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*第4章*
狙われるココロ(2)
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「そんな反応されたら、止まらなくなるじゃん」
魅惑的に囁かれて、ドキドキに耐えられなくてギュッと目をつむった。
「あ、あの……っ! ささく……」
あたしの弱々しい声が宙を舞うのと同時に、クククという笑い声とともに、あたしは解放された。
「ごめんごめん。冗談だよ。とりあえず、さっきのようにもう一度構えてみて?」
「え? あ、はい……」
いつも笹倉先輩は冗談っていうけど、あたしにはこの冗談結構キツいんだけどな……。
なかなか静まりそうにない、バクバクという心臓の音を聞きながら、あたしはもう一度弓矢を構えた。
「そう。じゃあ、そのまま的の中心に当てることだけを考えて、矢を放ってみて?」
笹倉先輩に言われた通り、矢を放つ。
シュパンという気持ち良い音とともに的に刺さる矢。
それは、真ん中から少し外れた場所を貫いていた。
「初めてにしては上出来だね」
「……本当ですか?」
「うん。いい集中力だったと思う」
笹倉先輩は的に刺さった矢を抜いて、そっとその矢を撫でる。
「アーチェリーも弓道と同じように、他の競技以上に集中力がモノをいうからね。もちろん技術的なものもあるけど、それだけじゃないところがおもしろいよね」
「はい」
アーチェリーについて語る笹倉先輩は、どこかキラキラと輝いていて……。
すごく、眩しく感じた。
「優芽ちゃんに少しでもアーチェリーの良さが伝わったのなら、僕は嬉しいよ」
笹倉先輩は、そう言ってあたしの頬に、片手を触れる。
「でも、こんな僕でも貫けない的ってあるんだよね」
わかる? と聞かれて、あたしは首をかしげる。
すると、笹倉先輩はあたしの頬に添えていた手であたしの顎をつかみ、もう片方の手であたしの腰をグッと抱き寄せる。
そして、至近距離であたしの瞳を見つめて、笹倉先輩は口を開いた。
「それはね、優芽ちゃんの心だよ」
「……え!?」
「ねえ。その心、僕に射抜かせてよ」
その言葉の意味を頭で理解するよりも早く、反射的に顔が熱くなる。
そのまま近づく、笹倉先輩の艶やかな顔に、思わず笹倉先輩の胸元を押し返す。
「あ、あの……っ、笹倉せんぱ……っ」
「ダメ」
だけど、あたしの抵抗も虚しく、いとも簡単にあたしの手は笹倉先輩によってつかまれてしまった。
ふわりと縮まる笹倉先輩との距離に、思わず目を固くつむる。
しかし……。
あれ……?
うっすら目を開けると、わずか数センチの距離にいる笹倉先輩と目が合う。
「こんなに赤くなって可愛い」
笹倉先輩はクスリと笑って、あたしを離す。
「……え?」
「何? まさか本当にすると思った? キス」
その言葉に、さらに顔の温度が上がるのを感じる。
「優芽ちゃんは本当に素直だよね。でも、その素直さが罪だって、気づいてる?」
そして、笹倉先輩は再びあたしの顔に手を触れ、唇に親指を乗せると、切れ長の綺麗な瞳にあたしを映した。
「言っとくけど、優芽ちゃんのこと、誰にも渡すつもりないから」
「……え?」
「僕、本気だから。覚悟してた方がいいよ?」
あたしは、その瞳に捉えられたまま、動けなかった。
いつもとは別人のように魅惑的に笑った笹倉先輩の瞳は、これは冗談じゃないと言っているようだったから……。
「じゃあ、そろそろ戻ろっか」
あたしを解放した笹倉先輩は、いつもの笹倉先輩に戻っていて
「僕、お腹空いちゃった」
その雰囲気の差に、思わずさっきまでの笹倉先輩とのやり取りが、夢の中の出来事だったように感じる。
“優芽ちゃんのこと、誰にも渡すつもりないから”
“僕、本気だから。覚悟してた方がいいよ?”
ぐるぐると頭の中を飛び交う、笹倉先輩の言葉。
“ねえ。その心、僕に射抜かせてよ”
でも、そんなこと言われても、あたし、どうしたらいいんだろう……?
笹倉先輩に手を引かれながら、あたしの加速しっぱなしの鼓動は、おさまることを知らないかのように鳴り響いていた。
魅惑的に囁かれて、ドキドキに耐えられなくてギュッと目をつむった。
「あ、あの……っ! ささく……」
あたしの弱々しい声が宙を舞うのと同時に、クククという笑い声とともに、あたしは解放された。
「ごめんごめん。冗談だよ。とりあえず、さっきのようにもう一度構えてみて?」
「え? あ、はい……」
いつも笹倉先輩は冗談っていうけど、あたしにはこの冗談結構キツいんだけどな……。
なかなか静まりそうにない、バクバクという心臓の音を聞きながら、あたしはもう一度弓矢を構えた。
「そう。じゃあ、そのまま的の中心に当てることだけを考えて、矢を放ってみて?」
笹倉先輩に言われた通り、矢を放つ。
シュパンという気持ち良い音とともに的に刺さる矢。
それは、真ん中から少し外れた場所を貫いていた。
「初めてにしては上出来だね」
「……本当ですか?」
「うん。いい集中力だったと思う」
笹倉先輩は的に刺さった矢を抜いて、そっとその矢を撫でる。
「アーチェリーも弓道と同じように、他の競技以上に集中力がモノをいうからね。もちろん技術的なものもあるけど、それだけじゃないところがおもしろいよね」
「はい」
アーチェリーについて語る笹倉先輩は、どこかキラキラと輝いていて……。
すごく、眩しく感じた。
「優芽ちゃんに少しでもアーチェリーの良さが伝わったのなら、僕は嬉しいよ」
笹倉先輩は、そう言ってあたしの頬に、片手を触れる。
「でも、こんな僕でも貫けない的ってあるんだよね」
わかる? と聞かれて、あたしは首をかしげる。
すると、笹倉先輩はあたしの頬に添えていた手であたしの顎をつかみ、もう片方の手であたしの腰をグッと抱き寄せる。
そして、至近距離であたしの瞳を見つめて、笹倉先輩は口を開いた。
「それはね、優芽ちゃんの心だよ」
「……え!?」
「ねえ。その心、僕に射抜かせてよ」
その言葉の意味を頭で理解するよりも早く、反射的に顔が熱くなる。
そのまま近づく、笹倉先輩の艶やかな顔に、思わず笹倉先輩の胸元を押し返す。
「あ、あの……っ、笹倉せんぱ……っ」
「ダメ」
だけど、あたしの抵抗も虚しく、いとも簡単にあたしの手は笹倉先輩によってつかまれてしまった。
ふわりと縮まる笹倉先輩との距離に、思わず目を固くつむる。
しかし……。
あれ……?
うっすら目を開けると、わずか数センチの距離にいる笹倉先輩と目が合う。
「こんなに赤くなって可愛い」
笹倉先輩はクスリと笑って、あたしを離す。
「……え?」
「何? まさか本当にすると思った? キス」
その言葉に、さらに顔の温度が上がるのを感じる。
「優芽ちゃんは本当に素直だよね。でも、その素直さが罪だって、気づいてる?」
そして、笹倉先輩は再びあたしの顔に手を触れ、唇に親指を乗せると、切れ長の綺麗な瞳にあたしを映した。
「言っとくけど、優芽ちゃんのこと、誰にも渡すつもりないから」
「……え?」
「僕、本気だから。覚悟してた方がいいよ?」
あたしは、その瞳に捉えられたまま、動けなかった。
いつもとは別人のように魅惑的に笑った笹倉先輩の瞳は、これは冗談じゃないと言っているようだったから……。
「じゃあ、そろそろ戻ろっか」
あたしを解放した笹倉先輩は、いつもの笹倉先輩に戻っていて
「僕、お腹空いちゃった」
その雰囲気の差に、思わずさっきまでの笹倉先輩とのやり取りが、夢の中の出来事だったように感じる。
“優芽ちゃんのこと、誰にも渡すつもりないから”
“僕、本気だから。覚悟してた方がいいよ?”
ぐるぐると頭の中を飛び交う、笹倉先輩の言葉。
“ねえ。その心、僕に射抜かせてよ”
でも、そんなこと言われても、あたし、どうしたらいいんだろう……?
笹倉先輩に手を引かれながら、あたしの加速しっぱなしの鼓動は、おさまることを知らないかのように鳴り響いていた。
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