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*第3章*
夏のはじまり(3)
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──しかし。
「……と言うわけだ。八月の頭に、琉生んとこの別荘を借りて生徒会の強化合宿を行うから、カレー女も必ず参加するように!」
はい!?
生徒会室の大掃除が終わったあと、あたしの思いを打ち砕くかのように発せられた、神崎先輩の言葉。
あたしが手渡されたプリントを見つめたまま、固まっていると、広瀬先輩が口を開く。
「優芽ちゃん、そんな怯えなくて大丈夫! 強化合宿と言う名の、中身はお遊びだからさ」
「うん。それは僕も保証するよ。名目は強化合宿だけどさ、たまにはみんなで羽を伸ばそうっていう企画だし」
広瀬先輩の言葉に付け加えるように、笹倉先輩も説明してくれる。
「男四人に女の子一人やからな、心配なら友達誘って来てくれても構わへんで?」
妹尾先輩の言う通り、確かにそこも気になってたけど……。
あたしはチラリと神崎先輩を見上げる。
「何だよ。まさか参加できないなんて言わねえよな?」
「い、いえ……」
反射的にそう答えるも、神崎先輩はフッと笑った。
「まあ、無理と言ったところで、おまえの都合のつく日に日程を合わせるだけだ」
「……それって、つまりは強制参加ってことですか?」
「そういうことだ。カレー女にしては、頭の回転が早いな」
カレー女にしては……って、神崎先輩、何気に酷いです。
「うわっ、蓮もその言い方はねえだろ!」
「何だよ、文句あるか?」
「ありまくりで、説明するのも面倒臭え!」
何の悪びれもなく言う広瀬先輩に、神崎先輩は思いきり眉をしかめた。
目の前の二人の様子を楽しそうに眺めながら、笹倉先輩が口を開く。
「優芽ちゃんも来てくれるなら、しっかり楽しんでもらえるように準備しなきゃだね」
「ほんまほんま! 因みにな、琉生んとこの別荘、めっちゃ海の近くやねん!」
「本当ですか!?」
妹尾先輩の言葉に、思わず目を輝かせる。
海なんて、中学のときの海の学校以来だよ!
あたしのその様子に、笹倉先輩はプッと吹き出すように笑った。
「優芽ちゃん、急に表情明るくなりすぎ。海、好きなの?」
「はい!」
「ええ返事や! でも、優芽ちゃんが少しでも行く気になってくれたなら、俺も嬉しいわ!」
妹尾先輩も少し可笑しそうに笑いながら、口を開く。
「わーっ! 蓮の相手してる間に何三人で盛り上がってんだよ!」
慌てた様子でこちらの輪に入って来る、広瀬先輩。
それに遅れて登場する、神崎先輩。
「行く気になったのは良しとして、海で泳ぎたいなら水着忘れんなよ」
「「!?」」
神崎先輩の言葉に、先輩たち三人が一瞬固まった。
「うっわ! おまえ、優芽ちゃんに水着とか、ムッツリかよ!」
「やっと行く気になってくれた優芽ちゃんにかける言葉が水着って……、おまえ、他に言うことあるやろ!」
「早速、水着の催促をするだなんて、いただけないね」
口々にそう言う先輩たちに、神崎先輩は声を上げる。
「は? 何でそうなるんだよ。こいつが水着忘れたら、裸で泳ぐ羽目になるんだぞ?」
「ちょっ、か、神崎先輩!!」
は、裸って……。
っていうか、水着忘れたら、まず泳がないし……!
「おまえ、裸とか言うなよ! 優芽ちゃん、顔真っ赤になっちゃったじゃん」
お腹を抱えて、豪快に笑う広瀬先輩。
「なるほど、蓮の頭の中では裸の優芽ちゃんが泳いでると」
「つまり、真の変態は、蓮ってことやな」
笹倉先輩と妹尾先輩も、口々に神崎先輩をからかうように言う。
「あー、もう! うっせえよ、おまえら! 人を勝手に変態呼ばわりしてんじゃねえ!」
あまりに神崎先輩が顔を赤くして怒鳴るので、それが余計に皆さんの笑いのツボを刺激した。
ぎゃいぎゃいと騒がしい生徒会室。
生徒会の皆さんと過ごす夏は、まだ始まったばかりだった。
「……と言うわけだ。八月の頭に、琉生んとこの別荘を借りて生徒会の強化合宿を行うから、カレー女も必ず参加するように!」
はい!?
生徒会室の大掃除が終わったあと、あたしの思いを打ち砕くかのように発せられた、神崎先輩の言葉。
あたしが手渡されたプリントを見つめたまま、固まっていると、広瀬先輩が口を開く。
「優芽ちゃん、そんな怯えなくて大丈夫! 強化合宿と言う名の、中身はお遊びだからさ」
「うん。それは僕も保証するよ。名目は強化合宿だけどさ、たまにはみんなで羽を伸ばそうっていう企画だし」
広瀬先輩の言葉に付け加えるように、笹倉先輩も説明してくれる。
「男四人に女の子一人やからな、心配なら友達誘って来てくれても構わへんで?」
妹尾先輩の言う通り、確かにそこも気になってたけど……。
あたしはチラリと神崎先輩を見上げる。
「何だよ。まさか参加できないなんて言わねえよな?」
「い、いえ……」
反射的にそう答えるも、神崎先輩はフッと笑った。
「まあ、無理と言ったところで、おまえの都合のつく日に日程を合わせるだけだ」
「……それって、つまりは強制参加ってことですか?」
「そういうことだ。カレー女にしては、頭の回転が早いな」
カレー女にしては……って、神崎先輩、何気に酷いです。
「うわっ、蓮もその言い方はねえだろ!」
「何だよ、文句あるか?」
「ありまくりで、説明するのも面倒臭え!」
何の悪びれもなく言う広瀬先輩に、神崎先輩は思いきり眉をしかめた。
目の前の二人の様子を楽しそうに眺めながら、笹倉先輩が口を開く。
「優芽ちゃんも来てくれるなら、しっかり楽しんでもらえるように準備しなきゃだね」
「ほんまほんま! 因みにな、琉生んとこの別荘、めっちゃ海の近くやねん!」
「本当ですか!?」
妹尾先輩の言葉に、思わず目を輝かせる。
海なんて、中学のときの海の学校以来だよ!
あたしのその様子に、笹倉先輩はプッと吹き出すように笑った。
「優芽ちゃん、急に表情明るくなりすぎ。海、好きなの?」
「はい!」
「ええ返事や! でも、優芽ちゃんが少しでも行く気になってくれたなら、俺も嬉しいわ!」
妹尾先輩も少し可笑しそうに笑いながら、口を開く。
「わーっ! 蓮の相手してる間に何三人で盛り上がってんだよ!」
慌てた様子でこちらの輪に入って来る、広瀬先輩。
それに遅れて登場する、神崎先輩。
「行く気になったのは良しとして、海で泳ぎたいなら水着忘れんなよ」
「「!?」」
神崎先輩の言葉に、先輩たち三人が一瞬固まった。
「うっわ! おまえ、優芽ちゃんに水着とか、ムッツリかよ!」
「やっと行く気になってくれた優芽ちゃんにかける言葉が水着って……、おまえ、他に言うことあるやろ!」
「早速、水着の催促をするだなんて、いただけないね」
口々にそう言う先輩たちに、神崎先輩は声を上げる。
「は? 何でそうなるんだよ。こいつが水着忘れたら、裸で泳ぐ羽目になるんだぞ?」
「ちょっ、か、神崎先輩!!」
は、裸って……。
っていうか、水着忘れたら、まず泳がないし……!
「おまえ、裸とか言うなよ! 優芽ちゃん、顔真っ赤になっちゃったじゃん」
お腹を抱えて、豪快に笑う広瀬先輩。
「なるほど、蓮の頭の中では裸の優芽ちゃんが泳いでると」
「つまり、真の変態は、蓮ってことやな」
笹倉先輩と妹尾先輩も、口々に神崎先輩をからかうように言う。
「あー、もう! うっせえよ、おまえら! 人を勝手に変態呼ばわりしてんじゃねえ!」
あまりに神崎先輩が顔を赤くして怒鳴るので、それが余計に皆さんの笑いのツボを刺激した。
ぎゃいぎゃいと騒がしい生徒会室。
生徒会の皆さんと過ごす夏は、まだ始まったばかりだった。
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