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*第5章*
メイド服の誘惑(3)
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「その件については、間に合ってますので!」
生徒会室の内扉がバーンと開いて、高い声が生徒会室に響いた。
「え!? ゆ、結衣……?」
そこには、両腕を組んだ格好で結衣が仁王立ちしていた。
「どうしたの? サッカー部は、いいの?」
あたしが結衣に駆け寄って尋ねると、綺麗にニッコリと笑ってくれる結衣。
「うん、サッカー部の方は人も豊富だし。さっき廊下で会長と会って、あたしは生徒会の文化祭の準備を手伝うようにって頼まれたの」
「え? 蓮から、直接……?」
その声に振り向くと、笹倉先輩が訝しげに顔をしかめていた。
「そうですよ! だから、優芽の衣装の件はあたしが責任持ってフォローしますので、ご心配なく!」
まさか、さっきの今で、蓮先輩から結衣に直接衣装の話がいってるなんて思わなくて。
「さ、優芽、はじめよう?」
突然の出来事に呆然としていると、結衣に手をつかまれて、グイグイとミシンの前へ連れて行かれた。
長机の前に、二つのパイプ椅子を並べて、ミシンの前に座る。
結衣は、慣れた手つきでミシンの針に糸を通すと、あたしのメイド服を長机に広げた。
「うーん、確かにこのメイド服は会長が怒るのも無理ないかも。色気仕掛けにはもって来いだけどねー」
結衣はそう言いながら首をかしげると、メイド服のスカートの裾に、黒い布を当てていく。
「優芽の背の高さだと、このくらいはスカート丈、必要よね。そこに、フリルをつけるから、布自体はやや長めに……っと」
みるみるうちに、手直し用の布に印をつけていく結衣。
あたしは、ただ手際よく進めていく結衣を、見ていることしかできなかった。
「よしっ! さあ、縫うか!」
あっという間に、結衣は必要な大きさと形に布を切ってしまった。
「す、すごいね! 結衣って、すごく手慣れてる感じする。よく裁縫とかするの?」
「まあね。小学生の頃から自分の服を造るのが趣味みたいなもんだったから」
あはは、とはにかむ結衣。
すごいなあ……。
こんな女の子っぽい趣味があるなんて、ますます結衣がうらやましくなった。
でも……。
『じゃあ、おまえのあの親友に頼めばいいだろ?』
あたしが裁縫が得意じゃないと言ったとき、そう言って、結衣に直接頼んでくれた蓮先輩。
もしかして、蓮先輩は結衣が裁縫が得意って知ってたのかな……?
突然脳内に浮かび上がる疑問に、何だか胸にモヤがかかったような気持ちになる。
「優芽、仮止めしてみたから、ちょっと身体に合わせるよ?」
「え、あ、うん……」
あたしにそっとメイド服を合わせてくれる結衣。
もしかして、蓮先輩と結衣って実は仲が良いとか……?
結衣は美人だし、この前合宿に行ったときに蓮先輩と意気投合した可能性も考えられる。
あたしがそこまで思考を回転させたとき、不意に結衣に顔を覗き込まれる。
「優芽、どうしたの? ボーッとして」
「う、ううん。何でもない」
「あはは。優芽は相変わらずだね」
そう笑いながら、結衣はカタカタと目の前のミシンでメイド服を縫いはじめた。
あたしったら結衣に全部仕事押し付けて、何変なこと考えてるんだろう……?
「ごめんね、あたしも手伝うよ」
「んー、じゃあここ、ちょっと押さえてて」
頭の中を占めていた余計な考えを隅へと追いやり、あたしは結衣とメイド服の手直しに集中した。
*
「優芽、すっごくいい!!」
「そ、そうかな……?」
結衣が来てくれたおかげで、問題のメイド服の手直しは、わずか三日で終えることができた。
問題のメイド服のスカートは、ちょうど膝丈で調整され、露出はなるべく控えたデザインに変更されていた。
「うん、やっぱりこっちの方が優芽っぽくて可愛い!」
あたしは、早速仕上がったメイド服を試着しているところなんだけど……。
さっきから結衣にベタ褒めされて、恥ずかし過ぎるよ……。
だけど、手直ししたのが分からないくらいの綺麗な仕上がりに、改めて結衣の裁縫の腕のすごさを実感した。
生徒会室の内扉がバーンと開いて、高い声が生徒会室に響いた。
「え!? ゆ、結衣……?」
そこには、両腕を組んだ格好で結衣が仁王立ちしていた。
「どうしたの? サッカー部は、いいの?」
あたしが結衣に駆け寄って尋ねると、綺麗にニッコリと笑ってくれる結衣。
「うん、サッカー部の方は人も豊富だし。さっき廊下で会長と会って、あたしは生徒会の文化祭の準備を手伝うようにって頼まれたの」
「え? 蓮から、直接……?」
その声に振り向くと、笹倉先輩が訝しげに顔をしかめていた。
「そうですよ! だから、優芽の衣装の件はあたしが責任持ってフォローしますので、ご心配なく!」
まさか、さっきの今で、蓮先輩から結衣に直接衣装の話がいってるなんて思わなくて。
「さ、優芽、はじめよう?」
突然の出来事に呆然としていると、結衣に手をつかまれて、グイグイとミシンの前へ連れて行かれた。
長机の前に、二つのパイプ椅子を並べて、ミシンの前に座る。
結衣は、慣れた手つきでミシンの針に糸を通すと、あたしのメイド服を長机に広げた。
「うーん、確かにこのメイド服は会長が怒るのも無理ないかも。色気仕掛けにはもって来いだけどねー」
結衣はそう言いながら首をかしげると、メイド服のスカートの裾に、黒い布を当てていく。
「優芽の背の高さだと、このくらいはスカート丈、必要よね。そこに、フリルをつけるから、布自体はやや長めに……っと」
みるみるうちに、手直し用の布に印をつけていく結衣。
あたしは、ただ手際よく進めていく結衣を、見ていることしかできなかった。
「よしっ! さあ、縫うか!」
あっという間に、結衣は必要な大きさと形に布を切ってしまった。
「す、すごいね! 結衣って、すごく手慣れてる感じする。よく裁縫とかするの?」
「まあね。小学生の頃から自分の服を造るのが趣味みたいなもんだったから」
あはは、とはにかむ結衣。
すごいなあ……。
こんな女の子っぽい趣味があるなんて、ますます結衣がうらやましくなった。
でも……。
『じゃあ、おまえのあの親友に頼めばいいだろ?』
あたしが裁縫が得意じゃないと言ったとき、そう言って、結衣に直接頼んでくれた蓮先輩。
もしかして、蓮先輩は結衣が裁縫が得意って知ってたのかな……?
突然脳内に浮かび上がる疑問に、何だか胸にモヤがかかったような気持ちになる。
「優芽、仮止めしてみたから、ちょっと身体に合わせるよ?」
「え、あ、うん……」
あたしにそっとメイド服を合わせてくれる結衣。
もしかして、蓮先輩と結衣って実は仲が良いとか……?
結衣は美人だし、この前合宿に行ったときに蓮先輩と意気投合した可能性も考えられる。
あたしがそこまで思考を回転させたとき、不意に結衣に顔を覗き込まれる。
「優芽、どうしたの? ボーッとして」
「う、ううん。何でもない」
「あはは。優芽は相変わらずだね」
そう笑いながら、結衣はカタカタと目の前のミシンでメイド服を縫いはじめた。
あたしったら結衣に全部仕事押し付けて、何変なこと考えてるんだろう……?
「ごめんね、あたしも手伝うよ」
「んー、じゃあここ、ちょっと押さえてて」
頭の中を占めていた余計な考えを隅へと追いやり、あたしは結衣とメイド服の手直しに集中した。
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「優芽、すっごくいい!!」
「そ、そうかな……?」
結衣が来てくれたおかげで、問題のメイド服の手直しは、わずか三日で終えることができた。
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「うん、やっぱりこっちの方が優芽っぽくて可愛い!」
あたしは、早速仕上がったメイド服を試着しているところなんだけど……。
さっきから結衣にベタ褒めされて、恥ずかし過ぎるよ……。
だけど、手直ししたのが分からないくらいの綺麗な仕上がりに、改めて結衣の裁縫の腕のすごさを実感した。
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