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第2章
宣戦布告
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数日後、久しぶりに拓人は桃華の病室を訪れた。
「拓人さん!! 最近来てくれないから嫌われちゃったのかと思ってた……」
寂しそうに目を潤ませる桃華。
「ごめん、ちょっと忙しくて……」
言われてみれば、病院には出入りしてたけど、面と向かって桃華と顔を合わせるのは約1ヶ月ぶりだった。
拓人はそんな桃華を見て、桃華とジュンを避けていたことに後悔した。
「私、来週退院できることになったんです!」
「マジで? やったじゃん!」
「少し早いけど、拓人さんにクリスマスプレゼント」
いつの間にか、カレンダーは12月に入っていた。
「これを……俺に?」
桃華に渡された紙袋の中には、紺色の毛糸で綺麗に編まれたマフラーと帽子が入っていた。
「桃華ちゃんが作ったの?」
「うん、入院中暇だったし。拓人さんにプレゼントしたくて!」
「ありがとう。すごく嬉しいよ!」
「退院しちゃう前に会えて本当に良かった」
「でも俺、今日は何も持ってないや」
「気にしないで? 私が好きでプレゼントしたんだし」
拓人は嬉しさのあまり、思わず顔がほころんだ。
「ふふふっ」
そんな拓人を見て、桃華は幸せそうに笑みをこぼした。
「拓人さんはクリスマスや年末年始はやっぱり忙しいの?」
「それなりに」
NEVERは、クリスマスにはクリスマスライブが待っているし、年末年始はいろんな特番に出演する予定になっていた。
それらの番組に出演するNEVERのTAKUを見るのが楽しみなんだと桃華は楽しそうに話してくれた。
しかし、ふとした瞬間に桃華は口を閉ざし、急に寂しそうな表情を拓人に向けた。
どうしたんだろう? と思いながら拓人が桃華の言葉を待つと、桃華は弱々しい声で口を開いた。
「私……退院しちゃうけど、また拓人さんに会えるかな?」
桃華はそう言って、自分の家がこの病院の近所であることを話してくれた。
桃華がまだ小さい頃この病院に通うのに便利なように、引っ越してきたんだそうだ。
「それ、俺ん家の近くじゃん」
「そうなの!?」
少し距離は離れていたが、歩いてでも行けないことのない程度の距離だった。
「また会いに行くよ」
拓人が桃華に微笑むと、桃華は安心したような表情を見せた。
拓人が桃華の病室を出ると、病室のすぐ傍の廊下にはジュンが立っていた。
「拓人さん、ちょっといいですか?」
拓人は怪訝そうな表情を浮かべながらジュンの後に続いた。
病院を出て、さらには病院の敷地から出ても、無言のまま歩みを進めるジュン。
病院の近くにある公園に足を踏み入れた時、拓人はジュンの背中に向かって声をかけた。
「ジュンくんは退院したのか?」
「うん、検査の結果どれも良い結果が出てくれたからね」
ジュンは足を止めて拓人の方へ振り返ると、涼しげな笑みを浮かべた。
そして、ジュンは拓人を挑発するかのような物言いで言った。
「それにしても拓人さんってストーカーみたいだよね」
「!?」
「僕知ってるよ、時々病室覗いて、桃華ちゃんに気づかれないように帰って行くの。なんだかストーカーみたいだなぁって感じちゃった」
「何だよ、突然……」
ジュンのせいで桃華に近寄るのをためらっていた拓人にとって、ジュンの言葉は非常に腹立たしいものだった。
「桃華ちゃんは気づいてなかったみたいだけど、気づいてた僕からしたら気持ち良いものではなかったね」
「……」
「やっぱり、否定できないよね?」
「……うるせぇよ」
「ん? 何か言った?」
「てめぇには関係ねぇだろ!?」
拓人はジュンの発言や態度に苛立ちを隠せず、思わず声を上げる。
「ふーん。それが本性?」
「は? どういう意味だ!?」
「僕、テレビで活躍してるTAKUさんって好きだったよ、かっこ良くて。でも、拓人さんはあまり好きじゃないなぁ~。血の気が多くて、言葉遣いは乱暴だったなんてね」
「てめぇに俺の何が分かるんだよ! 俺に喧嘩売ってんのか!?」
拓人は今にも殴りかかりそうな勢いだ。
恐らく、相手が心臓病の男の子ではなく、健康な男の子だったら一発殴ってただろう。
「僕はそんな下品なことはしないよ」
ジュンは挑発的な笑みを浮かべながら続ける。
「……桃華ちゃんのこと、好きなんだよね?」
「!! ……そんなんじゃねぇよ」
「うそつけ。僕は桃華ちゃんのこと好きだよ。僕と同じ眼で桃華ちゃんのこと見てる。眼を見たら分かるよ」
「うるせぇ! てめぇと一緒にすんなっ!!」
拓人はジュンに背を向けた。
「じゃあいいんだね? 僕、桃華ちゃんに好きって言っちゃうよ?」
「……」
拓人はジュンの言葉に一瞬足を止めたが、ジュンの問い掛けを無視して公園を後にした。
(なんだよっ、人のこと全て分かったようなこと言って……すげぇムカつく!!)
「拓人さん!! 最近来てくれないから嫌われちゃったのかと思ってた……」
寂しそうに目を潤ませる桃華。
「ごめん、ちょっと忙しくて……」
言われてみれば、病院には出入りしてたけど、面と向かって桃華と顔を合わせるのは約1ヶ月ぶりだった。
拓人はそんな桃華を見て、桃華とジュンを避けていたことに後悔した。
「私、来週退院できることになったんです!」
「マジで? やったじゃん!」
「少し早いけど、拓人さんにクリスマスプレゼント」
いつの間にか、カレンダーは12月に入っていた。
「これを……俺に?」
桃華に渡された紙袋の中には、紺色の毛糸で綺麗に編まれたマフラーと帽子が入っていた。
「桃華ちゃんが作ったの?」
「うん、入院中暇だったし。拓人さんにプレゼントしたくて!」
「ありがとう。すごく嬉しいよ!」
「退院しちゃう前に会えて本当に良かった」
「でも俺、今日は何も持ってないや」
「気にしないで? 私が好きでプレゼントしたんだし」
拓人は嬉しさのあまり、思わず顔がほころんだ。
「ふふふっ」
そんな拓人を見て、桃華は幸せそうに笑みをこぼした。
「拓人さんはクリスマスや年末年始はやっぱり忙しいの?」
「それなりに」
NEVERは、クリスマスにはクリスマスライブが待っているし、年末年始はいろんな特番に出演する予定になっていた。
それらの番組に出演するNEVERのTAKUを見るのが楽しみなんだと桃華は楽しそうに話してくれた。
しかし、ふとした瞬間に桃華は口を閉ざし、急に寂しそうな表情を拓人に向けた。
どうしたんだろう? と思いながら拓人が桃華の言葉を待つと、桃華は弱々しい声で口を開いた。
「私……退院しちゃうけど、また拓人さんに会えるかな?」
桃華はそう言って、自分の家がこの病院の近所であることを話してくれた。
桃華がまだ小さい頃この病院に通うのに便利なように、引っ越してきたんだそうだ。
「それ、俺ん家の近くじゃん」
「そうなの!?」
少し距離は離れていたが、歩いてでも行けないことのない程度の距離だった。
「また会いに行くよ」
拓人が桃華に微笑むと、桃華は安心したような表情を見せた。
拓人が桃華の病室を出ると、病室のすぐ傍の廊下にはジュンが立っていた。
「拓人さん、ちょっといいですか?」
拓人は怪訝そうな表情を浮かべながらジュンの後に続いた。
病院を出て、さらには病院の敷地から出ても、無言のまま歩みを進めるジュン。
病院の近くにある公園に足を踏み入れた時、拓人はジュンの背中に向かって声をかけた。
「ジュンくんは退院したのか?」
「うん、検査の結果どれも良い結果が出てくれたからね」
ジュンは足を止めて拓人の方へ振り返ると、涼しげな笑みを浮かべた。
そして、ジュンは拓人を挑発するかのような物言いで言った。
「それにしても拓人さんってストーカーみたいだよね」
「!?」
「僕知ってるよ、時々病室覗いて、桃華ちゃんに気づかれないように帰って行くの。なんだかストーカーみたいだなぁって感じちゃった」
「何だよ、突然……」
ジュンのせいで桃華に近寄るのをためらっていた拓人にとって、ジュンの言葉は非常に腹立たしいものだった。
「桃華ちゃんは気づいてなかったみたいだけど、気づいてた僕からしたら気持ち良いものではなかったね」
「……」
「やっぱり、否定できないよね?」
「……うるせぇよ」
「ん? 何か言った?」
「てめぇには関係ねぇだろ!?」
拓人はジュンの発言や態度に苛立ちを隠せず、思わず声を上げる。
「ふーん。それが本性?」
「は? どういう意味だ!?」
「僕、テレビで活躍してるTAKUさんって好きだったよ、かっこ良くて。でも、拓人さんはあまり好きじゃないなぁ~。血の気が多くて、言葉遣いは乱暴だったなんてね」
「てめぇに俺の何が分かるんだよ! 俺に喧嘩売ってんのか!?」
拓人は今にも殴りかかりそうな勢いだ。
恐らく、相手が心臓病の男の子ではなく、健康な男の子だったら一発殴ってただろう。
「僕はそんな下品なことはしないよ」
ジュンは挑発的な笑みを浮かべながら続ける。
「……桃華ちゃんのこと、好きなんだよね?」
「!! ……そんなんじゃねぇよ」
「うそつけ。僕は桃華ちゃんのこと好きだよ。僕と同じ眼で桃華ちゃんのこと見てる。眼を見たら分かるよ」
「うるせぇ! てめぇと一緒にすんなっ!!」
拓人はジュンに背を向けた。
「じゃあいいんだね? 僕、桃華ちゃんに好きって言っちゃうよ?」
「……」
拓人はジュンの言葉に一瞬足を止めたが、ジュンの問い掛けを無視して公園を後にした。
(なんだよっ、人のこと全て分かったようなこと言って……すげぇムカつく!!)
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