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*第5章*
こいつは俺の女だ(3)
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「片桐マネの次は、優芽ちゃんやな」
そんな優しい声とともに、あたしの手を取る妹尾先輩。
何だか申し訳ない気持ちと後ろめたい気持ちと恥ずかしい気持ち……。
いろんな気持ちが混ざり合って、心臓がバクバクと異様に音を立てた。
「こんだけの人数、なかなか回りきらんからな。優芽ちゃんに当たってラッキーやわ!」
「そうですか……」
「せやで! やっぱりせっかくなら一緒に踊りたいやん」
その瞬間、妹尾先輩の手があたしの手をつかむ力が強まるのを感じた。
いくら結衣が妹尾先輩の気持ちを知ってるとはいえ、妹尾先輩に嬉しそうにそう言われて思わず申し訳ない気持ちになった。
いよいよパートナー交代、というとき。
あたしは、勢い良く妹尾先輩に肩を抱かれる。
「……え?」
その瞬間、円から外れたあたしと妹尾先輩。
あたしが驚いて妹尾先輩を見上げると、妹尾先輩は柔らかく目を細めた。
妹尾先輩は一旦あたしを離すと、今度はあたしの手を取って円の中央にあたしを連れていく。
きゃあああーっと、四方八方からこれ以上にないくらいの声が響く。
「うおおぉっ!! ななななんと! 次は生徒会執行部の一人としても、サッカーのやり手としても校内で人気を誇る、妹尾さんではないですか! お相手は、同じく生徒会執行部の一年生!」
円の中央付近に待機してた司会の人も、目を見開き興奮気味に叫ぶ。
ちょ、ちょ、ちょ……、周囲からの声と視線が、怖いんですけど……。
妹尾先輩は円の中心であたしを離すと、小さく口を開く。
「強引なことして、ごめんな」
そして、妹尾先輩はあたしと真っ正面から向き合うと、声を夜空に張り上げた。
「優芽ちゃんのことが、めっちゃ好きやねん!!」
生徒会合宿の夜よりも盛大に響く、妹尾先輩の声。
周囲から聞こえる叫び声や金切り声が、一層強まる。
あたしを真っ直ぐに見据える妹尾先輩の瞳は、グラウンドの照明のせいか潤いを増して見える。
あたしは、その瞳から目が離せなかった。
「もし、ちょっとでも俺に気持ちがあるなら、俺の彼女になってくれへん?」
賑わう空間の中、かろうじてあたしの耳に届いた妹尾先輩の声。
「あ、あたしは……、」
あたしが小さく言葉を口にした瞬間、グラウンド内の騒ぎは一層強まった。
「おおぉっ!! ちょっと待ったーっ、待ったがかかりました!! ななななんと、またもや生徒会執行部!」
マイクを通して会場内に響く、司会の声。
見ると、妹尾先輩の両サイドから現れた広瀬先輩と笹倉先輩。
「まさか、陸人が先に優芽ちゃんに当たるとはね」
「俺がかっこよく優芽ちゃんを引っ張り出す予定だったのになあ」
笹倉先輩、広瀬先輩と順にそう言うと、二人も妹尾先輩の両隣にあたしと向かい合うように立った。
「俺だって、俺だって優芽ちゃんが好きだ! 他の奴に取られてたまるかよ!」
叫ぶように声を張り上げる、広瀬先輩。
「優芽ちゃんを想う気持ちは、誰にも負けない! 優芽ちゃんが、好きだ」
笹倉先輩も、声を夜空に響かせる。
「熱い! 生徒会執行部内で、紅一点を奪い合っています! もう、待ったはいませんか!? って、うおおおぉぉっ!!」
興奮気味の司会が驚きの声を上げると同時に、あたしは背後から誰かにふわりと抱き寄せられた。
その瞬間、周りから聞こえる声に悲鳴のような声が混ざる。
「……え?」
驚いて、背後を見ようと振り返ろうとする。
だけどそれはその人物がぎゅうっとあたしを抱きしめて、阻止された。
「こいつは、こいつは俺の女だ! 誰にも渡さねえ!!」
えええええっ!?
嘘でしょ!?
だって、あたし、まだ誰の彼女にもなってないよ?
だけどそれ以上に驚いた事実に、そんなことはどうでもよかった。
だってその声は、明らかに蓮先輩のものだったから……。
「ちょ、待てよ! いつ優芽ちゃんがおまえのもんになったんだよ!」
広瀬先輩がすかさずあたしの背後に向かって、声を張り上げる。
「これは、これは、これは……っ!! 生徒会執行部総出で、本気で奪い合いの模様です!」
司会がおもしろかしくマイクで叫ぶ。
蓮先輩、なんだよね……?
あたしが背後を見上げようと再び試みると、今度はすんなりと後ろを振り返ることができた。
そんな優しい声とともに、あたしの手を取る妹尾先輩。
何だか申し訳ない気持ちと後ろめたい気持ちと恥ずかしい気持ち……。
いろんな気持ちが混ざり合って、心臓がバクバクと異様に音を立てた。
「こんだけの人数、なかなか回りきらんからな。優芽ちゃんに当たってラッキーやわ!」
「そうですか……」
「せやで! やっぱりせっかくなら一緒に踊りたいやん」
その瞬間、妹尾先輩の手があたしの手をつかむ力が強まるのを感じた。
いくら結衣が妹尾先輩の気持ちを知ってるとはいえ、妹尾先輩に嬉しそうにそう言われて思わず申し訳ない気持ちになった。
いよいよパートナー交代、というとき。
あたしは、勢い良く妹尾先輩に肩を抱かれる。
「……え?」
その瞬間、円から外れたあたしと妹尾先輩。
あたしが驚いて妹尾先輩を見上げると、妹尾先輩は柔らかく目を細めた。
妹尾先輩は一旦あたしを離すと、今度はあたしの手を取って円の中央にあたしを連れていく。
きゃあああーっと、四方八方からこれ以上にないくらいの声が響く。
「うおおぉっ!! ななななんと! 次は生徒会執行部の一人としても、サッカーのやり手としても校内で人気を誇る、妹尾さんではないですか! お相手は、同じく生徒会執行部の一年生!」
円の中央付近に待機してた司会の人も、目を見開き興奮気味に叫ぶ。
ちょ、ちょ、ちょ……、周囲からの声と視線が、怖いんですけど……。
妹尾先輩は円の中心であたしを離すと、小さく口を開く。
「強引なことして、ごめんな」
そして、妹尾先輩はあたしと真っ正面から向き合うと、声を夜空に張り上げた。
「優芽ちゃんのことが、めっちゃ好きやねん!!」
生徒会合宿の夜よりも盛大に響く、妹尾先輩の声。
周囲から聞こえる叫び声や金切り声が、一層強まる。
あたしを真っ直ぐに見据える妹尾先輩の瞳は、グラウンドの照明のせいか潤いを増して見える。
あたしは、その瞳から目が離せなかった。
「もし、ちょっとでも俺に気持ちがあるなら、俺の彼女になってくれへん?」
賑わう空間の中、かろうじてあたしの耳に届いた妹尾先輩の声。
「あ、あたしは……、」
あたしが小さく言葉を口にした瞬間、グラウンド内の騒ぎは一層強まった。
「おおぉっ!! ちょっと待ったーっ、待ったがかかりました!! ななななんと、またもや生徒会執行部!」
マイクを通して会場内に響く、司会の声。
見ると、妹尾先輩の両サイドから現れた広瀬先輩と笹倉先輩。
「まさか、陸人が先に優芽ちゃんに当たるとはね」
「俺がかっこよく優芽ちゃんを引っ張り出す予定だったのになあ」
笹倉先輩、広瀬先輩と順にそう言うと、二人も妹尾先輩の両隣にあたしと向かい合うように立った。
「俺だって、俺だって優芽ちゃんが好きだ! 他の奴に取られてたまるかよ!」
叫ぶように声を張り上げる、広瀬先輩。
「優芽ちゃんを想う気持ちは、誰にも負けない! 優芽ちゃんが、好きだ」
笹倉先輩も、声を夜空に響かせる。
「熱い! 生徒会執行部内で、紅一点を奪い合っています! もう、待ったはいませんか!? って、うおおおぉぉっ!!」
興奮気味の司会が驚きの声を上げると同時に、あたしは背後から誰かにふわりと抱き寄せられた。
その瞬間、周りから聞こえる声に悲鳴のような声が混ざる。
「……え?」
驚いて、背後を見ようと振り返ろうとする。
だけどそれはその人物がぎゅうっとあたしを抱きしめて、阻止された。
「こいつは、こいつは俺の女だ! 誰にも渡さねえ!!」
えええええっ!?
嘘でしょ!?
だって、あたし、まだ誰の彼女にもなってないよ?
だけどそれ以上に驚いた事実に、そんなことはどうでもよかった。
だってその声は、明らかに蓮先輩のものだったから……。
「ちょ、待てよ! いつ優芽ちゃんがおまえのもんになったんだよ!」
広瀬先輩がすかさずあたしの背後に向かって、声を張り上げる。
「これは、これは、これは……っ!! 生徒会執行部総出で、本気で奪い合いの模様です!」
司会がおもしろかしくマイクで叫ぶ。
蓮先輩、なんだよね……?
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