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*第4章*
恐怖の肝試し(1)
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「えええーっ!!」
バーベキューも終わり、一段落着いた頃。
あたしと結衣と先輩たちは、笹倉先輩の別荘の一階のリビングに集まっていた。
「そんなに大きな声出さなくても。優芽ちゃんって、もしかして怖がり?」
そうやって楽しそうにあたしを見て笑うのは、笹倉先輩。
「ギャーギャー喚くな。たかが肝試しだろうが」
隣に座る神崎先輩が、うるさそうにあたし側の耳を塞いであたしを見る。
たかがって……。
「蓮はクールだね。でも、あの茂みは出るって話だよ? 僕の祖父も昔、怪しげな光を見たって言ってたし」
そう言って、自らの顔を下から懐中電灯で照らす笹倉先輩。
あたしは神崎先輩とは反対側の隣にいた結衣に、思いっきりしがみついた。
「笹倉先輩、変な演出で優芽を怖がらせないでください!」
結衣の声に、笹倉先輩は「あはは」と笑った。
あははって……。
笹倉先輩の別荘からちょうど海と反対側の窓から見える茂み。
海辺だというのに、すぐそばは森のようになっている場所があった。
いわく付きの場所らしく、昔からあの森には幽霊が出ると言われているらしい。
何人も怪しい光を見たとか、変な声を聞いただとか……。
別荘からは歩いて15分くらいのところだし、せっかくみんな居るから試しに肝試しをしようっていう流れになっているんだけど……。
「で、でもさ、マジであっこヤバくね? 俺、去年興味本位で行ってみたんだけど、昼間もあっこだけ薄暗いし……」
「さすがにあそこに入って、誰か行方不明にでもなったら大騒ぎやで?」
広瀬先輩と妹尾先輩が口々に不安の声を漏らす。
そんな二人に、笹倉先輩は楽しそうに口を開いた。
「大丈夫。脅かす役も脅かされる役も、単独行動はさせないように考えるから」
「わざわざ脅かす役も作んのかよ……!」
広瀬先輩は、心なしか青い顔をして叫んだ。
「だって、何もなかったらつまんないじゃん。それとも、達也は怖いの?」
「こ、怖いわけねーだろ!」
フンと鼻を鳴らす広瀬先輩に、呆れたように神崎先輩が口を開く。
「達也、強がりはよせ。ろくなことになんねえぞ?」
「何だよ! べ、別に強がってなんか……っ!!」
「じゃあ、勇敢な達也は、脅かされる役の特別枠に入れてあげるね。他のみんなは、脅かす役脅かされる役、どちらになるかはクジで決めよう」
ここぞと言わんばかりに話を進める、笹倉先輩。
「ま、マジかよぉ~……」
広瀬先輩は悲鳴のような声を上げてがっくりとうなだれた。
「だから、言ったのに」
神崎先輩はそんな広瀬先輩を見て、ひとつため息を落とした。
「じゃあ、即席でクジ作ったから。ここに割り箸があるからみんな引いてね。青いマークの付いてる割り箸を引いた人が、脅かされる役だから」
で、何でこうなっちゃうの……!?
恐る恐る、笹倉先輩の作ったくじを引いたものの、プルプルと震えるあたしの片手に握られている割り箸の先は、しっかりと青く塗られている。
「わっ! 優芽ちゃんも脅かされる役!? 心強いわ!」
「ちょ、ちょっと、広瀬先輩……っ!?」
広瀬先輩にガバッと抱き着かれて、思わず声を上げる。
「いちいちこいつに抱き着くな。俺も青だ」
そう言って、広瀬先輩をあたしから引きはがし、同じ先の青い割り箸を見せるのは神崎先輩。
「うわっ! 蓮も一緒かよ!!」
「嫌ならおまえ一人であの森に入ってもいいんだぞ? まあその場合、おまえが帰って来れなくても、俺の知ったこっちゃねえからな」
「い、一緒に行動させていただきます……」
広瀬先輩を上手く言い負かした神崎先輩は、満足げに笑った。
「あたしたちは脅かす役ですね、妹尾先輩!」
「そ、そうやな、片桐マネ」
楽しそうに笑う結衣と、どこか引きつったように笑う、妹尾先輩。
笹倉先輩はそんな二人に、何も書かれてない割り箸を見せながら、クスクスと笑った。
「僕も脅かす役だけど、中間地点までの間で脅かす役は二人に任せるよ」
「ちょお、琉生! おまえは何もせんつもりなんか!?」
「まさか。一箇所で脅かしてもつまんないだろうし、僕は中間地点で折り返したあとの三人を狙うから。僕は一人でも平気だからね」
笹倉先輩にそう言われて、妹尾先輩は「……なるほどな」とため息混じりにうなずいた。
でも、ちょっと待って!?
本物の幽霊が出なくても、二回はあたしたちは脅かされるってことだよね……。
カタカタと小さく震えていると、あたしの頭にふわりと大きな手が乗せられる。
「そんな怯えんな。肝試しなんて、所詮、子ども騙しだろ?」
見上げると、大丈夫だ、といった感じに神崎先輩は「な?」とあたしに言う。
もしかして、神崎先輩なりに、あたしのこと励ましてくれてるのかな……?
「は、はい……」
「とは言ってもさあ、やっぱ怖いもんは怖いだろ……。優芽ちゃん、怖かったらずっと俺の手、握ってていいからな」
そう言ってあたしの手を取って指を絡める広瀬先輩の手は冷たくて、あたし以上に震えていた。
バーベキューも終わり、一段落着いた頃。
あたしと結衣と先輩たちは、笹倉先輩の別荘の一階のリビングに集まっていた。
「そんなに大きな声出さなくても。優芽ちゃんって、もしかして怖がり?」
そうやって楽しそうにあたしを見て笑うのは、笹倉先輩。
「ギャーギャー喚くな。たかが肝試しだろうが」
隣に座る神崎先輩が、うるさそうにあたし側の耳を塞いであたしを見る。
たかがって……。
「蓮はクールだね。でも、あの茂みは出るって話だよ? 僕の祖父も昔、怪しげな光を見たって言ってたし」
そう言って、自らの顔を下から懐中電灯で照らす笹倉先輩。
あたしは神崎先輩とは反対側の隣にいた結衣に、思いっきりしがみついた。
「笹倉先輩、変な演出で優芽を怖がらせないでください!」
結衣の声に、笹倉先輩は「あはは」と笑った。
あははって……。
笹倉先輩の別荘からちょうど海と反対側の窓から見える茂み。
海辺だというのに、すぐそばは森のようになっている場所があった。
いわく付きの場所らしく、昔からあの森には幽霊が出ると言われているらしい。
何人も怪しい光を見たとか、変な声を聞いただとか……。
別荘からは歩いて15分くらいのところだし、せっかくみんな居るから試しに肝試しをしようっていう流れになっているんだけど……。
「で、でもさ、マジであっこヤバくね? 俺、去年興味本位で行ってみたんだけど、昼間もあっこだけ薄暗いし……」
「さすがにあそこに入って、誰か行方不明にでもなったら大騒ぎやで?」
広瀬先輩と妹尾先輩が口々に不安の声を漏らす。
そんな二人に、笹倉先輩は楽しそうに口を開いた。
「大丈夫。脅かす役も脅かされる役も、単独行動はさせないように考えるから」
「わざわざ脅かす役も作んのかよ……!」
広瀬先輩は、心なしか青い顔をして叫んだ。
「だって、何もなかったらつまんないじゃん。それとも、達也は怖いの?」
「こ、怖いわけねーだろ!」
フンと鼻を鳴らす広瀬先輩に、呆れたように神崎先輩が口を開く。
「達也、強がりはよせ。ろくなことになんねえぞ?」
「何だよ! べ、別に強がってなんか……っ!!」
「じゃあ、勇敢な達也は、脅かされる役の特別枠に入れてあげるね。他のみんなは、脅かす役脅かされる役、どちらになるかはクジで決めよう」
ここぞと言わんばかりに話を進める、笹倉先輩。
「ま、マジかよぉ~……」
広瀬先輩は悲鳴のような声を上げてがっくりとうなだれた。
「だから、言ったのに」
神崎先輩はそんな広瀬先輩を見て、ひとつため息を落とした。
「じゃあ、即席でクジ作ったから。ここに割り箸があるからみんな引いてね。青いマークの付いてる割り箸を引いた人が、脅かされる役だから」
で、何でこうなっちゃうの……!?
恐る恐る、笹倉先輩の作ったくじを引いたものの、プルプルと震えるあたしの片手に握られている割り箸の先は、しっかりと青く塗られている。
「わっ! 優芽ちゃんも脅かされる役!? 心強いわ!」
「ちょ、ちょっと、広瀬先輩……っ!?」
広瀬先輩にガバッと抱き着かれて、思わず声を上げる。
「いちいちこいつに抱き着くな。俺も青だ」
そう言って、広瀬先輩をあたしから引きはがし、同じ先の青い割り箸を見せるのは神崎先輩。
「うわっ! 蓮も一緒かよ!!」
「嫌ならおまえ一人であの森に入ってもいいんだぞ? まあその場合、おまえが帰って来れなくても、俺の知ったこっちゃねえからな」
「い、一緒に行動させていただきます……」
広瀬先輩を上手く言い負かした神崎先輩は、満足げに笑った。
「あたしたちは脅かす役ですね、妹尾先輩!」
「そ、そうやな、片桐マネ」
楽しそうに笑う結衣と、どこか引きつったように笑う、妹尾先輩。
笹倉先輩はそんな二人に、何も書かれてない割り箸を見せながら、クスクスと笑った。
「僕も脅かす役だけど、中間地点までの間で脅かす役は二人に任せるよ」
「ちょお、琉生! おまえは何もせんつもりなんか!?」
「まさか。一箇所で脅かしてもつまんないだろうし、僕は中間地点で折り返したあとの三人を狙うから。僕は一人でも平気だからね」
笹倉先輩にそう言われて、妹尾先輩は「……なるほどな」とため息混じりにうなずいた。
でも、ちょっと待って!?
本物の幽霊が出なくても、二回はあたしたちは脅かされるってことだよね……。
カタカタと小さく震えていると、あたしの頭にふわりと大きな手が乗せられる。
「そんな怯えんな。肝試しなんて、所詮、子ども騙しだろ?」
見上げると、大丈夫だ、といった感じに神崎先輩は「な?」とあたしに言う。
もしかして、神崎先輩なりに、あたしのこと励ましてくれてるのかな……?
「は、はい……」
「とは言ってもさあ、やっぱ怖いもんは怖いだろ……。優芽ちゃん、怖かったらずっと俺の手、握ってていいからな」
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