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*最終章*
キケンな放課後(1)
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「なあ、優芽ちゃん。ケーキが美味しい店見つけたんだけど、今度蓮が忙しいとき、一緒に食いに行かねえ?」
「きゃっ!」
生徒会室の長机で明日配分予定のプリントをホッチキス留めしていると、広瀬先輩がきゅっと背後から抱き着いてくる。
「ねえ、優芽ちゃん。そろそろ蓮のこと嫌になってない?」
ふわりとあたしに近づいて、そんなことを聞くのは笹倉先輩。
「な、なってません!」
するとこちらの様子に気づいた蓮先輩が、鬼のような形相で姿を現す。
「おまえら、自分の仕事やれよ! 達也も、いちいち優芽に触んな!」
パッと広瀬先輩の手を振りきって、あたしを二人から隠すように抱きしめる蓮先輩。
「だってさあ~」
不服そうに口を尖らせる広瀬先輩に、笹倉先輩も口を開く。
「彼氏ができたからあきらめろ、なんて誰が決めたの。そんな法則も決まりもないでしょ?」
それに、と小さく言って、あたしに向かって宙で弓矢を放つポーズをする笹倉先輩。
「彼氏ができたなら、奪えばいいだけの話だし。ね?」
「ああ? 奪えるもんなら奪ってみろ! たとえ奪われたところで、力づくで奪い返してやる」
蓮先輩と付き合い始めてから、一週間。
生徒会の皆さんも今までと変わらずあたしに接してくれて一先ず安心したものの、こんなやり取りが度々繰り返されている。
その様子を見て、呆れたように口を開くのは妹尾先輩。
「おまえらも、ほんま学習せえへんな。そんなにしつこくしとったら、優芽ちゃんに嫌われるで?」
「別に本気で奪おうとは思ってないよ。僕は平和主義だからね」
「平和主義って……。それ、おまえが言うか!?」
笹倉先輩の言葉に広瀬先輩が突っ込むと、笹倉先輩はあははと笑った。
「でも、陸人も苦労してるよな。ほれ、後ろ」
広瀬先輩の言葉に妹尾先輩が振り返ると、そこには結衣の姿があった。
「妹尾先輩、そろそろサッカー部の方に来てもらえると嬉しいんですけど!」
「やから試合終わったんやから、しばらくはお休みする言うてるやろ」
「じゃあ放課後、ご飯でも食べて帰りませんか?」
「何でいきなりそうなるねん。他に選択肢はないんか?」
「はい」
はああ、と困ったように肩を落とす妹尾先輩。
「まあ陸人。飯くらい行ってやればいいじゃねーか」
「お、おい、蓮……」
蓮先輩の言葉に、妹尾先輩は余計なことを言うな、とでも言いたげに声を上げる。
「ほんとほんと~! 陸人には片桐さんがいるもんなあ」
「これで陸人が減って、マイナス一だね」
広瀬先輩に続いて、笹倉先輩も妹尾先輩に茶々を入れる。
「おまえらなあ……」
広瀬先輩と笹倉先輩を軽く睨みつける妹尾先輩に、再び結衣が口を開く。
「妹尾先輩、どうします? サッカー部に来るのとあたしとご飯、どっちがいいですか?」
「いや、ほんまに今日は生徒会の仕事が……」
結衣はあの文化祭が終わってから、ものすごい勢いで妹尾先輩にアタックを繰り返している。
確かにあたしが妹尾先輩の告白を断ればあとは奪うのみだと結衣は言ってたけれど……。
まさかここまでだと思ってなかっただけに、驚かされる。
みんなの意識が結衣と妹尾先輩に引き付けられる中、あたしはグイッと蓮先輩に手を引かれる。
そして蓮先輩は生徒会室の内扉からあたしを連れ出すと、校舎の廊下へと続く扉にあたしを押さえつけた。
「ったく、あいつら、俺が目を離した隙にすぐああなるから……」
「……すみません」
「優芽が謝ることじゃねーよ。明らかにあいつらに問題がある」
「でも……、んんっ」
次の瞬間、蓮先輩に奪われる唇。
「きゃっ!」
生徒会室の長机で明日配分予定のプリントをホッチキス留めしていると、広瀬先輩がきゅっと背後から抱き着いてくる。
「ねえ、優芽ちゃん。そろそろ蓮のこと嫌になってない?」
ふわりとあたしに近づいて、そんなことを聞くのは笹倉先輩。
「な、なってません!」
するとこちらの様子に気づいた蓮先輩が、鬼のような形相で姿を現す。
「おまえら、自分の仕事やれよ! 達也も、いちいち優芽に触んな!」
パッと広瀬先輩の手を振りきって、あたしを二人から隠すように抱きしめる蓮先輩。
「だってさあ~」
不服そうに口を尖らせる広瀬先輩に、笹倉先輩も口を開く。
「彼氏ができたからあきらめろ、なんて誰が決めたの。そんな法則も決まりもないでしょ?」
それに、と小さく言って、あたしに向かって宙で弓矢を放つポーズをする笹倉先輩。
「彼氏ができたなら、奪えばいいだけの話だし。ね?」
「ああ? 奪えるもんなら奪ってみろ! たとえ奪われたところで、力づくで奪い返してやる」
蓮先輩と付き合い始めてから、一週間。
生徒会の皆さんも今までと変わらずあたしに接してくれて一先ず安心したものの、こんなやり取りが度々繰り返されている。
その様子を見て、呆れたように口を開くのは妹尾先輩。
「おまえらも、ほんま学習せえへんな。そんなにしつこくしとったら、優芽ちゃんに嫌われるで?」
「別に本気で奪おうとは思ってないよ。僕は平和主義だからね」
「平和主義って……。それ、おまえが言うか!?」
笹倉先輩の言葉に広瀬先輩が突っ込むと、笹倉先輩はあははと笑った。
「でも、陸人も苦労してるよな。ほれ、後ろ」
広瀬先輩の言葉に妹尾先輩が振り返ると、そこには結衣の姿があった。
「妹尾先輩、そろそろサッカー部の方に来てもらえると嬉しいんですけど!」
「やから試合終わったんやから、しばらくはお休みする言うてるやろ」
「じゃあ放課後、ご飯でも食べて帰りませんか?」
「何でいきなりそうなるねん。他に選択肢はないんか?」
「はい」
はああ、と困ったように肩を落とす妹尾先輩。
「まあ陸人。飯くらい行ってやればいいじゃねーか」
「お、おい、蓮……」
蓮先輩の言葉に、妹尾先輩は余計なことを言うな、とでも言いたげに声を上げる。
「ほんとほんと~! 陸人には片桐さんがいるもんなあ」
「これで陸人が減って、マイナス一だね」
広瀬先輩に続いて、笹倉先輩も妹尾先輩に茶々を入れる。
「おまえらなあ……」
広瀬先輩と笹倉先輩を軽く睨みつける妹尾先輩に、再び結衣が口を開く。
「妹尾先輩、どうします? サッカー部に来るのとあたしとご飯、どっちがいいですか?」
「いや、ほんまに今日は生徒会の仕事が……」
結衣はあの文化祭が終わってから、ものすごい勢いで妹尾先輩にアタックを繰り返している。
確かにあたしが妹尾先輩の告白を断ればあとは奪うのみだと結衣は言ってたけれど……。
まさかここまでだと思ってなかっただけに、驚かされる。
みんなの意識が結衣と妹尾先輩に引き付けられる中、あたしはグイッと蓮先輩に手を引かれる。
そして蓮先輩は生徒会室の内扉からあたしを連れ出すと、校舎の廊下へと続く扉にあたしを押さえつけた。
「ったく、あいつら、俺が目を離した隙にすぐああなるから……」
「……すみません」
「優芽が謝ることじゃねーよ。明らかにあいつらに問題がある」
「でも……、んんっ」
次の瞬間、蓮先輩に奪われる唇。
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