【旧版】桃色恋華

第３章

ありのままの自分（３）

　次の練習の時。つまり翌日のことなのだが──。


　拓人はNEVERのみんなに頭を下げ、最近苛々してしまっていた理由とともに、自分の中で受け入れた、ありのままの気持ちを伝えた。


　すると、カイトには呆れたように怒鳴られた。


「まぁそういうことやと思ってたけどや、みんな心配しとったんやで!?　おまえ１人のNEVERやないんやから、取り乱す前に誰にでもええから相談するなりせぇや！　次同じことやったら、ほんまにどついたるで？」


　だけど、そんなカイトの声はどこか優しくて……。


　そう言い終えるなり、カイトは拓人に寄り添い、そっと拓人を抱き寄せた。


「ほんま、おまえアホやわ……」


「ほんとだぜ、バーカ！」

　後ろに居たヒロがぶっきらぼうに続けて言った。


「あんまり問題起こすなよ」

　シンジはそれだけ言って自分の練習を始めた。


「拓人の中で気持ちが整理できたみたいで良かったよ。だけど、拓人はNEVERの人気ボーカルだってことは忘れてはダメだ。拓人らしく頑張れよ！」

　ハルキも拓人に優しい笑みを見せてくれる。


「せや！　松本さんには黙っとったるから、バレへんように上手くやれや！　スキャンダルとか起こさんとってな？」


　カイトは拓人の頭をポンポンと軽く叩いて持ち場へ戻った。


「ハルキにも、迷惑かけたな」


「気にしてないよ。俺でよければいつでも話聞くからさ、これからは１人で抱え込むなよ」


　ハルキもカイトもみんな、何だかんだで優しい。


　拓人はみんなの優しさに救われるような思いだった。


　NEVERの事務所では特に面倒な恋愛沙汰は起こすなと言われている。


　特に桃華は、拓人が仕事のボランティアを通して知り合った子。


　でも、拓人の気持ちは変わらないし、止まらない。


　また近い内に退院後の桃華に会いに行こう、と拓人は強く思った。