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第4章
謝罪(1)
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桃華と心が通じ合って数日が過ぎ、季節は2月になっていた。
短い期間にいろいろありすぎて少し疲れ気味の拓人は、久しぶりにNEVERのメンバーと行きつけのBARに来ていた。
ジュンの事件以来、拓人はBARには行く気になれずにいた。
NEVERのみんなも拓人を気にかけて遠慮しているようだったが、カイトの言葉で足を運ぶことにした。
「なぁ、みんな久しぶりにBAR行かへんか?」
「俺らは構わないが……」
突然のカイトの提案に、ハルキ、ヒロ、シンジが口をそろえて拓人を見る。
「俺は行かねぇ。行きたきゃおまえらで行け」
「そう言わへんとさ、拓人も行こ! な?」
「しつこいな……行かねぇって言ってんだろ?」
拓人が1人帰ろうとすると、カイトに腕を引かれる。
「ミカちゃんが居るからか?」
「……」
「そうやっていつまでも逃げててええんか? マスターもめっちゃ拓人のこと心配しとるんやで?」
拓人の動きが止まる。
──マスター。
マスターには本当にいつも良くしてもらっている。
第一、NEVERのみんながファンの目を気にせず飲んだり食べたり出来る場所が欲しいと拓人が相談した時、マスターは好意でいつも使わせてもらっている部屋を作ってくれた。
それに、以前桃華へ抱く感情について悩んでいた時も本当にお世話になった。
こんなにもお世話になっているのに、さすがにミカが居るという理由だけで行かないという訳にはいかない。
これじゃあ子どもの喧嘩と同じだ──。
拓人はそう思い、内心納得いかない部分もあったが、BARに行くことにした。
「拓人、無理に連れて来ちゃったけど大丈夫か?」
ハルキが拓人の顔色を窺いながら言う。
「大丈夫だ。俺もさすがにマスターに顔見せねぇ訳にはいかねぇしな……」
視界の先では、既にカイトとヒロが酔って騒いでいた。
「桃華ちゃん……あれから上手くいった?」
ハルキが遠慮がちに聞く。
向かいに座っていたシンジが、心配そうな表情で無言でこちらの話を聞いているのが視界の隅に映った。
数日前の桃華との出来事をまだ誰にも話していなかった拓人は、ゆっくりハルキとシンジに説明をはじめた。
「桃華ちゃん、相当思い詰めてたんだ……」
途中まで話したところで、真剣に拓人の話を聞いていたハルキは、辛そうな表情でそう漏らした。
「……それで、拓人はどうしたんだ?」
シンジが先を聞かせろと言わんばかりに口を挟んだ。
続きを話す拓人。
全て話し終えるとハルキが口を開く。
「じゃあ桃華ちゃんと付き合うことになったんだ」
「そういうことになるな」
拓人は嬉しいけど素直に喜んでいいのか分からず、複雑な表情をした。
「で、なんでおまえは両想いになれたのにまだそんなに辛そうにしてるんだ?」
シンジの鋭い質問に拓人は戸惑った。
ジュンのこと、桃華の気持ちを考えるとさすがに舞い上がるような気持ちにはなれない。
「シンジ、拓人はこの短期間の間にいろんなことがありすぎてきっと混乱してるんだよ」
ハルキがフォローしてくれた。
「そうか、悪かった」
シンジはそう言うと再び口を閉じた。
「たーくと! 聞こえてんで? 桃華ちゃんと両想いやってんな!」
酔っ払いのカイトが拓人と肩を組むようして隣に割って入ってきた。
「おまえ……飲み過ぎだぞ?」
カイトはいつも酒はセーブしてるタイプなのに今日はやけに飲むんだな、と拓人は感じた。
そんな心配も束の間にヒロが拓人に押し寄せてきた。
「マジで~? とうとうそうきたかぁ! チューしたか? チュー!」
「バカッ! んなこと聞くな!」
拓人は顔を真っ赤にしてヒロに怒鳴った。
「はは~ん! その反応はしとるな? 別に隠さへんでいいで?」
拓人の反応に、カイトもヒロに続いてはやし立てた。
拓人が2人に冷やかされる様子を見て、ハルキもシンジも苦笑した。
そんな中。
──カチャッ。
突然部屋のドアが開いた。
ミカだ。
「あれ? 誰か呼び鈴鳴らした?」
ハルキがみんなに問いかける。
「ハルキくん、違うの。その、拓人と話がしたくて……」
ミカの声を聞くなり、拓人は眉間にしわを寄せて低い声で言った。
「おまえと話すことなんてねぇよ」
「なんや、拓人。ミカちゃんの話も聞いたれや」
「なんだよカイト、おまえミカの肩を持つのか?」
拓人はカイトを軽く睨みつける。
「ちゃうわ! 辛いかもしれへんけど、一度ちゃんと話した方がええ! 見てるこっちも辛いんや……」
「カイト、最近ずっと拓人とミカちゃんのこと気にかけてたもんな。拓人、嫌だったらすぐ戻って来てもいいからさ、ちょっとだけ話だけでも聞いてあげろよ」
ヒロも急に真面目な口調で言う。
拓人はやっぱり気が進まなかったが、そんな2人に背を押され、ミカと部屋を出た。
短い期間にいろいろありすぎて少し疲れ気味の拓人は、久しぶりにNEVERのメンバーと行きつけのBARに来ていた。
ジュンの事件以来、拓人はBARには行く気になれずにいた。
NEVERのみんなも拓人を気にかけて遠慮しているようだったが、カイトの言葉で足を運ぶことにした。
「なぁ、みんな久しぶりにBAR行かへんか?」
「俺らは構わないが……」
突然のカイトの提案に、ハルキ、ヒロ、シンジが口をそろえて拓人を見る。
「俺は行かねぇ。行きたきゃおまえらで行け」
「そう言わへんとさ、拓人も行こ! な?」
「しつこいな……行かねぇって言ってんだろ?」
拓人が1人帰ろうとすると、カイトに腕を引かれる。
「ミカちゃんが居るからか?」
「……」
「そうやっていつまでも逃げててええんか? マスターもめっちゃ拓人のこと心配しとるんやで?」
拓人の動きが止まる。
──マスター。
マスターには本当にいつも良くしてもらっている。
第一、NEVERのみんながファンの目を気にせず飲んだり食べたり出来る場所が欲しいと拓人が相談した時、マスターは好意でいつも使わせてもらっている部屋を作ってくれた。
それに、以前桃華へ抱く感情について悩んでいた時も本当にお世話になった。
こんなにもお世話になっているのに、さすがにミカが居るという理由だけで行かないという訳にはいかない。
これじゃあ子どもの喧嘩と同じだ──。
拓人はそう思い、内心納得いかない部分もあったが、BARに行くことにした。
「拓人、無理に連れて来ちゃったけど大丈夫か?」
ハルキが拓人の顔色を窺いながら言う。
「大丈夫だ。俺もさすがにマスターに顔見せねぇ訳にはいかねぇしな……」
視界の先では、既にカイトとヒロが酔って騒いでいた。
「桃華ちゃん……あれから上手くいった?」
ハルキが遠慮がちに聞く。
向かいに座っていたシンジが、心配そうな表情で無言でこちらの話を聞いているのが視界の隅に映った。
数日前の桃華との出来事をまだ誰にも話していなかった拓人は、ゆっくりハルキとシンジに説明をはじめた。
「桃華ちゃん、相当思い詰めてたんだ……」
途中まで話したところで、真剣に拓人の話を聞いていたハルキは、辛そうな表情でそう漏らした。
「……それで、拓人はどうしたんだ?」
シンジが先を聞かせろと言わんばかりに口を挟んだ。
続きを話す拓人。
全て話し終えるとハルキが口を開く。
「じゃあ桃華ちゃんと付き合うことになったんだ」
「そういうことになるな」
拓人は嬉しいけど素直に喜んでいいのか分からず、複雑な表情をした。
「で、なんでおまえは両想いになれたのにまだそんなに辛そうにしてるんだ?」
シンジの鋭い質問に拓人は戸惑った。
ジュンのこと、桃華の気持ちを考えるとさすがに舞い上がるような気持ちにはなれない。
「シンジ、拓人はこの短期間の間にいろんなことがありすぎてきっと混乱してるんだよ」
ハルキがフォローしてくれた。
「そうか、悪かった」
シンジはそう言うと再び口を閉じた。
「たーくと! 聞こえてんで? 桃華ちゃんと両想いやってんな!」
酔っ払いのカイトが拓人と肩を組むようして隣に割って入ってきた。
「おまえ……飲み過ぎだぞ?」
カイトはいつも酒はセーブしてるタイプなのに今日はやけに飲むんだな、と拓人は感じた。
そんな心配も束の間にヒロが拓人に押し寄せてきた。
「マジで~? とうとうそうきたかぁ! チューしたか? チュー!」
「バカッ! んなこと聞くな!」
拓人は顔を真っ赤にしてヒロに怒鳴った。
「はは~ん! その反応はしとるな? 別に隠さへんでいいで?」
拓人の反応に、カイトもヒロに続いてはやし立てた。
拓人が2人に冷やかされる様子を見て、ハルキもシンジも苦笑した。
そんな中。
──カチャッ。
突然部屋のドアが開いた。
ミカだ。
「あれ? 誰か呼び鈴鳴らした?」
ハルキがみんなに問いかける。
「ハルキくん、違うの。その、拓人と話がしたくて……」
ミカの声を聞くなり、拓人は眉間にしわを寄せて低い声で言った。
「おまえと話すことなんてねぇよ」
「なんや、拓人。ミカちゃんの話も聞いたれや」
「なんだよカイト、おまえミカの肩を持つのか?」
拓人はカイトを軽く睨みつける。
「ちゃうわ! 辛いかもしれへんけど、一度ちゃんと話した方がええ! 見てるこっちも辛いんや……」
「カイト、最近ずっと拓人とミカちゃんのこと気にかけてたもんな。拓人、嫌だったらすぐ戻って来てもいいからさ、ちょっとだけ話だけでも聞いてあげろよ」
ヒロも急に真面目な口調で言う。
拓人はやっぱり気が進まなかったが、そんな2人に背を押され、ミカと部屋を出た。
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