幼なじみはイケメン関西人!

美和優希

文字の大きさ
上 下
32 / 64
7*キケンな勉強会

(1)

しおりを挟む
「水嶋!? すげぇ疲れきってるけど大丈夫か!?」


 あたしの席の傍を通りかかるなり、ぎょっとしたような目でこちらを見て立ち止まったのは相原くん。


「ん、うん……」



 夜中にこうちゃんの部屋へ忍び込んだあの日から、5日ほどが過ぎる。


 あたしはこうちゃんの宣告通り、毎日のように放課後みっちりテスト範囲の勉強を叩き込まれている。



「まさかあれか? 期末テストの勉強?」


「他に何があるっていうのよ」


 学園祭で告白されてから気まずくなるのかなと思っていた相原くんとの関係は、意外と以前と変わっていない。


 きっと、この相原くんの持つ雰囲気のおかげなんだと思う。



「なんだよ。お前、そんなに今回のテストヤバイのか?」


「ま、まぁ……。相原くんは?」


「ぼちぼちかな。俺も学園祭実行委員の仕事で追われてたし、最低限のことしかしてねぇよ」


「そう、だよね……」



 最低限、か。

 何もやってなくてマイナスからのスタートのあたしより、断然マシだよ。


 あたしが思わず肩を落としたとき、まるでそんなあたしを慰めるかのように、相原くんはあたしの肩にぽんっと手を置いた。



「そんな顔すんなって! こういうときこそ俺がいるんだろ!?」


「え?」


 思いがけない相原くんの発言に、相原くんの意図することすらつかめず、思わず首をかしげる。


「今日の放課後お前ん家に行くから、一緒に勉強しようぜ? 一人より二人っていうだろ!? じゃあ、決まりな!」


「へ?」


 続けざまにとんでもないことを言い出した相原くんに、思わず声が裏返った。



「そ、それは無理だよ! 学校じゃダメなの!?」


 だって、今のあたしの家にはこうちゃんが居るのに……!



「だって学校じゃ、みんな残ってて集中できねぇじゃん。お前ん家がダメなら、俺ん家でもいいけど」


「え、」


 いくらなんでも、さすがにヌケヌケと男子の家に上がるほどあたしは無防備ではない。


 何かされるって思ってるわけじゃないけど、学園祭で告白されたのもあって余計に身が強ばった。


 そんなあたしの心境を知ってか知らずか、あたしの家で勉強するか相原くんの家で勉強するかの2択を迫られる。


 あたしに断るという選択肢はないのかと返答に困っていると、後ろから相原くんとは違う大きな手がふわりとあたしの頭を包み込んだ。


 その光景を見たのであろう、背後から聞こえる女子の騒ぐ声に、何となくその手の正体はわかった。



「残念やったな。ちぃは俺と勉強するねん」


 さっきまであたしの後ろの席で、他の生徒に勉強を聞かれていたこうちゃんだ。


「またお前かよ」


「またの登場で悪かったな。悪いけど、俺の方が先にちぃと勉強する約束しとったんや」


「……そうなのか?」


 こうちゃんに言われたことを確認するようにあたしを見る相原くん。


「え、っと、あ、うん……。最近、勉強見てもらってて……」


 あう……。なんだか相原くんの雰囲気からすごく言いづらいよ。


 相原くんは「そうか」と短く返事をしたあと、一瞬考えるような素振りを見せて口を開く。



「……なら、俺もその勉強会、参加させてもらう」


「へ?」


 またもや間抜けな声が出た。

 だって、まさかそんな風な返事が返ってくるなんて思わなかったんだもん!



「ちょお待て! なんで俺がお前の勉強まで見なあかんねん!」


「はぁ!? 誰もお前に教えてくれなんて頼んでねぇだろ!? あたかもお前の方が頭がいいかのような発言しやがって!!」


「ちょっと、二人とも……」


 言い合いを始めてしまった二人に、あたしの声は聞こえる様子もない。


 どうしようと目の前の二人を見比べていたとき、あたしに救いの手が差しのべられた。


「何騒がしくしてるのよ。千紗、勉強会するならあたしも混ぜてよ」


 聞き慣れた声に振り向けば、そこには実里の姿があった。


 あたしと目が合うなり、軽くウインクする実里。


 きっとあたしとこうちゃんと相原くんとのやり取りを少し離れたところで見てた実里が、気を利かせてくれたんだ。


「メンバーは、千紗と相原と早瀬くん、でいいのかな? 場所はあたしの家を提供するわ」


 わー! 実里、ありがとう!



「おう、俺は別に構わへんけど」


 あっという間に話をまとめてしまった実里に、戸惑いながらもうなずくこうちゃん。


「ったく、何でここで中澤が割り込んで来るかなぁ~」


 あたしと同じく、相原くんとは中学の頃からの付き合いの実里。


 いかにも不満げにそう言った相原くんの耳を、実里が思いっきりつまみ上げた。


「それはあんたが千紗を困らせてるからでしょ!?」


「いででででっ! ったく、何で俺だけ。こいつだって同罪だろ!? 俺が何したって言うんだよ!」


 悲痛な声を上げて、こうちゃんを指さす相原くん。


「日頃の行いじゃないの?」


 実里は、元々相原くんの女付き合いにはいい目を向けてなかったからなぁ。


 学園祭で相原くんに告白されたことを話したときも、実里は「やっぱり」と言いながらも苦い顔してたし……。


 そういうわけで、あたしたちの勉強会は変な形で結成された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~

美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。 貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。 そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。 紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。 そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!? 突然始まった秘密のルームシェア。 日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。 初回公開・完結*2017.12.21(他サイト) アルファポリスでの公開日*2020.02.16 *表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

消えた記憶

詩織
恋愛
交通事故で一部の記憶がなくなった彩芽。大事な旦那さんの記憶が全くない。

初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉

濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。 一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感! ◆Rシーンには※印 ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます ◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

処理中です...