キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

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*第4章*

最初の告白(3)

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「……え」

 静寂な空間に、波音が小さく鳴る潮風の中。

 続ける言葉が見つからずにいると、


「ねえ、優芽ちゃんさえ良かったらさ、俺たち、付き合わねえ?」

 広瀬先輩の一際甘く、真剣な声が、この空間に響いた。


「好きなんだ、優芽ちゃんのこと」

「え……?」

 好き?

 広瀬先輩が、あたしを……?


「えええ!? え、……っと……」

 あまりにもの驚きで、思わずググッと目を見開く。

 好きって、やっぱり、そういうことだよね……?

 さっきとはまた違った意味で、一気に頬が熱くなる。

 あたしが何も答えられずにいると、広瀬先輩は目をそっと伏せてフッと笑う。


「って、いきなりこんなこと言われても、優芽ちゃんも困るわな……」

「え、いえ……」

「いいよ、返事はすぐにじゃなくていいから」

 あたしを見つめる広瀬先輩の瞳が寂しげに見えて、思わず胸が痛む。

 押し寄せてくる申し訳なさに、思わずうつむくと、広瀬先輩はあたしの首の後ろに両腕をまわして、軽くあたしを抱き寄せる。

 そして、広瀬先輩は、ふわりとあたしの額に広瀬先輩の額を当てる。

「優芽ちゃんの中でちゃんとこたえが出るまで待たせてよ。可能性がゼロじゃない限り、頑張らせてほしい」

 広瀬先輩にしては弱々しい声に顔を上げると、少し潤みの増した広瀬先輩の真剣な瞳と視線がぶつかる。


「……わかりました。なんだか、すみません……」

 すぐに広瀬先輩の気持ちに応えることができなくて、本当に申し訳なくなる。

 広瀬先輩は、こんなに真剣にあたしに気持ちを伝えてくれてるのに……。


「謝るのはナシ。優芽ちゃんが謝っていいのは、俺の告白を断るときだけ」

 広瀬先輩は、いつもの軽い調子で言うと、明るい声で笑った。


「あ! 話すのは今まで通りな! 変にギクシャクするの、俺やだし」

 慌てたようにそう言うところが広瀬先輩らしくて、思わず顔がほころんだ。


「はい」

 笑っちゃって怒られるかな、とも思ったけれど

「可愛い」

 広瀬先輩は、あたしの頭をふわりと大きな手で撫でた。


 広瀬先輩は、数秒あたしを見つめると、突然小さな陸へと上がり、陸の大部分を占める岩に両手をついてうなだれた。


「うわーっ!! なんかめっちゃ恥ずい……、やべえー」

 広瀬先輩はそう叫んで再び上体を起こすと、その光景を見ていたあたしを見て、はにかんだ。


「いやあ、告白ってこんなに緊張するのな。悪い悪い」

 いつもより赤みを帯びた顔の広瀬先輩に、あたしの鼓動も一際大きくざわついた。

 そして、広瀬先輩は再びあたしのそばに来ると、そっとあたしの手を取った。


「じゃあ、みんなのところ、戻ろっか」

「は、はい……」

 再び広瀬先輩の肩に掴まり、背負われるようにして沖へと出る。

 広瀬先輩があたしを気にかけて振り向いてくれる度に、しがみついた肩から、時たま触れ合う背中から熱が込み上げる。


 まさか、広瀬先輩があたしを好きだなんて……。

 あたしは……。

 ちゃんと、考えなきゃ……。


 *


「達也! おまえ、優芽ちゃん連れて、どこ行っとったんや!」

 次第に皆さんの居るところに近づき、あたしたちに気づいた妹尾先輩がこちらに泳いで来る。


「本当に。さすがにこれは反則でしょ。優芽ちゃん取られて、片桐さんも困ってたよ」

 妹尾先輩の後ろからこちらに姿を現したのは、笹倉先輩。


「悪い悪い。でも、一応みんなに言ってから出発したんだぜ?」

 そう言って、苦笑いを浮かべる広瀬先輩。

 あたしがその光景を見ていると、いつの間にかあたしのそばに来ていた結衣が、あたしの肩を掴んだ。


「優芽! 無事で良かった!」

「一人にしてごめんね、結衣」

 無事だなんて、あまりにオーバーな言い方だ。

 けれど、さっきの笹倉先輩の言葉を受けてあたしは結衣に対する申し訳なさから謝罪の言葉が口を出た。


 そのとき、視界の隅に映った光景にドクンと胸が疼いた。

 神崎先輩が、こちらをジッと見ていたんだ。


 だけど、あたしと目が合うなり、顔を歪めて視線を逸らされてしまった。

 あたし、何かしたかな……。

 神崎先輩はそのまま広瀬先輩たちの居るところまで泳いで行くと、広瀬先輩の後ろから首を絞めるようにガシッと腕を回した。


「ぐえ……っ。って、蓮! おまえ、その登場はねえだろ! 殺す気か!!」

「……うっせえよ」

 どこかふて腐れたような雰囲気の神崎先輩。


「副会長ったら、完全にやられてるね。会長の機嫌損ねさせるからそうなるのよ」

 結衣は目の前の光景に、フンと鼻を鳴らして笑った。

 結衣も、そんなに広瀬先輩を毛嫌いしなくてもいいのに……。

 あたしはそんな結衣を見て、ただ苦笑いを浮かべるだけだった。
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