キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

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*第4章*

真夜中の浜辺で(1)

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 笹倉先輩の別荘で過ごす夜も、とうとう三日目の夜を迎えた。

 明日は準備が出来次第、帰る予定だから、三日目は最後ということで目一杯海を満喫した。

 スイカ割りをしたり、結衣と砂浜でお城を作ったり、楽しかったなあ……。

 スイカ割りでは、広瀬先輩が一発でスイカ割っちゃって、一瞬で終わっちゃったんだよね。

 そんなことを思い出しながら、あたしは夜の砂浜にひとり座って、最後の海風を楽しんでいた。


 本当はもう寝ているはずの時間なんだけど、何だか目が冴えてしまって眠れそうになかった。

 だから同じ部屋で眠る結衣を起こさないように、外に出て来たんだ。


「んー……っ」

 思いっきり伸びをして、砂浜に寝転がる。

 頭上には、いくつもの星が、綺麗に輝いていた。


「あれ……? 優芽ちゃん?」

 そのとき、聞き覚えのある驚いたような声に、上体を起こす。


「せ、妹尾先輩……っ!?」

 振り向くと、砂浜と道路の境の石垣の上から顔を覗かせる、妹尾先輩。

 妹尾先輩はひょいとそれを飛び越えて、こちらへと下りて来る。


「こんな真夜中にどないしたん?」

「何だか、眠れなくて……」

「そっか、俺もや。奇遇やな。隣、ええか?」

 あたしがうなずくと、妹尾先輩はニッと笑って、あたしの隣に腰を下ろした。


「こんな形とはいえ、この三日間あまり優芽ちゃんとしゃべられへんかったから、嬉しいわ!」

「妹尾先輩、よく結衣と一緒に居ましたもんね」

「まあ……」

 やっぱり、サッカー部で一緒に活動してる分、仲もいいんだろうな。

 でも、思い返してみても、結構結衣も妹尾先輩につきっきりで……。


「もしかして、結衣と付き合ってる、とかだったりしますか?」

 ほんの興味本位で言葉が口を出た。

 だって、結衣とあまり色恋沙汰の話とかしないし……。

 すると、妹尾先輩は困ったように眉を下げた。


「ちゃうちゃう。何でそうなるねん」

「あ、違いましたか。だって、本当に一緒に居るところをよく見ましたし、仲もいいみたいですし、そうかな、と……」

「あれなあ……」

 妹尾先輩はハアとひとつ大きくため息を漏らし、うなだれた。


 そして、

「片桐マネとは、本当にただの助っ人部員とマネージャーの関係や。それ以上のもんはない」

 妹尾先輩は再び顔を上げると、あたしを見てはっきりと告げた。


「そうなんですか、すみません」

「ええよ。優芽ちゃんにわかってもらえたなら、俺としては充分やし」

 妹尾先輩はどこか安心したように笑うと、その場にごろんと寝そべり、頭上に広がる星を見上げた。


「あっという間やったな、この三日間。明日、もう琉生の家の中型車がお迎えに来るんやもんなあ」

「はい。もう終わりかと思うと、寂しいです」

「せやなあ。とは言うても、夏休み明けたら、今度は文化祭準備に追われて、寂しさに浸ってる間なんてないねんけどな」

 妹尾先輩がハハッと笑う。


「でも、高校の文化祭は中学の文化祭と比べると規模が違うって聞くから、とても楽しみです」

 桜ヶ丘高校の文化祭は、夏休み明けの九月。

 妹尾先輩の言う通り、準備は忙しいのかもしれないけど、高校初めての文化祭、ワクワクしないわけがない。


「せやな、うちの高校の文化祭は、結構盛り上がる方やからなあ。文化祭前は忙しくなると思うけど、また一緒に頑張ってこな」

 そのとき、夜空を一筋の光が横切った。


「流れ星か。何やロマンチックやな」

「はい」

 本当、あたしたちが住んでるところより田舎だから、余分な光が少なくて、小さな星すらよく見える。


「せや! 優芽ちゃんと見に行きたいもんがあるねん。ちょいと着いてきて?」

 突然何かを思いついたかのように立ち上がった妹尾先輩。

 海岸を歩く妹尾先輩のあとに続く。

 少し岩場の多いところを越えて、あまり人気のなさそうな箇所で足を止める。



「ここや」

 湾曲した海岸線。

 先程居た場所が、少し離れた位置に確認できる。


「これや、これや」

 妹尾先輩が何かを見つけたように叫んで、その場にしゃがむ。
 あたしも妹尾先輩のそばに駆け寄って、妹尾先輩の視線の先に視線を落とした。

 すると、そこだけ他の場所と比べて少しくぼみになっているようだった。


「一足遅かったみたいやな……」

 少し残念そうな声が聞こえて、妹尾先輩を見る。


「ここでな、毎年ウミガメが産卵するらしいねん」

「えええっ!?」

「俺も実際に見たわけではないねんけどな、去年来たときに偶然ここで卵見つけて、琉生に聞いたんや。今年もよく似た時期に来たし、もしかしてと思ったんやけどな」

 思わずあたしもそのくぼみをじっと見つめる。
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