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3*無防備すぎやろ
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「……で、なんでこうちゃんがここにいるのよ」
「なんや、えらい冷たいねんな。ちぃが風呂から戻ってくるの待ってたのに」
そう言ってあたしの部屋のあたしのベッドの上で枕を抱えてしゅんとしてるのは、こうちゃん。
……っていうか、しゅんとしたって、可愛くないから!
夕飯を食べ終えてから、あたしはお風呂にゆっくり入りたい派だから、こうちゃんに先にお風呂に入ってもらった。
「一緒に入ってもええで?」なんて、ふざけた冗談をかましたこうちゃんを一蹴して、なんとか無事にお風呂を終えたあたし。
お風呂に入ってホッとして自分の部屋に帰って来たらこれだ。
「そこに居られたら、あたしが寝られないじゃない!」
「別に俺は一緒のベッドでも構わへんで」
「あ、あたしが嫌なのっ!」
だから毎回毎回、なんでこうちゃんは恥ずかしいことを平気な顔して言うかな。
あたしの方が恥ずかしくなってるよ、絶対。
「そないに照れんでもええやん。でも俺、どの部屋使っていいか聞いてへんし、やからってちぃ一人残して隣の俺ん家に寝に帰るわけにいかへんやん?」
だから、照れてないって……!
それに、別に帰ってくれてもいいんだけどね?
だけどここで反論したところで、またこうちゃんの思うように振り回されるだけだろうから、あえてそこはスルーした。
「それならこの階の奥の部屋がお父さんの寝室になってるから、そこ使ってくれたらいいよ」
勝手に決めちゃったけど、ここでお母さんの寝室ってわけにはいかないし、お父さんの部屋はお父さんが家に帰って来たときに使ってるだけで、そのあとはちゃんと布団も干して掃除もしてあるから問題ないだろう。
っていうか、お母さんがこうちゃんに無茶なこと頼んでおいて何も決めずに出ていっちゃったのが一番の原因なんだから!
「ほな、そこ使わせてもらうわ」
意外にもあっさりと返事をして、枕を元の位置に戻すこうちゃん。
「う、うん」
思ってたよりすんなり納得してくれて、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間──。
「って、うわっ」
次の瞬間、ベッドの上に座っていたこうちゃんに腕を引っ張られて、気づいたときにはあたしはベッドに横たわっていた。
驚いて目の前を見ると、あたしの上に影を作るこうちゃんの姿。
「ちょ、な、何するのよ!」
「ちぃ、隙ありすぎやねん」
「はぁ!?」
キッとこうちゃんを睨み付けるも、意外にも真面目な顔をしたこうちゃんの瞳と目があって、思わず息を呑む。
「……な、なに?」
ようやく喉から声が出て、それと同時にこうちゃんの眉間がきゅっと寄せられる。
「……学園祭の実行委員になってしもたん、俺のせいなんやろ?」
「……え?」
こうちゃん、まさか気づいてたの……?
今日の放課後に話したときには、こうちゃんは全く気づいてなさそうだったというのに。
「俺、あんときは後ろから寝とるちぃをどういじめるかしか考えてへんかったから、周りの様子になんてちっとも気づいてあげられへんくてごめんな」
「そんなこと……」
あのときは、あたしのことをどういじめるかしか考えてなかったって……。
何だかつい突っ込んでしまいそうなところを、ここでは飲み込んだ。
あのこうちゃんがこんな風に謝ってきている中で、わざわざそこを取り立てて責めようなんて思えない。
「だって、こうちゃんが悪いんじゃないんだし……」
確かに相原くんから、あたしが実行委員に推薦されたのはこうちゃんの取り巻きの女の子の仕業だとは聞いたけれど、それはこうちゃんのせいなわけじゃない。
けれど、こうちゃんは少し納得いかないのか、眉を寄せたままだ。
「ちゃうよ。俺があまりにちぃに構いすぎとるからなんやろ? やから……」
こうちゃんの言うことは間違ってない。
だから、この先に続く言葉を想像して、ほんの少し寂しく感じた。
こんな風に考えてくれるこうちゃんのことだ。
きっと、もうみんなの前ではあたしに構わないようにすると言うのだろうと感じたから。
けれど……。
「やから、元凶の女の子ら、軽くシメといた」
……は?
想定外の内容に、声なんて出ずに間抜けに口をあんぐり開けてしまった。
「……で、なんでこうちゃんがここにいるのよ」
「なんや、えらい冷たいねんな。ちぃが風呂から戻ってくるの待ってたのに」
そう言ってあたしの部屋のあたしのベッドの上で枕を抱えてしゅんとしてるのは、こうちゃん。
……っていうか、しゅんとしたって、可愛くないから!
夕飯を食べ終えてから、あたしはお風呂にゆっくり入りたい派だから、こうちゃんに先にお風呂に入ってもらった。
「一緒に入ってもええで?」なんて、ふざけた冗談をかましたこうちゃんを一蹴して、なんとか無事にお風呂を終えたあたし。
お風呂に入ってホッとして自分の部屋に帰って来たらこれだ。
「そこに居られたら、あたしが寝られないじゃない!」
「別に俺は一緒のベッドでも構わへんで」
「あ、あたしが嫌なのっ!」
だから毎回毎回、なんでこうちゃんは恥ずかしいことを平気な顔して言うかな。
あたしの方が恥ずかしくなってるよ、絶対。
「そないに照れんでもええやん。でも俺、どの部屋使っていいか聞いてへんし、やからってちぃ一人残して隣の俺ん家に寝に帰るわけにいかへんやん?」
だから、照れてないって……!
それに、別に帰ってくれてもいいんだけどね?
だけどここで反論したところで、またこうちゃんの思うように振り回されるだけだろうから、あえてそこはスルーした。
「それならこの階の奥の部屋がお父さんの寝室になってるから、そこ使ってくれたらいいよ」
勝手に決めちゃったけど、ここでお母さんの寝室ってわけにはいかないし、お父さんの部屋はお父さんが家に帰って来たときに使ってるだけで、そのあとはちゃんと布団も干して掃除もしてあるから問題ないだろう。
っていうか、お母さんがこうちゃんに無茶なこと頼んでおいて何も決めずに出ていっちゃったのが一番の原因なんだから!
「ほな、そこ使わせてもらうわ」
意外にもあっさりと返事をして、枕を元の位置に戻すこうちゃん。
「う、うん」
思ってたよりすんなり納得してくれて、ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間──。
「って、うわっ」
次の瞬間、ベッドの上に座っていたこうちゃんに腕を引っ張られて、気づいたときにはあたしはベッドに横たわっていた。
驚いて目の前を見ると、あたしの上に影を作るこうちゃんの姿。
「ちょ、な、何するのよ!」
「ちぃ、隙ありすぎやねん」
「はぁ!?」
キッとこうちゃんを睨み付けるも、意外にも真面目な顔をしたこうちゃんの瞳と目があって、思わず息を呑む。
「……な、なに?」
ようやく喉から声が出て、それと同時にこうちゃんの眉間がきゅっと寄せられる。
「……学園祭の実行委員になってしもたん、俺のせいなんやろ?」
「……え?」
こうちゃん、まさか気づいてたの……?
今日の放課後に話したときには、こうちゃんは全く気づいてなさそうだったというのに。
「俺、あんときは後ろから寝とるちぃをどういじめるかしか考えてへんかったから、周りの様子になんてちっとも気づいてあげられへんくてごめんな」
「そんなこと……」
あのときは、あたしのことをどういじめるかしか考えてなかったって……。
何だかつい突っ込んでしまいそうなところを、ここでは飲み込んだ。
あのこうちゃんがこんな風に謝ってきている中で、わざわざそこを取り立てて責めようなんて思えない。
「だって、こうちゃんが悪いんじゃないんだし……」
確かに相原くんから、あたしが実行委員に推薦されたのはこうちゃんの取り巻きの女の子の仕業だとは聞いたけれど、それはこうちゃんのせいなわけじゃない。
けれど、こうちゃんは少し納得いかないのか、眉を寄せたままだ。
「ちゃうよ。俺があまりにちぃに構いすぎとるからなんやろ? やから……」
こうちゃんの言うことは間違ってない。
だから、この先に続く言葉を想像して、ほんの少し寂しく感じた。
こんな風に考えてくれるこうちゃんのことだ。
きっと、もうみんなの前ではあたしに構わないようにすると言うのだろうと感じたから。
けれど……。
「やから、元凶の女の子ら、軽くシメといた」
……は?
想定外の内容に、声なんて出ずに間抜けに口をあんぐり開けてしまった。
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