キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

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*第4章*

恐怖の肝試し(2)

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 大丈夫ですか!?

 とあたしが聞くより先に、神崎先輩が広瀬先輩の手をつかんであたしから離す。


「そんないやらしい手の繋ぎ方をするな。おまえが怖いだけだろうが!」

「何だよ、怖いもんは怖いもん同士、一緒に居たいもんだろ!?」

「知るか! こいつには俺がついてるから、おまえはどうやってこの肝試しを突破するか、自分のことだけ考えてろ!」

「蓮!! 酷……っ!!」

 神崎先輩にピシャリと言われて、広瀬先輩は更に頭を抱え込んでしまった。



 そうしてやって来た夜。

 うっそうと生い茂る木々の広がる噂の地を前に、あたしたち三人は立っていた。


「マジでやんのかよ……」

 そう言って、あたしの背後に立って、あたしの両肩に手を添えるのは、広瀬先輩。


「……神崎先輩の携帯が鳴ったら、スタートなんですよね?」

 あたしが神崎先輩を見上げると、神崎先輩だけは涼しげな顔で、目の前に広がる暗闇を懐中電灯で照らした。


「そうだな。中の三人の準備が整い次第スタートらしいからな」

「ひいい!!」

 神崎先輩が言い終えると同時に、背後から聞こえた悲鳴に、あたしまでつられて叫んだ。


「きゃああ!」

「達也、仲間内で脅かすような真似はやめろよな」

「だ、だって……」

 そう言って、より強くあたしにしがみつく広瀬先輩。

 さっきの声は、広瀬先輩だったんだ……。


「ったく……」

 呆れたように神崎先輩がため息を吐き出したとき。

 ブー ブー ブー

 神崎先輩のズボンのポケットの中の携帯が震える音が、不気味に闇夜に響く。


「いよいよか……」

 弱々しく響く広瀬先輩の言葉に、あたしもぎゅうっと胸の前で自分の手と手を握りしめる。

 携帯を確認した神崎先輩の声が、異様に大きく聞こえる。


「行くぞ」

 思わずキュッと目をつむって足を踏み出そうとすると、不意に握りしめていたあたしの両手をつかまれる。


「や……っ!!」

 もう、幽霊、出たの……?


「バカ! 俺だ!」

 うっすら涙の滲んだ目を開けると、あたしの手をつかむ神崎先輩。


「そんな風に目つむってたら、危ねえだろうが!! ほら、しっかり俺につかまってろ!」

 そう言って、神崎先輩はあたしの両手に、神崎先輩の左腕をしっかりとつかませた。


 行く手を懐中電灯で照らす、神崎先輩。

 神崎先輩の左腕にしっかりとつかまるあたしに、あたしの両肩にしっかりとつかまる広瀬先輩。

 ダンゴのように身を寄せ合って歩く。


「きゃっ……」

 恐る恐る歩いていると、不意に何かにつまづいた。


「うわああっ!!」

 その瞬間、雄叫びのような悲鳴を上げる広瀬先輩。


「おい、大丈夫か? 達也も、こいつがつまづいてコケそうになっただけだから」

 あたしをしっかりと抱き留めてくれた神崎先輩はそう言って、あたしにしがみついて震える広瀬先輩の肩を叩いた。


「わ、悪い……」

 広瀬先輩は若干涙声でそう言って、再びあたしたちはダンゴになって先へと進んだ。

 それから少し歩いていると、神崎先輩の持つ懐中電灯の明かりに、人の足が照らされる。


 誰か居る……!!

 神崎先輩が懐中電灯で照らす場所を上へとずらすと、にっこりと笑う笹倉先輩が立っていた。


「琉生か……。えらい静かな登場だな」

 神崎先輩がそう言うと、笹倉先輩はあたしたちの方へ近づいて来て、無言で白い紙切れを渡した。

 神崎先輩がそれを広げると、ノートの紙切れに小さく地図が書かれていた。


「この肝試しの順路か?」

 笹倉先輩はコクンとうなずく。

 その紙切れを懐中電灯で照らし、しっかりと順路を確認するあたしたち。


「順路とか考えてたんだ……。ただ真っ直ぐ歩いて、帰って来るだけじゃなかったんかよ……」

 広瀬先輩が不安げにあたしの耳元で言う。


「まあでも、行きはこの道を真っ直ぐ歩いて、突き当たりのお堀かなんかを折り返すときに、今の道と隣り合わせにある西側の道を真っ直ぐ帰るだけだろ? 合ってるよな、琉生」

 神崎先輩は地図に懐中電灯を照らして確認すると、再び笹倉先輩の立っていた方を見やる。

 けれどあたしたちが顔を上げたとき、そこにはすでに笹倉先輩の姿はなかった。


「なんだよあいつ。黙って現れたかと思えば突然消えて……。気色悪い……」

 ブルブルと身震いする広瀬先輩。


「仕方ねえ。完全に役になりきってんだろ」

 神崎先輩はハアとひとつため息をつきながら、地図をズボンのポケットに押し込んだ。


 暗闇の中、虫の音ひとつ聞こえない。

 あたしたちの足音だけが異様に大きく響いた。
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