キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

文字の大きさ
上 下
46 / 81
*第4章*

狙われるココロ(1)

しおりを挟む
 笹倉先輩の別荘に来て、早くも二日目に入る。

 丸一日海で泳いだ一日目。

 二日目の今日は、笹倉先輩の別荘のお庭で、バーベキューをすることになっていた。


「ったく、何で俺と蓮が二人で火おこしなんだよ。しかも、なかなか火つかないし」

 あっつーっとぼやきながら、額の汗を腕で拭う広瀬先輩。


「古い炭しかなかったんだから仕方ねえだろ? 文句言う暇があったら手を動かせ!」

 仕方なしにうちわで空気を送っては火をつける操作を繰り返すのは、神崎先輩。

 その様子を、簡易のベンチに座って眺めるあたしと笹倉先輩。


「本当、そのおかげで僕らは楽してるわけだけど、あみだだなんて、片桐さんも見かけによらずシャレたこと考えるよね」

「はい。こうやって見ているのが、申し訳ないくらいです」

 バーベキューの分担は、公平に決めたいからという結衣の案で、あみだくじで決まった。

 最初は全員に役割を分担するつもりだったんだけど、

『あみだをやるなら当たりがなきゃつまんねーよな!』

 という広瀬先輩の案で、ただバーベキューの準備が出来上がるのを待つのみの何もしない係が付け加えられた。

 その結果、当たりを引いたあたしと笹倉先輩が、このように手持ち無沙汰な状態になっていた。


「まあ、達也は地味に自分の首を絞めた感じだよね」

「妹尾先輩と結衣も、大変そう……」

 目の前調理台で涙を流しながら玉ねぎを切る妹尾先輩と、妹尾先輩に切り方が変だと指摘する結衣。


「そうかな? 少なくとも彼女は楽しんでるように僕には見えるよ?」

「そうですか?」

「うん。結構仲も良いみたいだし、意外といい感じだったりして」

 笹倉先輩はニヤリと笑った。

 言われてみれば、ここに来てから結衣と妹尾先輩が一緒にいるところをよく見かけるような気もする。

 昨日もあたしが広瀬先輩と沖に出てる間は、結衣は妹尾先輩に付きっきりだったらしいし……。


「どうしたの? まさか陸人のことが気になる?」

「え、いえ、そういうわけじゃ……」

「良かった。陸人相手に、負けてられないし」

「え……?」


 どういうこと?

 あたしが首をかしげるも、笹倉先輩は柔らかく目を細めてあたしに微笑んだ。


「ううん、何でもないよ。こんなところでボーッとしてるのもつまらないし、みんなの準備が終わるまで、僕が良いもの見せてあげるよ」

 ついて来て、と言われて、あたしは促されるように笹倉先輩について別荘の庭をあとにした。



 笹倉先輩に連れて来られたのは、別荘から徒歩三分でたどり着いた、アーチェリーの練習場。


「ここも、僕の祖父の私有地なんだ」

「うわあ……、すごい……!!」

 その細長い空間には、三つの的が設置されていた。

 まさか個人の練習場まで持ってるだなんて……!!

 さすが、理事長の孫!!


「お休みなんかを利用して、時々ここに練習しに来てるんだ。日頃は静かだし、すごく集中できて楽しいよ」

 そう言って、早々とアーチェリーの弓矢を準備して、的に向かって狙いを定める笹倉先輩。

 次の瞬間、笹倉先輩の手を離れた矢は、勢いよく的の真ん中を貫いた。


「す、すごい……!!」

 パチパチと笹倉先輩に拍手を送る。


「今、矢を放ったこのラインで、だいたい30Mだよ」

 鮮やかに笑う、笹倉先輩。


「そうなんですね……!!」

 こんなに長距離を綺麗に矢を飛ばせるなんて……。

 いつも生徒会室の狭い空間でしか見たことなかっただけに、余計にその余韻に浸っていた。


「優芽ちゃんも、やってみる?」

 突然目の前にアーチェリーの弓が差し出される。


「そ、そんなっ!! あたし、やったことないし……、それに、矢をこんなに長距離飛ばせないです!!」

「確かにいきなりこの距離はキツイよね。だから、最初は的の前からで充分だよ」

 そう言われて、的の目の前まで連れて来られたあたし。

 弓を構えるように言われて構えてみるも……。


「もうちょっと肩はこうで、腰は……」

「ひ、ひゃあ……っ!? あ、す、すみません……」

 あたしのフォームを直そうと、背後からあたしの身体に触れる笹倉先輩の手に思わず過剰に反応してしまった。

 恥ずかしい……。

 絶対、変に思われたよね……?

 しかし、聞こえるのは、クスリという笑い声。


「いい反応だね。優芽ちゃんって、結構敏感?」

「え……、あ……っ」

 首筋に笹倉先輩の吐息が触れて、思わず身を震わせる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【短編集2】恋のかけらたち

美和優希
恋愛
魔法のiらんどの企画で書いた恋愛小説の短編集です。 甘々から切ない恋まで いろんなテーマで書いています。 【収録作品】 1.百年後の未来に、きみと(2020.04.24) →誕生日に、彼女からどこにでも行ける魔法のチケットをもらって──!? 魔法のiらんど企画「#つながる魔法で続きをつくろう」 で書いたSSです。 2.優しい鈴の音と鼓動(2020.11.08) →幼なじみの凪くんは最近機嫌が悪そうで意地悪で冷たい。嫌われてしまったのかと思っていたけれど──。 3.歌声の魔法(2020.11.15) →地味で冴えない女子の静江は、いつも麗奈をはじめとしたクラスメイトにいいように使われていた。そんなある日、イケメンで不真面目な男子として知られる城野に静江の歌と麗奈への愚痴を聞かれてしまい、麗奈をギャフンと言わせる作戦に参加させられることになって──!? 4.もしも突然、地球最後の日が訪れたとしたら……。(2020.11.23) →“もしも”なんて来てほしくないけれど、地球消滅の危機に直面した二人が最後に見せたものは──。 5.不器用なサプライズ(2021.01.08) →今日は彼女と付き合い始めて一周年の記念日。それなのに肝心のサプライズの切り出し方に失敗してしまって……。 *()内は初回公開・完結日です。 *いずれも「魔法のiらんど」で公開していた作品になります。サービス終了に伴い、ページ分けは当時のままの状態で公開しています。 *現在は全てアルファポリスのみの公開です。 アルファポリスでの公開日*2025.02.11 表紙画像は、イラストAC(がらくった様)の画像に文字入れをして使わせていただいてます。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...