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*第3章*
狼たちに囲まれたお姫様(2)
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そんな心境の中、時間は止まってくれるわけもなく、テスト期間は着々と進んでいく。
いつも以上に集中力が落ちて、若干テストの成績は危ぶまれたが、何とか主要科目の赤点は免れそうだった。
いつも生徒会やサッカー部の助っ人の合間に、コツコツとやっていた自分のおかげやと思う。
テストもラスト一日を残した放課後。
その日のテストを終えた俺は、生徒会室に足を踏み入れた。
部屋の電気がついているあたり、誰かすでに来ているようだ。
二年は、さっきまでテストやったから、優芽ちゃんかな……?
自然と高まる胸を抑えながら、生徒会室へと続く扉に手をかける。
そっと開いた扉に、開ける視界。
──ズキン。
思わず胸が痛む。
目の前に映るのは、優芽ちゃんと蓮の姿。
テストが終わってから、蓮はすぐにここに来たんだろう。
蓮が俺より先に生徒会室に居たって何もおかしくない。
だけど、何だか様子が変で、俺は静かに二人の様子をうかがっていた。
蓮が長机に突っ伏す優芽ちゃんの両肩を揺さぶる。
「おい、カレー女、起きろ!!」
「ん……?」
「ん、じゃねえだろ? 最終日にまだ数学と古典が残ってんだろ?」
しかし、次に聞こえたのは優芽ちゃんのスーっという、可愛らしい寝息だけだった。
きっと、毎日頑張ってたから疲れとるんやろうな。
「ったく、こんな顔して寝やがって……」
蓮はそんな優芽ちゃんを見下ろして、呆れたようにため息を吐く。
そして、蓮はそっと優芽ちゃんの耳元に唇を寄せて……。
「犯すぞ……?」
低く、艶っぽい声でそう言った。
「お、おいっ、蓮……っ!」
その光景にゾクリとして、思わず蓮を呼んだ俺の声は酷く弱々しかった。
「陸人か。居たなら言えよ」
蓮は俺を見ると、どこか気怠げに優芽ちゃんから離れた。
そして赤いソファーに置かれていたブランケットを手に取ると、蓮は優芽ちゃんの肩にそっとそれをかけた。
「ったく、明日が一番ヤバいって言うから、テスト終わってからすぐに来てやったのに、この有様だ」
俺が相変わらず突っ立っていると、蓮は俺の方を見て困ったように顔を歪めた。
そして、蓮はこちらまで歩いてきて、俺の肩にポンと手を置いて口を開く。
「俺、コーヒー作ってくるわ。ついでだし、陸人もいるなら入れてくるけど」
「俺は、別にええわ」
何か、コーヒーって気分でもないしな……。
「分かった。ったく、グースカピースカ寝やがって……。こいつ好みのとびきり苦いコーヒー作って、ぶっかけてやる」
蓮はそうぼやきながら、電気ポットの置いてある方へと歩いて行った。
蓮の目がなくなった隙に、俺は静かに眠る優芽ちゃんのそばにそっと近づいた。
優芽ちゃんの頬にかかる長い髪を、少し掻き分ける。
この体勢で、寝返りでも打ったんか?
頬にノートに書いてる漢文の漢字貼りついてるし……。
思わず、スタンプのように優芽ちゃんの頬に写ったノートの文字に、小さく笑みをこぼす。
「ほんま、何でこんなに可愛いねん……」
みんなが優芽ちゃんに惹かれる理由もわかる。
一緒に過ごす時間が増える度に、俺も例外なく彼女に惹かれているのだから……。
素直で頑張りやさんなのに、どこか危なっかしくて目が離せない。そんな優芽ちゃんを心配して見てるうちに、いつの間にか守ってあげたい存在に変わっていた。
「あと一日、テスト頑張ろな」
コーヒーはブラック派みたいやけど、甘いもんは嫌いとちゃうんかな?
以前、チョコバナナパフェ食っとったもんな。
俺はそっと小さなその手に、小さな飴ちゃんを握らせた。
いつも以上に集中力が落ちて、若干テストの成績は危ぶまれたが、何とか主要科目の赤点は免れそうだった。
いつも生徒会やサッカー部の助っ人の合間に、コツコツとやっていた自分のおかげやと思う。
テストもラスト一日を残した放課後。
その日のテストを終えた俺は、生徒会室に足を踏み入れた。
部屋の電気がついているあたり、誰かすでに来ているようだ。
二年は、さっきまでテストやったから、優芽ちゃんかな……?
自然と高まる胸を抑えながら、生徒会室へと続く扉に手をかける。
そっと開いた扉に、開ける視界。
──ズキン。
思わず胸が痛む。
目の前に映るのは、優芽ちゃんと蓮の姿。
テストが終わってから、蓮はすぐにここに来たんだろう。
蓮が俺より先に生徒会室に居たって何もおかしくない。
だけど、何だか様子が変で、俺は静かに二人の様子をうかがっていた。
蓮が長机に突っ伏す優芽ちゃんの両肩を揺さぶる。
「おい、カレー女、起きろ!!」
「ん……?」
「ん、じゃねえだろ? 最終日にまだ数学と古典が残ってんだろ?」
しかし、次に聞こえたのは優芽ちゃんのスーっという、可愛らしい寝息だけだった。
きっと、毎日頑張ってたから疲れとるんやろうな。
「ったく、こんな顔して寝やがって……」
蓮はそんな優芽ちゃんを見下ろして、呆れたようにため息を吐く。
そして、蓮はそっと優芽ちゃんの耳元に唇を寄せて……。
「犯すぞ……?」
低く、艶っぽい声でそう言った。
「お、おいっ、蓮……っ!」
その光景にゾクリとして、思わず蓮を呼んだ俺の声は酷く弱々しかった。
「陸人か。居たなら言えよ」
蓮は俺を見ると、どこか気怠げに優芽ちゃんから離れた。
そして赤いソファーに置かれていたブランケットを手に取ると、蓮は優芽ちゃんの肩にそっとそれをかけた。
「ったく、明日が一番ヤバいって言うから、テスト終わってからすぐに来てやったのに、この有様だ」
俺が相変わらず突っ立っていると、蓮は俺の方を見て困ったように顔を歪めた。
そして、蓮はこちらまで歩いてきて、俺の肩にポンと手を置いて口を開く。
「俺、コーヒー作ってくるわ。ついでだし、陸人もいるなら入れてくるけど」
「俺は、別にええわ」
何か、コーヒーって気分でもないしな……。
「分かった。ったく、グースカピースカ寝やがって……。こいつ好みのとびきり苦いコーヒー作って、ぶっかけてやる」
蓮はそうぼやきながら、電気ポットの置いてある方へと歩いて行った。
蓮の目がなくなった隙に、俺は静かに眠る優芽ちゃんのそばにそっと近づいた。
優芽ちゃんの頬にかかる長い髪を、少し掻き分ける。
この体勢で、寝返りでも打ったんか?
頬にノートに書いてる漢文の漢字貼りついてるし……。
思わず、スタンプのように優芽ちゃんの頬に写ったノートの文字に、小さく笑みをこぼす。
「ほんま、何でこんなに可愛いねん……」
みんなが優芽ちゃんに惹かれる理由もわかる。
一緒に過ごす時間が増える度に、俺も例外なく彼女に惹かれているのだから……。
素直で頑張りやさんなのに、どこか危なっかしくて目が離せない。そんな優芽ちゃんを心配して見てるうちに、いつの間にか守ってあげたい存在に変わっていた。
「あと一日、テスト頑張ろな」
コーヒーはブラック派みたいやけど、甘いもんは嫌いとちゃうんかな?
以前、チョコバナナパフェ食っとったもんな。
俺はそっと小さなその手に、小さな飴ちゃんを握らせた。
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