キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

文字の大きさ
上 下
58 / 81
*第4章*

甘い寝息(1)

しおりを挟む
【琉生Side】


 生徒会の夏の合宿の全日程を終えた僕たちは、中型車に揺られながら帰路についていた。

 運転手は、幼い頃から僕の面倒をよく見てくれた、使用人の中井さんだ。

 車内は、運転席の後ろに、座席が三列ずつ並んでいる。

 最前列の席は、蓮と達也。

 真ん中には、僕と優芽ちゃん。

 そして、後部席には陸人と片桐さんが座る。

 僕の前に座る達也が、こちらを振り返る。


「いいなあ、琉生は優芽ちゃんの隣。おまえ、バーベキューのときといい、無駄にあみだくじ運強くね?」

 そう。帰りの車のこの座席も、片桐さんの案であみだくじで決まったんだ。


「仕方ねえだろ。くじで決まったんだから文句も言えねえし」

 こちらを見つめて肩を落とす達也に、蓮が口を開く。


「はああ。何が楽しくて、俺は蓮の隣の席なんだよ……」

「嫌ならここで運転手さんに頼んで、おまえだけ降ろしてもらってもいいけど」

「ま、待て待て。それは勘弁……」

 目の前でぎゃいぎゃい騒ぐ達也を横目に、僕はそっと優芽ちゃんに視線を落とす。


 三泊四日。

 よっぽど疲れてたんだろうな。

 優芽ちゃんは、車に乗ってからというもの、すぐに眠ってしまった。

 色白い肌に、ほのかにピンクがかった柔らかそうな頬を見ていると、思わずそこに触れたい衝動に駆られる。


「ってかさあ、朝から気になってたんだけど、いつの間に優芽ちゃんって、蓮のことだけ名前呼びするようになったんだよ」

 前方から聞こえた達也の声に、耳の穴をこじ開ける。

 その声は、後部席の陸人にも聞こえたようで、陸人も僕らの席の背もたれに身を乗り出して口を開く。


「ほんまに。いつの間にか神崎先輩から蓮先輩に変わっとるんやもんなあ」

 今朝僕らが目を覚まして別荘のリビングに降りたときには、すでに朝ごはんを済ませていた蓮と優芽ちゃん。

 昨日までとは違う、二人の間の変化には誰もが気づいていた。


『優芽』

『蓮先輩』

 確かに昨日の時点では、カレー女、神崎先輩と呼び合っていたはずだったのに……。

 二人は、いつ、どうなって、ああいう関係になったのか。


「別に、ただの交換条件だ」

「はあ? 交換条件?」

 蓮のこたえに、素っ頓狂な声を上げる達也。

 交換条件……?


「何やそれ。優芽ちゃんが蓮に名前で呼べとでも言ったみたいな言い方やんか」

 陸人も不服そうに口を尖らせる。


「まあ、そんなところだ」

 だけど、あっさりとそれを肯定した蓮。

 後ろから見ていても分かるくらいに、達也はがっくりと肩を落とした。


 だけど、そこだけ聞いて落ち込むのは、早くない?

 だって……。


「なるほどねー。さすがの優芽ちゃんも、蓮にカレー女って呼ばれるのに耐えられなくなったんだね?」

「あ? 何だ琉生、嫌みか?」

「別に。蓮が優芽ちゃんに、自分だけ名前で呼んでもらえるように仕向けてたのかなって」

「俺はおまえみたいに黒くねえよ」

 蓮は面倒臭そうにため息を落とすと、視線を前方へと移した。

 まあ、僕が若干腹黒いのは知ってるけどさ。


「でも蓮だけそんな理由でずるくね? 俺のことも名前で呼んでって頼もうかなあ~?」

 達也がこちらに身を乗り出して、眠る優芽ちゃんを見つめる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【短編集2】恋のかけらたち

美和優希
恋愛
魔法のiらんどの企画で書いた恋愛小説の短編集です。 甘々から切ない恋まで いろんなテーマで書いています。 【収録作品】 1.百年後の未来に、きみと(2020.04.24) →誕生日に、彼女からどこにでも行ける魔法のチケットをもらって──!? 魔法のiらんど企画「#つながる魔法で続きをつくろう」 で書いたSSです。 2.優しい鈴の音と鼓動(2020.11.08) →幼なじみの凪くんは最近機嫌が悪そうで意地悪で冷たい。嫌われてしまったのかと思っていたけれど──。 3.歌声の魔法(2020.11.15) →地味で冴えない女子の静江は、いつも麗奈をはじめとしたクラスメイトにいいように使われていた。そんなある日、イケメンで不真面目な男子として知られる城野に静江の歌と麗奈への愚痴を聞かれてしまい、麗奈をギャフンと言わせる作戦に参加させられることになって──!? 4.もしも突然、地球最後の日が訪れたとしたら……。(2020.11.23) →“もしも”なんて来てほしくないけれど、地球消滅の危機に直面した二人が最後に見せたものは──。 5.不器用なサプライズ(2021.01.08) →今日は彼女と付き合い始めて一周年の記念日。それなのに肝心のサプライズの切り出し方に失敗してしまって……。 *()内は初回公開・完結日です。 *いずれも「魔法のiらんど」で公開していた作品になります。サービス終了に伴い、ページ分けは当時のままの状態で公開しています。 *現在は全てアルファポリスのみの公開です。 アルファポリスでの公開日*2025.02.11 表紙画像は、イラストAC(がらくった様)の画像に文字入れをして使わせていただいてます。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...