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*第3章*
悪魔の囁き(3)
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「こういう面では、達也より琉生の方が危険やからな。あまり無防備に琉生の気持ちをあおると、ほんまに喰われるで?」
「え……」
妹尾先輩の言葉に笹倉先輩を見ると、不服そうに綺麗な顔を歪めていた。
「その言い方、人聞きが悪いなあ。優芽ちゃんが可愛い反応をするから、ちょっとからかっただけだよ」
「おまえのちょっとは、全然ちょっとやないやろ!」
「あ、バレた?」
そうやっておどけたように笑う笹倉先輩は、さっき見せた悪魔のような姿で……。
思わず背筋がゾクリとした。
「ったく、生徒会室が一階やったから良かったものの……。優芽ちゃんも、ここで誰かと二人きりになるときは気つけなあかんで?」
「は、はい」
「よっしゃ、いい返事や!」
そう言ってあたしの頭をぽんぽんと撫でると、妹尾先輩は先程のサッカーボールによって散らかった生徒会室を見回す。
「生徒会室散らかしてもうたし、蓮と達也が帰って来る前に片付なあかんな」
「蓮にバレたらいろいろ厄介だから、仕方ないね」
「元はと言えば、おまえが悪いんやろうが!」
額に手を当てて、ハァとため息を落とす妹尾先輩。
床に散乱する、プリント類に文房具。
さらには、壊れたプラスチック製のセロテープスタンドまで転がっていた。
確かにこのままじゃ、神崎先輩に何を言われるか……。
あたしも生徒会室を片付けようと席を立つと、妹尾先輩が口を開く。
「優芽ちゃんはええよ。それ、蓮にやれって言われとる課題なんやろ?」
「はい……」
でも、先輩たちに片付けさせて、あたしだけ何もしないなんて、悪い気がするなあ……。
「こっちは僕らで何とかするから、気にせず勉強続けて? もしわからないところがあれば、僕が教えるから何でも聞いてよ」
「優芽ちゃん、間違ってもこいつには聞いたらあかんで? そんときは、俺が教えたる!」
「あ、あの……」
そんな風に言われて、何て答えていいかわからずにいると、二人とは違う低い声が生徒会室に響いた。
「その必要はねーよ。そいつを教え込むのは、俺の役目だからな!」
見ると、いつの間にか生徒会室の入り口のところに、神崎先輩が何かしらの資料を持って立っていた。
「あちゃー、この部屋だけ台風でも通り過ぎたかあ? 陸人も琉生も派手に散らかしたなあ」
その後ろから、ひょこっと顔を覗かせるのは、広瀬先輩。
「うわっ! おまえら、もう帰って来たんか!?」
「あっさりバレちゃったね」
妹尾先輩と笹倉先輩が困ったように口を開く。
「まあな、思ってた以上に早く終わってな。それより何だよ、この散らかり具合は……。言い訳はあとで聞くから、片付けろ」
神崎先輩は二人にピシャリとそう言うと、ツカツカとあたしのそばまで来る。
そして、神崎先輩に言い渡されてたあたしの課題を見て一言。
「全然進んでねえじゃん」
「す、すみません……」
「仕方ない。俺も早く仕事終わったことだし、特別だ。おまえができるまでじっくり見てやるよ」
え……。
だって、今日は勉強特訓はお休みだったはずじゃ……。
「何そんな顔してんだよ。その方が、おまえ一人より何倍も早く終わらせることができるだろ?」
「は、はい……」
確かに、そうかもしれないけど……。
「優芽ちゃんも運がないなあ。せっかく今日は蓮の勉強特訓お休みだったのに」
広瀬先輩はあたしの正面の席に腰を下ろすと、眉を下げて笑った。
「達也、おまえはそんなとこでカレー女の邪魔してないで、さっきの資料の整理を頼む」
「うっわ、マジかよ! せっかく優芽ちゃんと話そうと思ったのに~……」
神崎先輩の言葉に、あからさまに肩を落として席を立つ広瀬先輩。
「あ、あの……」
神崎先輩を見上げると、その綺麗な切れ長の瞳と目が合う。
すると、神崎先輩の口元が意地悪く弧を描いた。
「ったく、ちょっと目を離した隙に、あいつらにちやほやされてんじゃねえよ。罰として、この問題全部終わるまで、今日は帰さねえから」
「ええーっ」
なんか、神崎先輩、いつもより厳しくないですか……?
しかもちやほやされた罰って……。
何、その理由……。
そんな風に言われる覚えもないんだけどなあ……。
恨めしい視線を神崎先輩に投げるも全く効果はなく、
「日が暮れるから、早くはじめろよ」
「うぅ……」
あたしは結局、泣く泣く神崎先輩の勉強特訓を受けることになったのだった。
「え……」
妹尾先輩の言葉に笹倉先輩を見ると、不服そうに綺麗な顔を歪めていた。
「その言い方、人聞きが悪いなあ。優芽ちゃんが可愛い反応をするから、ちょっとからかっただけだよ」
「おまえのちょっとは、全然ちょっとやないやろ!」
「あ、バレた?」
そうやっておどけたように笑う笹倉先輩は、さっき見せた悪魔のような姿で……。
思わず背筋がゾクリとした。
「ったく、生徒会室が一階やったから良かったものの……。優芽ちゃんも、ここで誰かと二人きりになるときは気つけなあかんで?」
「は、はい」
「よっしゃ、いい返事や!」
そう言ってあたしの頭をぽんぽんと撫でると、妹尾先輩は先程のサッカーボールによって散らかった生徒会室を見回す。
「生徒会室散らかしてもうたし、蓮と達也が帰って来る前に片付なあかんな」
「蓮にバレたらいろいろ厄介だから、仕方ないね」
「元はと言えば、おまえが悪いんやろうが!」
額に手を当てて、ハァとため息を落とす妹尾先輩。
床に散乱する、プリント類に文房具。
さらには、壊れたプラスチック製のセロテープスタンドまで転がっていた。
確かにこのままじゃ、神崎先輩に何を言われるか……。
あたしも生徒会室を片付けようと席を立つと、妹尾先輩が口を開く。
「優芽ちゃんはええよ。それ、蓮にやれって言われとる課題なんやろ?」
「はい……」
でも、先輩たちに片付けさせて、あたしだけ何もしないなんて、悪い気がするなあ……。
「こっちは僕らで何とかするから、気にせず勉強続けて? もしわからないところがあれば、僕が教えるから何でも聞いてよ」
「優芽ちゃん、間違ってもこいつには聞いたらあかんで? そんときは、俺が教えたる!」
「あ、あの……」
そんな風に言われて、何て答えていいかわからずにいると、二人とは違う低い声が生徒会室に響いた。
「その必要はねーよ。そいつを教え込むのは、俺の役目だからな!」
見ると、いつの間にか生徒会室の入り口のところに、神崎先輩が何かしらの資料を持って立っていた。
「あちゃー、この部屋だけ台風でも通り過ぎたかあ? 陸人も琉生も派手に散らかしたなあ」
その後ろから、ひょこっと顔を覗かせるのは、広瀬先輩。
「うわっ! おまえら、もう帰って来たんか!?」
「あっさりバレちゃったね」
妹尾先輩と笹倉先輩が困ったように口を開く。
「まあな、思ってた以上に早く終わってな。それより何だよ、この散らかり具合は……。言い訳はあとで聞くから、片付けろ」
神崎先輩は二人にピシャリとそう言うと、ツカツカとあたしのそばまで来る。
そして、神崎先輩に言い渡されてたあたしの課題を見て一言。
「全然進んでねえじゃん」
「す、すみません……」
「仕方ない。俺も早く仕事終わったことだし、特別だ。おまえができるまでじっくり見てやるよ」
え……。
だって、今日は勉強特訓はお休みだったはずじゃ……。
「何そんな顔してんだよ。その方が、おまえ一人より何倍も早く終わらせることができるだろ?」
「は、はい……」
確かに、そうかもしれないけど……。
「優芽ちゃんも運がないなあ。せっかく今日は蓮の勉強特訓お休みだったのに」
広瀬先輩はあたしの正面の席に腰を下ろすと、眉を下げて笑った。
「達也、おまえはそんなとこでカレー女の邪魔してないで、さっきの資料の整理を頼む」
「うっわ、マジかよ! せっかく優芽ちゃんと話そうと思ったのに~……」
神崎先輩の言葉に、あからさまに肩を落として席を立つ広瀬先輩。
「あ、あの……」
神崎先輩を見上げると、その綺麗な切れ長の瞳と目が合う。
すると、神崎先輩の口元が意地悪く弧を描いた。
「ったく、ちょっと目を離した隙に、あいつらにちやほやされてんじゃねえよ。罰として、この問題全部終わるまで、今日は帰さねえから」
「ええーっ」
なんか、神崎先輩、いつもより厳しくないですか……?
しかもちやほやされた罰って……。
何、その理由……。
そんな風に言われる覚えもないんだけどなあ……。
恨めしい視線を神崎先輩に投げるも全く効果はなく、
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あたしは結局、泣く泣く神崎先輩の勉強特訓を受けることになったのだった。
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