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*第5章*
こいつは俺の女だ(2)
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あたしの頭の中は、ハテナマークで埋め尽くされていくばっかり。
「まあそのうち分かるんじゃないかな? とにかく優芽の気持ちに正直になって、後夜祭乗り切ってね!」
「う、うん……」
何か、腑に落ちないなあ……。
そう思いながら返事をすると、キュッと結衣があたしの手を引く。
「じゃあ、あたしたちも行こうか!」
「……うん!」
あたしたちも円状に並ぶ女子生徒の中に入る。
そして辺りが暗くなり、校庭がライトアップされる中、後夜祭恒例のフォークダンスが始まった。
フォークダンスの曲として有名な『オクラホマミキサー』に合わせて、隣の男子生徒と軽く手を取って、ステップを踏む。
一通りのステップを終えると、パートナーは順次交代していくといった感じで進んでいく。
もしそのとき、好きな相手に当たった場合は、円の中央に相手を連れて行って公開告白をする、といった告白大会付きなんだって!
暗黙の了解で、基本的に告白は男子生徒からっていうのがこの学校の伝統らしい……。
三人目の人とステップを踏みはじめたとき、円の一部がざわつく。
見ると一人の男子生徒が、円の中央に一人の女子生徒を引っ張り出していた。
え……、結衣……っ!?
そう思って振り返ると、さっきまであたしの後ろで踊っていた結衣はいつの間にか姿を消していた。
前後からも、中央の二人を好奇の目で見つめる声がザワザワと聞こえる。
「うっそ、もう? 誰、誰?」
「サッカー部のキャプテンとマネージャーらしいよ!」
「まだ始まったばかりなのに、熱いねーっ!」
そして、サッカー部のキャプテンと言われてる人が、結衣に向かって叫ぶ。
「片桐マネが好きです! サッカー部に入部してきたときに一目惚れしたんです! 付き合ってください!!」
「ちょっと、待った!」
すると、途端にそう叫んで円の中央に駆け込んでくる、二人の男子生徒。
「俺も片桐マネのこと、ずっと可愛いなって思ってて、ずっと好きでした!」
「いつも試合のとき、声をかけてくれる片桐マネが、大好きです!」
この告白大会は、もし自分の好きな人が先に誰かに告白された場合、ちょっと待ったと飛び込み参加をすることができる。
「うっわあ~! 始まって早々、盛大なる告白にこちら文化祭実行委員としてもびっくりです! さあ、片桐マネさん、お返事は……?」
興奮気味にマイク片手に叫ぶ、文化祭実行委員の司会役の男子生徒。
結衣は困ったように眉を下げていたが、司会の人の声を合図に、申し訳なさげに頭を下げた。
「……ごめんなさい」
残念そうに、結衣の前でうなだれる三人の男子生徒。
そうだよね。
結衣は美人ですごくモテるけど……。
何人もの男の人から告白されたところで、結衣は妹尾先輩が好きなんだもんね。
「あー、残念っ! それではまた目当てのお相手と当たった方は、どんどん真ん中に引っ張って来てくださいね!」
司会のその声が聞こえたあと、結衣は恥ずかしそうにあたしの後ろに戻ってきた。
そのあとも、何組も盛大に行われる告白大会。
中には、カップル成立で、真ん中で踊り続けている人まで。
何だかみんな、積極的ですごいな……。
あたしには、そんな勇気も自信もないよ……。
ちらりと蓮先輩を探すと、蓮先輩はあたしの前の方にいるのが見えた。
遠くからでも蓮先輩と踊る女子やもう少しで蓮先輩に当たる女子が、蓮先輩を意識してるのが見てて分かった。
普段は蓮先輩との距離が近すぎて気に留めてなかったけど、蓮先輩を密かに想ってる女子生徒は多いもんね……。
あたしが蓮先輩に当たるとしたら、円の進む方向からだいぶ時間がかかりそうだった。
フォークダンスがどのくらいの時間行われるのかは分からないけど、下手をすればあたしが蓮先輩に当たる前に曲が終わってしまいそうだ。
でもやっぱり、せっかくの後夜祭。
あたしも蓮先輩と踊りたい。
あたしが蓮先輩と踊るまで、曲が続いてくれるといいけど……。
そんな風に思っていると、背後から黄色い歓声がパートナー交代の度に近づいてくる。
中央の告白大会とは無関係に響く歓声に、何だろう? と振り返る。
すると、少し後ろに妹尾先輩がいるのが見えた。
円をぐるりと見渡す感じ、生徒会の先輩たちは分散して円の中に入っているようだった。
一人、また一人と妹尾先輩と当たる番が近づく。
背後の結衣が妹尾先輩に当たる。
「片桐マネ、めっちゃモテモテやったやん。全員断っとったけど、みんな好みとはちゃうかったんか?」
「あたしのこと、そんなに気になります?」
「いや、そういう意味ちゃうねんけどな。どうなんかな思ってな……」
どことなく小悪魔チックな結衣の言葉に、苦笑いを漏らす妹尾先輩の声が聞こえる。
何となく二人の会話に耳を傾けていたあたし。
すると、いつの間にかパートナー交代の番がやってきていた。
「まあそのうち分かるんじゃないかな? とにかく優芽の気持ちに正直になって、後夜祭乗り切ってね!」
「う、うん……」
何か、腑に落ちないなあ……。
そう思いながら返事をすると、キュッと結衣があたしの手を引く。
「じゃあ、あたしたちも行こうか!」
「……うん!」
あたしたちも円状に並ぶ女子生徒の中に入る。
そして辺りが暗くなり、校庭がライトアップされる中、後夜祭恒例のフォークダンスが始まった。
フォークダンスの曲として有名な『オクラホマミキサー』に合わせて、隣の男子生徒と軽く手を取って、ステップを踏む。
一通りのステップを終えると、パートナーは順次交代していくといった感じで進んでいく。
もしそのとき、好きな相手に当たった場合は、円の中央に相手を連れて行って公開告白をする、といった告白大会付きなんだって!
暗黙の了解で、基本的に告白は男子生徒からっていうのがこの学校の伝統らしい……。
三人目の人とステップを踏みはじめたとき、円の一部がざわつく。
見ると一人の男子生徒が、円の中央に一人の女子生徒を引っ張り出していた。
え……、結衣……っ!?
そう思って振り返ると、さっきまであたしの後ろで踊っていた結衣はいつの間にか姿を消していた。
前後からも、中央の二人を好奇の目で見つめる声がザワザワと聞こえる。
「うっそ、もう? 誰、誰?」
「サッカー部のキャプテンとマネージャーらしいよ!」
「まだ始まったばかりなのに、熱いねーっ!」
そして、サッカー部のキャプテンと言われてる人が、結衣に向かって叫ぶ。
「片桐マネが好きです! サッカー部に入部してきたときに一目惚れしたんです! 付き合ってください!!」
「ちょっと、待った!」
すると、途端にそう叫んで円の中央に駆け込んでくる、二人の男子生徒。
「俺も片桐マネのこと、ずっと可愛いなって思ってて、ずっと好きでした!」
「いつも試合のとき、声をかけてくれる片桐マネが、大好きです!」
この告白大会は、もし自分の好きな人が先に誰かに告白された場合、ちょっと待ったと飛び込み参加をすることができる。
「うっわあ~! 始まって早々、盛大なる告白にこちら文化祭実行委員としてもびっくりです! さあ、片桐マネさん、お返事は……?」
興奮気味にマイク片手に叫ぶ、文化祭実行委員の司会役の男子生徒。
結衣は困ったように眉を下げていたが、司会の人の声を合図に、申し訳なさげに頭を下げた。
「……ごめんなさい」
残念そうに、結衣の前でうなだれる三人の男子生徒。
そうだよね。
結衣は美人ですごくモテるけど……。
何人もの男の人から告白されたところで、結衣は妹尾先輩が好きなんだもんね。
「あー、残念っ! それではまた目当てのお相手と当たった方は、どんどん真ん中に引っ張って来てくださいね!」
司会のその声が聞こえたあと、結衣は恥ずかしそうにあたしの後ろに戻ってきた。
そのあとも、何組も盛大に行われる告白大会。
中には、カップル成立で、真ん中で踊り続けている人まで。
何だかみんな、積極的ですごいな……。
あたしには、そんな勇気も自信もないよ……。
ちらりと蓮先輩を探すと、蓮先輩はあたしの前の方にいるのが見えた。
遠くからでも蓮先輩と踊る女子やもう少しで蓮先輩に当たる女子が、蓮先輩を意識してるのが見てて分かった。
普段は蓮先輩との距離が近すぎて気に留めてなかったけど、蓮先輩を密かに想ってる女子生徒は多いもんね……。
あたしが蓮先輩に当たるとしたら、円の進む方向からだいぶ時間がかかりそうだった。
フォークダンスがどのくらいの時間行われるのかは分からないけど、下手をすればあたしが蓮先輩に当たる前に曲が終わってしまいそうだ。
でもやっぱり、せっかくの後夜祭。
あたしも蓮先輩と踊りたい。
あたしが蓮先輩と踊るまで、曲が続いてくれるといいけど……。
そんな風に思っていると、背後から黄色い歓声がパートナー交代の度に近づいてくる。
中央の告白大会とは無関係に響く歓声に、何だろう? と振り返る。
すると、少し後ろに妹尾先輩がいるのが見えた。
円をぐるりと見渡す感じ、生徒会の先輩たちは分散して円の中に入っているようだった。
一人、また一人と妹尾先輩と当たる番が近づく。
背後の結衣が妹尾先輩に当たる。
「片桐マネ、めっちゃモテモテやったやん。全員断っとったけど、みんな好みとはちゃうかったんか?」
「あたしのこと、そんなに気になります?」
「いや、そういう意味ちゃうねんけどな。どうなんかな思ってな……」
どことなく小悪魔チックな結衣の言葉に、苦笑いを漏らす妹尾先輩の声が聞こえる。
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すると、いつの間にかパートナー交代の番がやってきていた。
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