よ……カイトくんらしくないわね。拓人の良さはカイトくんだって知ってるでしょ?」
「せやけど……っ」
「拓人と出会ったのは、確かまだ幼稚園に入った頃だったわ……」
そのままミカは話しはじめた。
拓人との思い出を。
──ミカと拓人が出会ったのは、まだ2人が3歳だった頃。
公園でこけて泣いている拓人をミカが助けたんだ。
「だいじょうぶ?」
3歳のミカが聞くと
「つまずいてころんじゃった~いたいよ~」
3歳の拓人は膝を擦りむいた程度だったが大泣きだった。
「男の子なんだから、そんなに泣かないのっ! お家はどこ?」
「ふぇ~ん、ひっく……いたい……」
泣いてばかりの拓人に、ミカは仕方なく、ミカの家に拓人を連れて行き、ミカの母親に拓人を手当てしてもらった。
これがミカと拓人の出会い──。
ミカの第一印象は、“この程度の怪我で大泣きするなんて、なんて弱い男の子なの!?”だった。
拓人とはそれから良く公園で一緒に遊ぶことが増え、小学校は同じ地元の小学校に入学した。
拓人は男の子の中で1番小さくて、泣き虫。
それゆえ、いつもクラスの男子にいじめられていた。
「おい、チビ! おまえ今俺にぶつかっただろ!」
「ぶつかってねぇよ!」
「うそつけ! チビのくせに! チ~ビチ~ビ!」
「うるせぇよ! ……ふぇぇ」
拓人はすぐ涙ぐむ。
「うわっ! 弱虫タクトがまた泣きそうだぜ?ギャハハ!」
「ちょっと! タクトいじめるのやめなさいよ!」
小学生のミカはいつも拓人がいじめられているのを見たら助けた。
「うわっミカだ……逃げろ!」
そして、いつもミカはそんな拓人を慰めた。
ミカはいつしかこう思うようになっていた。
“タクトは弱いからタクトにはミカが居なくちゃ!”
ミカは涙で床を濡らした。
不思議とこういう時って、仲良くしてた頃の記憶が鮮明に蘇る。
そんな時だった。
扉が再び開いた。
ミカは思わず顔を上げたが、期待とは違い、そこに居たのはカイトだった。
ミカはそのまま小さくため息をついてうつむいた。
「拓人やなくてごめんな?」
カイトはひざまずいてミカに話しかけたが、ミカは無言のままだった。
「俺……おせっかいやったみたいやな」
「そんなことない……ありがとう」
ミカは小さな声で答える。
「床やと冷えるから椅子座り? 持って来たるから」
カイトが再び立ち上がろうとした時、ミカはカイトの上着の裾を引っ張った。
「ミカね、完全にフラれちゃった……大嫌いって言われた……ミカ、取り返しのつかないことしちゃった……」
ミカはそのまま泣き崩れてしまった。
どこにも行くなと言わんばかりにミカがカイトの上着の裾を引っ張るので、カイトはそのままミカの隣に腰を下ろした。
「ミカ……小さい頃からずっと拓人だけを見てきたのに……本当にダメになっちゃった。カイトくんも仲直りできるように協力してくれたのに……」
「俺こそ何も力になられへんくてごめんな」
ミカは首だけ横に振って答える。
「もとはと言えばミカが悪いんだし……もう、本当に無理なのかな……」
「どうしても……拓人やないとあかんのか?」
ミカは黙ったまま頷く。
「何でやっ……! こないにミカちゃん傷つける男のどこがそんなにええんや……」
「何よ……カイトくんらしくないわね。拓人の良さはカイトくんだって知ってるでしょ?」
「せやけど……っ」
「拓人と出会ったのは、確かまだ幼稚園に入った頃だったわ……」
そのままミカは話しはじめた。
拓人との思い出を。
──ミカと拓人が出会ったのは、まだ2人が3歳だった頃。
公園でこけて泣いている拓人をミカが助けたんだ。
「だいじょうぶ?」
3歳のミカが聞くと
「つまずいてころんじゃった~いたいよ~」
3歳の拓人は膝を擦りむいた程度だったが大泣きだった。
「男の子なんだから、そんなに泣かないのっ! お家はどこ?」
「ふぇ~ん、ひっく……いたい……」
泣いてばかりの拓人に、ミカは仕方なく、ミカの家に拓人を連れて行き、ミカの母親に拓人を手当てしてもらった。
これがミカと拓人の出会い──。
ミカの第一印象は、“この程度の怪我で大泣きするなんて、なんて弱い男の子なの!?”だった。
拓人とはそれから良く公園で一緒に遊ぶことが増え、小学校は同じ地元の小学校に入学した。
拓人は男の子の中で1番小さくて、泣き虫。
それゆえ、いつもクラスの男子にいじめられていた。
「おい、チビ! おまえ今俺にぶつかっただろ!」
「ぶつかってねぇよ!」
「うそつけ! チビのくせに! チ~ビチ~ビ!」
「うるせぇよ! ……ふぇぇ」
拓人はすぐ涙ぐむ。
「うわっ! 弱虫タクトがまた泣きそうだぜ?ギャハハ!」
「ちょっと! タクトいじめるのやめなさいよ!」
小学生のミカはいつも拓人がいじめられているのを見たら助けた。
「うわっミカだ……逃げろ!」
そして、いつもミカはそんな拓人を慰めた。
ミカはいつしかこう思うようになっていた。
“タクトは弱いからタクトにはミカが居なくちゃ!”
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