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*第4章*
交換条件!?(3)
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神崎先輩を見ると、驚いたように目を見開いている。昇りはじめた朝日のせいか、その頬は、若干赤く染まっているように見えた。
あたしと目が合うなり、満足そうに微笑む神崎先輩。
ただでさえ近い神崎先輩の顔が、更にあたしに近づく。
え……っ!?
あたしが思わずぎゅっと目をつむると、ふわりと耳元に吐息が触れる。
「……優芽」
甘く囁くようにあたしの名前を呼ぶ神崎先輩。
一気にあたしの鼓動は、加速度を増した。
「……は、はいぃっ!」
ドキドキしすぎて、思っていた以上に大きな声で返事をしたあたし。
神崎先輩は、そんなあたしを見て吹き出すように笑った。
「返事だけはいいな」
「す、すみませ……」
「でも、ちゃんと名前で呼べるじゃん。じゃあ、これからはそう呼べよ?」
「へ……?」
これからも……?
「そしたら、俺も呼んでやるよ」
ちょ、ちょっと待ってよ!
「これからもって……」
「は? 一回言えたんだから、言えるだろ? おまえが一回限りなら、俺も一回限りしか呼んでやんねーし」
ツンとした感じにそう言う神崎先輩。
それって、半永久的に蓮先輩って呼ばなきゃいけないってこと……!?
そう言われて、あたしはこう答えるしかなかった。
「……わかり、ました」
何だか、神崎先輩に上手く言いくるめられた感じがする。
あたしの返事を聞くなり、満足げな笑みを浮かべる神崎……蓮先輩。
「ちなみに、達也たちに何か言われても、他の奴らのことは名前呼びするなよ?」
「え!? 何でですか!?」
「会長命令だから」
「えー、権力乱用ですか?」
「うっせえなあ。おまえは俺のことだけ名前で呼んでりゃいいんだよ!」
蓮先輩はハハッと笑って、あたしの頭をゴシゴシと撫でた。
「ちょっ、先輩! 何するんですか!?」
蓮先輩のせいで、頭ボサボサだよ……。
そのときだった。
ぐ~~~、きゅるきゅるきゅるきゅる……。
一瞬の静寂。
あたしは、とっさに音の出所のお腹を押さえた。
驚いたようにあたしを見る、蓮先輩。
「え、いや、あの……。す、すみませ……」
な、なんでこんなときにお腹が鳴るの!?
恥ずかしいよぅ……。
すると、蓮先輩はプッと吹き出すように笑った。
「やっぱおまえ、おもしれーわ!」
そして、その場にスッと立つ蓮先輩。
「ちょっと早いけど、先に二人で朝飯食うか」
「……え?」
「優芽の腹がうるせーから、特別な」
「ちょっ、蓮先輩……」
そんな言い方しなくても……。
「そんな顔するな。こう見えて、料理は嫌いじゃない。トーストと特製いちごミルクくらいなら、すぐに食わせてやれる」
ついて来いよ、と蓮先輩は先にスタスタと歩いていってしまう。
特製いちごミルクって……。
蓮先輩らしいというか、なんというか。
でも、飲んでみたいかも。蓮先輩の特製いちごミルク。
そんな風に考えて、思わず頬が緩む。
俺様で意地悪だけど、不器用なだけで、実はとっても優しい蓮先輩。
ざわつく胸の音が、何故だか心地好い……。
この気持ちは、一体……?
「おい! 何モタモタしてんだよ! 俺の作る朝飯じゃ不満でもあんのか!?」
「す、すみません! 今行きます!」
いけない、いけない!
って、あれ……?
あたし今、何考えてたんだっけ……。
慌てて蓮先輩のそばまで走ると、ふわりと手をつかまれる。
「あ、あのっ!? 蓮先輩……?」
「入学式のときみたいに、おまえがまた迷子になったら困るだろ?」
「な、なりませんよ!!」
確かに入学式のときは迷子になってたけどさ……。
こんな丸三日も過ごした海岸で迷子だなんて……。
あたし、蓮先輩に何だと思われてるんだろう……?
ムゥ~っと眉を寄せて蓮先輩を見上げるも、効果はないようで……。
蓮先輩はあたしの反応に、満足げに楽しそうな笑みを浮かべるだけだった。
あたしと目が合うなり、満足そうに微笑む神崎先輩。
ただでさえ近い神崎先輩の顔が、更にあたしに近づく。
え……っ!?
あたしが思わずぎゅっと目をつむると、ふわりと耳元に吐息が触れる。
「……優芽」
甘く囁くようにあたしの名前を呼ぶ神崎先輩。
一気にあたしの鼓動は、加速度を増した。
「……は、はいぃっ!」
ドキドキしすぎて、思っていた以上に大きな声で返事をしたあたし。
神崎先輩は、そんなあたしを見て吹き出すように笑った。
「返事だけはいいな」
「す、すみませ……」
「でも、ちゃんと名前で呼べるじゃん。じゃあ、これからはそう呼べよ?」
「へ……?」
これからも……?
「そしたら、俺も呼んでやるよ」
ちょ、ちょっと待ってよ!
「これからもって……」
「は? 一回言えたんだから、言えるだろ? おまえが一回限りなら、俺も一回限りしか呼んでやんねーし」
ツンとした感じにそう言う神崎先輩。
それって、半永久的に蓮先輩って呼ばなきゃいけないってこと……!?
そう言われて、あたしはこう答えるしかなかった。
「……わかり、ました」
何だか、神崎先輩に上手く言いくるめられた感じがする。
あたしの返事を聞くなり、満足げな笑みを浮かべる神崎……蓮先輩。
「ちなみに、達也たちに何か言われても、他の奴らのことは名前呼びするなよ?」
「え!? 何でですか!?」
「会長命令だから」
「えー、権力乱用ですか?」
「うっせえなあ。おまえは俺のことだけ名前で呼んでりゃいいんだよ!」
蓮先輩はハハッと笑って、あたしの頭をゴシゴシと撫でた。
「ちょっ、先輩! 何するんですか!?」
蓮先輩のせいで、頭ボサボサだよ……。
そのときだった。
ぐ~~~、きゅるきゅるきゅるきゅる……。
一瞬の静寂。
あたしは、とっさに音の出所のお腹を押さえた。
驚いたようにあたしを見る、蓮先輩。
「え、いや、あの……。す、すみませ……」
な、なんでこんなときにお腹が鳴るの!?
恥ずかしいよぅ……。
すると、蓮先輩はプッと吹き出すように笑った。
「やっぱおまえ、おもしれーわ!」
そして、その場にスッと立つ蓮先輩。
「ちょっと早いけど、先に二人で朝飯食うか」
「……え?」
「優芽の腹がうるせーから、特別な」
「ちょっ、蓮先輩……」
そんな言い方しなくても……。
「そんな顔するな。こう見えて、料理は嫌いじゃない。トーストと特製いちごミルクくらいなら、すぐに食わせてやれる」
ついて来いよ、と蓮先輩は先にスタスタと歩いていってしまう。
特製いちごミルクって……。
蓮先輩らしいというか、なんというか。
でも、飲んでみたいかも。蓮先輩の特製いちごミルク。
そんな風に考えて、思わず頬が緩む。
俺様で意地悪だけど、不器用なだけで、実はとっても優しい蓮先輩。
ざわつく胸の音が、何故だか心地好い……。
この気持ちは、一体……?
「おい! 何モタモタしてんだよ! 俺の作る朝飯じゃ不満でもあんのか!?」
「す、すみません! 今行きます!」
いけない、いけない!
って、あれ……?
あたし今、何考えてたんだっけ……。
慌てて蓮先輩のそばまで走ると、ふわりと手をつかまれる。
「あ、あのっ!? 蓮先輩……?」
「入学式のときみたいに、おまえがまた迷子になったら困るだろ?」
「な、なりませんよ!!」
確かに入学式のときは迷子になってたけどさ……。
こんな丸三日も過ごした海岸で迷子だなんて……。
あたし、蓮先輩に何だと思われてるんだろう……?
ムゥ~っと眉を寄せて蓮先輩を見上げるも、効果はないようで……。
蓮先輩はあたしの反応に、満足げに楽しそうな笑みを浮かべるだけだった。
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