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*第3章*
悪魔の囁き(1)
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暦の上では梅雨入ったけれど、何となく今年は空梅雨なのか、雨が少ない気がする。
あれから毎日のように続く神崎先輩の勉強特訓にヘロヘロになりながら、日だけが過ぎていくように感じた。
「ふぅー!!」
梅雨入りしたはずなのに、蒸し暑い青空の下、グラウンドの隅の芝生の木陰に大の字で寝転ぶ。
あたしのそんな姿を見て、結衣はクスクスと上品に笑った。
「優芽ったら、疲れすぎ!」
「だ、だって~」
最近は、神崎先輩の特訓のせいで疲れがマックスなんだもん……。
今日は、生徒会長と副会長は先生との話し合いとか何かで、連日続いた特訓はお休みなんだ。
まあ、本当はその間にやっておく課題も言い渡されてるんだけど……。ちょっとくらい、いいよね?
だからあたしは、サッカー部のマネージャーとして頑張ってる結衣のところに遊びに来ていた。
「でも、生徒会長もすごいよね! 普通、同じ生徒会のメンバーだからって、そんなに優芽のために時間割くかな?」
「あたしも思うよ~。あんなに生徒会長が勉強好きだなんて……」
あたしの答えに、なぜか苦笑いを浮かべる結衣。
あたし、何か変なこと言ったかな……?
サッカー部の練習が繰り広げられる目の前のグラウンドに目をやると、一際目を引く選手が視界の中央に映る。
「あ、妹尾先輩だ」
誰よりも速い動きで、誰よりもボールを寄せつけて、正確にパスを繋げる妹尾先輩。
思わず妹尾先輩の動きを目で追っていると、結衣が口を開く。
「妹尾先輩、すごいよね。普段は生徒会で忙しいだろうに、こうやってサッカー部の練習に出て、試合にも参加してくれて」
「うん、本当。助っ人なのに、違和感なく部員に溶け込んでるよね」
何で妹尾先輩はサッカー部に入らないんだろう?
思わずそんな疑問が頭をかすめるくらいに……。
「だけど、正式部員にはなってくれないみたい。サッカーは好きだけど、部活に縛られたくないからって……」
あたしの心の声が結衣に聞こえていたのか、結衣が残念そうに言う。
「必要なら助っ人には行くけど、生徒会や友達との時間も大切にしたいから部員はあきらめて? ってあのキラキラスマイルで断られたんだよね」
小さく肩を落としてそう語る結衣は、完全にサッカー部のマネージャーさんだ。
「なんか、妹尾先輩らしい理由」
「まあ、それでもうちの部には妹尾先輩が必要だから、無理言って時々出てきてもらうんだけどね」
そのとき、ピーっと試合終了を告げるホイッスルがグラウンドに響く。
「あ、あたし行かなきゃ! ごめんね、優芽」
「ううん、忙しいのにありがとね」
結衣は申し訳なさそうにあたしに両手を合わせると、慌ただしくグラウンドの方へ走って行った。
やっぱり、すごい人気……。
ホイッスルが鳴った瞬間、妹尾先輩に詰め寄る、タオルやお茶を持った女子生徒。
こんな光景、お話の中だけだと思ってた……。
あたしはフゥと伸びをすると、トボトボと生徒会室へと戻った。
神崎先輩に言われた課題もやらなきゃいけないし……。
あれから毎日のように続く神崎先輩の勉強特訓にヘロヘロになりながら、日だけが過ぎていくように感じた。
「ふぅー!!」
梅雨入りしたはずなのに、蒸し暑い青空の下、グラウンドの隅の芝生の木陰に大の字で寝転ぶ。
あたしのそんな姿を見て、結衣はクスクスと上品に笑った。
「優芽ったら、疲れすぎ!」
「だ、だって~」
最近は、神崎先輩の特訓のせいで疲れがマックスなんだもん……。
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まあ、本当はその間にやっておく課題も言い渡されてるんだけど……。ちょっとくらい、いいよね?
だからあたしは、サッカー部のマネージャーとして頑張ってる結衣のところに遊びに来ていた。
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「あたしも思うよ~。あんなに生徒会長が勉強好きだなんて……」
あたしの答えに、なぜか苦笑いを浮かべる結衣。
あたし、何か変なこと言ったかな……?
サッカー部の練習が繰り広げられる目の前のグラウンドに目をやると、一際目を引く選手が視界の中央に映る。
「あ、妹尾先輩だ」
誰よりも速い動きで、誰よりもボールを寄せつけて、正確にパスを繋げる妹尾先輩。
思わず妹尾先輩の動きを目で追っていると、結衣が口を開く。
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「うん、本当。助っ人なのに、違和感なく部員に溶け込んでるよね」
何で妹尾先輩はサッカー部に入らないんだろう?
思わずそんな疑問が頭をかすめるくらいに……。
「だけど、正式部員にはなってくれないみたい。サッカーは好きだけど、部活に縛られたくないからって……」
あたしの心の声が結衣に聞こえていたのか、結衣が残念そうに言う。
「必要なら助っ人には行くけど、生徒会や友達との時間も大切にしたいから部員はあきらめて? ってあのキラキラスマイルで断られたんだよね」
小さく肩を落としてそう語る結衣は、完全にサッカー部のマネージャーさんだ。
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「まあ、それでもうちの部には妹尾先輩が必要だから、無理言って時々出てきてもらうんだけどね」
そのとき、ピーっと試合終了を告げるホイッスルがグラウンドに響く。
「あ、あたし行かなきゃ! ごめんね、優芽」
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やっぱり、すごい人気……。
ホイッスルが鳴った瞬間、妹尾先輩に詰め寄る、タオルやお茶を持った女子生徒。
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