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*第4章*
恐怖の肝試し(3)
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「そろそろ中間地点のお堀も近いし、陸人らが出て来てもおかしくないはずなんだが……」
神崎先輩がキョロキョロしながら、左右を懐中電灯で照らす。
「……あれじゃね? 俺らに予測されたらつまんねえから、きっと脅かす場所変えやがったんだよ……」
「確かにな。それは有り得る」
広瀬先輩の言葉に、神崎先輩が同意する。
お堀が見えたとき、そこにうずくまる、小さな人影が見えた。
神崎先輩が懐中電灯で照らす。
姿形は、白い服を着た、肩にかかる黒髪の綺麗な女の子。
「もしかして、結衣……?」
あたしたちは半ばホッとして結衣のそばへと駆け寄った。
しかし……。
女の子が顔を上げるも、顔が、顔が……。
「────っ!?」
あまりのショックに失神しそうになった瞬間。
あたしは力強く、神崎先輩に抱き留められていた。
「おい、優芽! 大丈夫だ、しっかりしろ! おまえ、のっぺらぼうのマスク被ってるだけだなんだろ?」
神崎先輩に支えられる中、恐る恐る目を開ける。
結衣は顎の辺りから口元まで、神崎先輩が見抜いたマスクを顔の下側からめくると、口元だけにこりと笑った。
なんだ、そうだったのか……。
すると、今度は背後から広瀬先輩の悲鳴が響く。
「ぎゃああああああ!! やめろっ!! 俺に、触るんじゃねええええええええ!!」
いつの間にか、あたしたちから離れた場所にいた広瀬先輩。
神崎先輩は広瀬先輩の声の聞こえた方へ懐中電灯を照らす。
「達也! 落ち着け!! そいつは、恐らく陸人だ!!」
すると、すぐに懐中電灯に照らされた区域に飛び込んで来た広瀬先輩は、あたしと神崎先輩に思いっきり抱き着いた。
「ったく、三人とも相当なりきってるな……」
本当に。
この先にまだ笹倉先輩が待ってるんだよね……。
「達也も落ち着いたか?」
グスンと鼻を鳴らす広瀬先輩。
よっぽど妹尾先輩の脅かし方が怖かったんだろうな……。
あたしも、結衣のあの姿を見たときには心臓止まるかと思ったもん……。
折り返し地点から、しばらく平和に時間が過ぎる。
「ここまで何も出ないと、それはそれで、逆に怪しいな……」
広瀬先輩が恐る恐るといった感じに口を開く。
「まあ、でも、油断してたらきっと来るぜ? あの二人であのレベルだ。琉生はもっと極めて来るはずだ」
そのときだった。
スパンと前方の木に、何かが刺さる音がした。
「何? 今の音……」
まるで、矢でも放つような……。
あたしが思わず神崎先輩の腕をつかむ力を強めると、神崎先輩は安心させるようにあたしの手にふわりと手を重ねて口を開いた。
「きっと琉生だ。しっかりつかまってろ」
「琉生ーっ。あー、クワバラクワバラ……」
神崎先輩の声に、あたしの両肩をつかむ力を強め、呪文を唱え出す広瀬先輩。
数歩進んで、何かが刺さったと思われる木に懐中電灯を照らす神崎先輩。
「アーチェリーの矢だ。琉生に間違いねえ」
そう言って神崎先輩が辺りをぐるりと見回したとき、更に前方でドサッと何かが落ちるような音がした。
「そこだ!!」
神崎先輩が音のした方を懐中電灯で照らす。
「は……、ウソ、だろ……?」
「ひいいい……っ!?」
「琉生いいいいいいいーっ!!」
その瞬間、思わず身震いするあたしたち。
目の前には、肩の辺りに矢が刺さり、口周りや服を赤く染めて、グッタリした様子の笹倉先輩が、木の幹に背を預けてダランと座っていた。
「お、おい……! 琉生! 琉生、しっかりしろ!!」
笹倉先輩のそばに駆け寄り、その場に屈んで大声で呼びかける神崎先輩。
幸い、笹倉先輩の肩の辺りに刺さっていた矢は、笹倉先輩の服を貫いているだけのようだった。
「ま、まさか、ゆ、幽霊にやられたとか……、ああああああ!!」
パニックを起こす、広瀬先輩。
「笹倉、先輩……」
目の前の残酷な姿に、思わず涙が笹倉先輩の身体に落ちた。
そのときだった。
先程までグッタリしていた様子の笹倉先輩の赤い口元が怪しげに笑い、閉ざされていた目がパチッと開いた。
「そんなに驚かないでよ。なかなかだったでしょ、僕の演出」
え……、演出……?
そして、スッと立ち上がる笹倉先輩。
「ぎゃああああああ!! 琉生の格好したゾンビが立った!!」
そう叫んであたしにしがみつく、広瀬先輩。
「ゾンビって……、酷いなあ……」
そう言って苦笑いを浮かべる笹倉先輩に、神崎先輩も声を上げる。
「ったく、ビビらせやがって。普通に脅かされると思ってたこっちの身にもなってみろ!」
「だって、普通じゃおもしろくないじゃん」
神崎先輩がキョロキョロしながら、左右を懐中電灯で照らす。
「……あれじゃね? 俺らに予測されたらつまんねえから、きっと脅かす場所変えやがったんだよ……」
「確かにな。それは有り得る」
広瀬先輩の言葉に、神崎先輩が同意する。
お堀が見えたとき、そこにうずくまる、小さな人影が見えた。
神崎先輩が懐中電灯で照らす。
姿形は、白い服を着た、肩にかかる黒髪の綺麗な女の子。
「もしかして、結衣……?」
あたしたちは半ばホッとして結衣のそばへと駆け寄った。
しかし……。
女の子が顔を上げるも、顔が、顔が……。
「────っ!?」
あまりのショックに失神しそうになった瞬間。
あたしは力強く、神崎先輩に抱き留められていた。
「おい、優芽! 大丈夫だ、しっかりしろ! おまえ、のっぺらぼうのマスク被ってるだけだなんだろ?」
神崎先輩に支えられる中、恐る恐る目を開ける。
結衣は顎の辺りから口元まで、神崎先輩が見抜いたマスクを顔の下側からめくると、口元だけにこりと笑った。
なんだ、そうだったのか……。
すると、今度は背後から広瀬先輩の悲鳴が響く。
「ぎゃああああああ!! やめろっ!! 俺に、触るんじゃねええええええええ!!」
いつの間にか、あたしたちから離れた場所にいた広瀬先輩。
神崎先輩は広瀬先輩の声の聞こえた方へ懐中電灯を照らす。
「達也! 落ち着け!! そいつは、恐らく陸人だ!!」
すると、すぐに懐中電灯に照らされた区域に飛び込んで来た広瀬先輩は、あたしと神崎先輩に思いっきり抱き着いた。
「ったく、三人とも相当なりきってるな……」
本当に。
この先にまだ笹倉先輩が待ってるんだよね……。
「達也も落ち着いたか?」
グスンと鼻を鳴らす広瀬先輩。
よっぽど妹尾先輩の脅かし方が怖かったんだろうな……。
あたしも、結衣のあの姿を見たときには心臓止まるかと思ったもん……。
折り返し地点から、しばらく平和に時間が過ぎる。
「ここまで何も出ないと、それはそれで、逆に怪しいな……」
広瀬先輩が恐る恐るといった感じに口を開く。
「まあ、でも、油断してたらきっと来るぜ? あの二人であのレベルだ。琉生はもっと極めて来るはずだ」
そのときだった。
スパンと前方の木に、何かが刺さる音がした。
「何? 今の音……」
まるで、矢でも放つような……。
あたしが思わず神崎先輩の腕をつかむ力を強めると、神崎先輩は安心させるようにあたしの手にふわりと手を重ねて口を開いた。
「きっと琉生だ。しっかりつかまってろ」
「琉生ーっ。あー、クワバラクワバラ……」
神崎先輩の声に、あたしの両肩をつかむ力を強め、呪文を唱え出す広瀬先輩。
数歩進んで、何かが刺さったと思われる木に懐中電灯を照らす神崎先輩。
「アーチェリーの矢だ。琉生に間違いねえ」
そう言って神崎先輩が辺りをぐるりと見回したとき、更に前方でドサッと何かが落ちるような音がした。
「そこだ!!」
神崎先輩が音のした方を懐中電灯で照らす。
「は……、ウソ、だろ……?」
「ひいいい……っ!?」
「琉生いいいいいいいーっ!!」
その瞬間、思わず身震いするあたしたち。
目の前には、肩の辺りに矢が刺さり、口周りや服を赤く染めて、グッタリした様子の笹倉先輩が、木の幹に背を預けてダランと座っていた。
「お、おい……! 琉生! 琉生、しっかりしろ!!」
笹倉先輩のそばに駆け寄り、その場に屈んで大声で呼びかける神崎先輩。
幸い、笹倉先輩の肩の辺りに刺さっていた矢は、笹倉先輩の服を貫いているだけのようだった。
「ま、まさか、ゆ、幽霊にやられたとか……、ああああああ!!」
パニックを起こす、広瀬先輩。
「笹倉、先輩……」
目の前の残酷な姿に、思わず涙が笹倉先輩の身体に落ちた。
そのときだった。
先程までグッタリしていた様子の笹倉先輩の赤い口元が怪しげに笑い、閉ざされていた目がパチッと開いた。
「そんなに驚かないでよ。なかなかだったでしょ、僕の演出」
え……、演出……?
そして、スッと立ち上がる笹倉先輩。
「ぎゃああああああ!! 琉生の格好したゾンビが立った!!」
そう叫んであたしにしがみつく、広瀬先輩。
「ゾンビって……、酷いなあ……」
そう言って苦笑いを浮かべる笹倉先輩に、神崎先輩も声を上げる。
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