キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

文字の大きさ
上 下
56 / 81
*第4章*

交換条件!?(2)

しおりを挟む
「……でも、あのときあたしのことを優芽って呼んでくれたのは、神崎先輩だったんですよね?」

「それがどうかしたか?」

 どうかしたか? って……。

 っていうか、やっぱり神崎先輩だったんだ。

 さも問題なさげに言う神崎先輩だけど……。


「いつも神崎先輩、あたしのことカレー女って呼ぶから……」

「ああ、そうだったな」

 ハハッと思い出したように笑う神崎先輩。


「そうですよ! あたしには、ちゃんと葉山優芽って名前があるんですから!」

「そんなにムキにならなくても、知ってるから」

 はいはい、と子どもをなだめるように言われる。


「それなら名前で呼んでくださいよ! いつまでもカレー女だなんて嫌です」

「そうか。そんなに俺に名前で呼ばれたいのか?」

 名前で呼ばれたいって、改めて声に出して言われると、恥ずかしい……。

 でも、ここで負けたら、いつまで経ってもカレー女のままだ。


「そうですよ! 肝試しのときだって名前で呼んでもらえて、あたし、嬉しかったんですから!!」

 もうヤケになってそう言うと、ククッと肩を震わせて笑う神崎先輩。


「仕方ねえなあ。じゃあ望み通り呼んでやるよ」

「本当ですか!?」

「そのかわり、おまえも俺のこと名前で呼べよ?」

「へ……?」

 神崎先輩を、名前で……?


「ちょ、ちょっと待ってください! それ、どういう意味ですか!?」

「は? もしかしておまえ、この程度の日本語も理解できねえのか?」

「……意味くらい、わかりますよ……」

「じゃあ呼べよ。交換条件だ」

 ええええっ!?

 何でそうなるの?


「まさか、俺の名前、覚えてねえなんてことないだろうな?」

「……覚えてますよ」

「じゃあ、呼んでみろよ」

 何でこうなるのよぉぉ……。

 男子の名前自体、苗字でしか呼んだことないのに……。

 しかも、その初めて名前で呼ぶ相手が神崎先輩だなんて……。

 バクバクと心臓が痛いくらいに音を立てる。

 あたしは、その音に負けないように、声を絞り出す。


「……れ」

 だけど、やっぱり恥ずかしいよぅ……。


「……れ、れ……」

「れ?」

 神崎先輩があたしの顔を覗き込むように見る。

 先輩、距離が、近いです……。

 恥ずかしさに、思わず目をつむる。


「れ、れ……、れんこん!!」

 その瞬間、思わず違う単語が口から飛び出した。


「バカ! 誰がれんこんだ! 俺はそんな穴だらけじゃねえぞ!?」

「す、すみません……っ!!」


 ひゃああ!!

 ど、どうしよう!!

「しかも、れんこんって……。“根”が余計なんだよ」

 神崎先輩は砂浜に“蓮根”と漢字で書いて、“根”の部分を大きくバツした。

 れんこんって漢字で書くと蓮根なんだ……。


「あ、じゃあ惜しかったんですね……」

 思わずそんなことを言ってしまい、神崎先輩は顔をしかめてあたしを見る。


「惜しいわけねえだろ! おまえは一生、カレー女だ」

「え!? それは……っ」

 あたしが慌ててそう言うと、神崎先輩がグッとあたしの顔に顔を近づけてくる。


「それが嫌なら真面目に呼べよ」

 こんな交換条件……。

 神崎先輩の意地悪……。


「……ほら?」

 先を促されて、緊張で身体が震える。


「れ、……蓮、先輩」

 自分でもびっくりするくらい、今にも消えそうな弱々しい声だった。

 言い終わったときには、恥ずかしくて、思いっきり目をつむってうつむいていた。

 だけど、神崎先輩は何も言ってくれなくて……。

 あたしは、恐る恐る目を開けて、神崎先輩を見上げる。

 もしかして、あたしの声が小さすぎて、聞こえてなかったのかな……?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【短編集2】恋のかけらたち

美和優希
恋愛
魔法のiらんどの企画で書いた恋愛小説の短編集です。 甘々から切ない恋まで いろんなテーマで書いています。 【収録作品】 1.百年後の未来に、きみと(2020.04.24) →誕生日に、彼女からどこにでも行ける魔法のチケットをもらって──!? 魔法のiらんど企画「#つながる魔法で続きをつくろう」 で書いたSSです。 2.優しい鈴の音と鼓動(2020.11.08) →幼なじみの凪くんは最近機嫌が悪そうで意地悪で冷たい。嫌われてしまったのかと思っていたけれど──。 3.歌声の魔法(2020.11.15) →地味で冴えない女子の静江は、いつも麗奈をはじめとしたクラスメイトにいいように使われていた。そんなある日、イケメンで不真面目な男子として知られる城野に静江の歌と麗奈への愚痴を聞かれてしまい、麗奈をギャフンと言わせる作戦に参加させられることになって──!? 4.もしも突然、地球最後の日が訪れたとしたら……。(2020.11.23) →“もしも”なんて来てほしくないけれど、地球消滅の危機に直面した二人が最後に見せたものは──。 5.不器用なサプライズ(2021.01.08) →今日は彼女と付き合い始めて一周年の記念日。それなのに肝心のサプライズの切り出し方に失敗してしまって……。 *()内は初回公開・完結日です。 *いずれも「魔法のiらんど」で公開していた作品になります。サービス終了に伴い、ページ分けは当時のままの状態で公開しています。 *現在は全てアルファポリスのみの公開です。 アルファポリスでの公開日*2025.02.11 表紙画像は、イラストAC(がらくった様)の画像に文字入れをして使わせていただいてます。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...