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*第4章*
狙われるココロ(1)
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笹倉先輩の別荘に来て、早くも二日目に入る。
丸一日海で泳いだ一日目。
二日目の今日は、笹倉先輩の別荘のお庭で、バーベキューをすることになっていた。
「ったく、何で俺と蓮が二人で火おこしなんだよ。しかも、なかなか火つかないし」
あっつーっとぼやきながら、額の汗を腕で拭う広瀬先輩。
「古い炭しかなかったんだから仕方ねえだろ? 文句言う暇があったら手を動かせ!」
仕方なしにうちわで空気を送っては火をつける操作を繰り返すのは、神崎先輩。
その様子を、簡易のベンチに座って眺めるあたしと笹倉先輩。
「本当、そのおかげで僕らは楽してるわけだけど、あみだだなんて、片桐さんも見かけによらずシャレたこと考えるよね」
「はい。こうやって見ているのが、申し訳ないくらいです」
バーベキューの分担は、公平に決めたいからという結衣の案で、あみだくじで決まった。
最初は全員に役割を分担するつもりだったんだけど、
『あみだをやるなら当たりがなきゃつまんねーよな!』
という広瀬先輩の案で、ただバーベキューの準備が出来上がるのを待つのみの何もしない係が付け加えられた。
その結果、当たりを引いたあたしと笹倉先輩が、このように手持ち無沙汰な状態になっていた。
「まあ、達也は地味に自分の首を絞めた感じだよね」
「妹尾先輩と結衣も、大変そう……」
目の前調理台で涙を流しながら玉ねぎを切る妹尾先輩と、妹尾先輩に切り方が変だと指摘する結衣。
「そうかな? 少なくとも彼女は楽しんでるように僕には見えるよ?」
「そうですか?」
「うん。結構仲も良いみたいだし、意外といい感じだったりして」
笹倉先輩はニヤリと笑った。
言われてみれば、ここに来てから結衣と妹尾先輩が一緒にいるところをよく見かけるような気もする。
昨日もあたしが広瀬先輩と沖に出てる間は、結衣は妹尾先輩に付きっきりだったらしいし……。
「どうしたの? まさか陸人のことが気になる?」
「え、いえ、そういうわけじゃ……」
「良かった。陸人相手に、負けてられないし」
「え……?」
どういうこと?
あたしが首をかしげるも、笹倉先輩は柔らかく目を細めてあたしに微笑んだ。
「ううん、何でもないよ。こんなところでボーッとしてるのもつまらないし、みんなの準備が終わるまで、僕が良いもの見せてあげるよ」
ついて来て、と言われて、あたしは促されるように笹倉先輩について別荘の庭をあとにした。
笹倉先輩に連れて来られたのは、別荘から徒歩三分でたどり着いた、アーチェリーの練習場。
「ここも、僕の祖父の私有地なんだ」
「うわあ……、すごい……!!」
その細長い空間には、三つの的が設置されていた。
まさか個人の練習場まで持ってるだなんて……!!
さすが、理事長の孫!!
「お休みなんかを利用して、時々ここに練習しに来てるんだ。日頃は静かだし、すごく集中できて楽しいよ」
そう言って、早々とアーチェリーの弓矢を準備して、的に向かって狙いを定める笹倉先輩。
次の瞬間、笹倉先輩の手を離れた矢は、勢いよく的の真ん中を貫いた。
「す、すごい……!!」
パチパチと笹倉先輩に拍手を送る。
「今、矢を放ったこのラインで、だいたい30Mだよ」
鮮やかに笑う、笹倉先輩。
「そうなんですね……!!」
こんなに長距離を綺麗に矢を飛ばせるなんて……。
いつも生徒会室の狭い空間でしか見たことなかっただけに、余計にその余韻に浸っていた。
「優芽ちゃんも、やってみる?」
突然目の前にアーチェリーの弓が差し出される。
「そ、そんなっ!! あたし、やったことないし……、それに、矢をこんなに長距離飛ばせないです!!」
「確かにいきなりこの距離はキツイよね。だから、最初は的の前からで充分だよ」
そう言われて、的の目の前まで連れて来られたあたし。
弓を構えるように言われて構えてみるも……。
「もうちょっと肩はこうで、腰は……」
「ひ、ひゃあ……っ!? あ、す、すみません……」
あたしのフォームを直そうと、背後からあたしの身体に触れる笹倉先輩の手に思わず過剰に反応してしまった。
恥ずかしい……。
絶対、変に思われたよね……?
しかし、聞こえるのは、クスリという笑い声。
「いい反応だね。優芽ちゃんって、結構敏感?」
「え……、あ……っ」
首筋に笹倉先輩の吐息が触れて、思わず身を震わせる。
丸一日海で泳いだ一日目。
二日目の今日は、笹倉先輩の別荘のお庭で、バーベキューをすることになっていた。
「ったく、何で俺と蓮が二人で火おこしなんだよ。しかも、なかなか火つかないし」
あっつーっとぼやきながら、額の汗を腕で拭う広瀬先輩。
「古い炭しかなかったんだから仕方ねえだろ? 文句言う暇があったら手を動かせ!」
仕方なしにうちわで空気を送っては火をつける操作を繰り返すのは、神崎先輩。
その様子を、簡易のベンチに座って眺めるあたしと笹倉先輩。
「本当、そのおかげで僕らは楽してるわけだけど、あみだだなんて、片桐さんも見かけによらずシャレたこと考えるよね」
「はい。こうやって見ているのが、申し訳ないくらいです」
バーベキューの分担は、公平に決めたいからという結衣の案で、あみだくじで決まった。
最初は全員に役割を分担するつもりだったんだけど、
『あみだをやるなら当たりがなきゃつまんねーよな!』
という広瀬先輩の案で、ただバーベキューの準備が出来上がるのを待つのみの何もしない係が付け加えられた。
その結果、当たりを引いたあたしと笹倉先輩が、このように手持ち無沙汰な状態になっていた。
「まあ、達也は地味に自分の首を絞めた感じだよね」
「妹尾先輩と結衣も、大変そう……」
目の前調理台で涙を流しながら玉ねぎを切る妹尾先輩と、妹尾先輩に切り方が変だと指摘する結衣。
「そうかな? 少なくとも彼女は楽しんでるように僕には見えるよ?」
「そうですか?」
「うん。結構仲も良いみたいだし、意外といい感じだったりして」
笹倉先輩はニヤリと笑った。
言われてみれば、ここに来てから結衣と妹尾先輩が一緒にいるところをよく見かけるような気もする。
昨日もあたしが広瀬先輩と沖に出てる間は、結衣は妹尾先輩に付きっきりだったらしいし……。
「どうしたの? まさか陸人のことが気になる?」
「え、いえ、そういうわけじゃ……」
「良かった。陸人相手に、負けてられないし」
「え……?」
どういうこと?
あたしが首をかしげるも、笹倉先輩は柔らかく目を細めてあたしに微笑んだ。
「ううん、何でもないよ。こんなところでボーッとしてるのもつまらないし、みんなの準備が終わるまで、僕が良いもの見せてあげるよ」
ついて来て、と言われて、あたしは促されるように笹倉先輩について別荘の庭をあとにした。
笹倉先輩に連れて来られたのは、別荘から徒歩三分でたどり着いた、アーチェリーの練習場。
「ここも、僕の祖父の私有地なんだ」
「うわあ……、すごい……!!」
その細長い空間には、三つの的が設置されていた。
まさか個人の練習場まで持ってるだなんて……!!
さすが、理事長の孫!!
「お休みなんかを利用して、時々ここに練習しに来てるんだ。日頃は静かだし、すごく集中できて楽しいよ」
そう言って、早々とアーチェリーの弓矢を準備して、的に向かって狙いを定める笹倉先輩。
次の瞬間、笹倉先輩の手を離れた矢は、勢いよく的の真ん中を貫いた。
「す、すごい……!!」
パチパチと笹倉先輩に拍手を送る。
「今、矢を放ったこのラインで、だいたい30Mだよ」
鮮やかに笑う、笹倉先輩。
「そうなんですね……!!」
こんなに長距離を綺麗に矢を飛ばせるなんて……。
いつも生徒会室の狭い空間でしか見たことなかっただけに、余計にその余韻に浸っていた。
「優芽ちゃんも、やってみる?」
突然目の前にアーチェリーの弓が差し出される。
「そ、そんなっ!! あたし、やったことないし……、それに、矢をこんなに長距離飛ばせないです!!」
「確かにいきなりこの距離はキツイよね。だから、最初は的の前からで充分だよ」
そう言われて、的の目の前まで連れて来られたあたし。
弓を構えるように言われて構えてみるも……。
「もうちょっと肩はこうで、腰は……」
「ひ、ひゃあ……っ!? あ、す、すみません……」
あたしのフォームを直そうと、背後からあたしの身体に触れる笹倉先輩の手に思わず過剰に反応してしまった。
恥ずかしい……。
絶対、変に思われたよね……?
しかし、聞こえるのは、クスリという笑い声。
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