キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

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*第2章*

フキゲンいちごみるく(3)

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 蓮は赤いストローで氷いちごとミルクのセットをくるくると混ぜる。

 いちご色の氷が溶け出して、淡いいちごミルク色に染まる蓮のグラス。

 蓮の醸し出すオーラに似合わなさ過ぎて、場違いにも思わず笑い出しそうになる。


「そういや、中間テストって来週だよね? そろそろ勉強はじめた?」

 琉生が当たり障りのない勉強の話を蓮に振る。


「ああ、もうそんな時期か……。中間テストは五月半ばだもんな」

 まだ何もしてねー、と赤いストローを啜りながら蓮は呑気に答える。


「相変わらず余裕やなあ。ちょっとは蓮の頭、俺にも分けてほしいわ~」

「あんなの、真面目に授業聞いてたらイケるだろ?」

 陸人の言葉に、さらりと言ってのける蓮だけど……。

 イケるワケねえだろ!!

 蓮は、昔から頭が良いみたいで、特に勉強してなくても成績は常にトップだったからな。

 むしろ、蓮が特別偏差値が高いわけでもないこの高校に居るのが不思議なくらいだし……。

 蓮が俺と同じ高校を受けるって知ったとき、思わずこの学校の偏差値を調べ直したのは、今となってはいい思い出だ。


「中間はともかく、最終的な評定に関わる期末テストは、またみんなで勉強会せなあかんな~。蓮、よろしく頼むで?」

「蓮のおかげでこのメンバーは赤点免れてるからね」

 いい感じに蓮を立てる、陸人と琉生。


「ったく、しょうがねえな」

 そう言いながらも口角は嬉しそうに上がっている蓮は、意外と単純な奴だ。


「今年は厄介なのも一人増えたから、早めに勉強会始めるか」

 蓮の瞳がフッと和らぐ。

 きっと“厄介なの”とは、優芽ちゃんのことだろう。


「せやな、あの子も今日小テスト再試験やったとか言うてたしな」

「俺も頑張らねえとな」

 陸人の言葉に、続けて俺も何とか会話に入る。

 が……。

 蓮は俺をジッと見たかと思えばフッと視線を逸らして、だいぶ氷いちごも溶けていちごミルクらしくなった飲み物をクピクピと飲んだ。

 蓮の考えてることが、イマイチ読めねえよ……。

 すると、何を思ったのか再び顔を上げて俺に視線を戻した蓮。


「次、同じことやったら、副会長クビな」

 それだけ、蓮は言って、再びいちごミルクに戻った。


 そんな蓮に、俺は思わず陸人と琉生と顔を見合わせる。

 陸人と琉生もきょとんとした表情を浮かべている。

 蓮の発言があまりに唐突過ぎるもんだから、無理もない。


「蓮……?」

「何だよ」

「……ごめん」

 だけど、つまりそれは蓮はきっと先日の俺の行動を今回は許すと言ってくれてるわけで……。

 俺も素直に謝罪の言葉が口を出た。


「ん」

 短い返事を返す蓮は、赤いストローから口を離して、微かに表情を歪ませた。


「俺も悪かったよ。あんなカレー女のことでムキになる必要なんてねえのにな」

 俺もどうかしてた、と自分を嘲笑うようにいちごミルクを見つめる蓮。

 どこか切なげな蓮の姿に、思わず胸が痛んだ。

 だけど、とりあえず今は蓮と仲直りできたことを良しとすることにした。



 ──カランカラン。


「いらっしゃいませー」

 そのとき、ちょうど喫茶店の扉が開き、うちの高校の制服を着た女の子が二人、入って来る。


「あれ……?」

「優芽ちゃんじゃん」

 俺に続き、琉生もそう言って、俺ら四人はすぐ近くの二人がけの席に案内される優芽ちゃんを見る。

 優芽ちゃんは、全く俺らの様子に気づいてないようだった。

 そっと蓮の表情を覗き見る。

 蓮はテーブルに頬杖をついて、何を言うでもなく、ぼんやりと優芽ちゃんのことを見ているようだった。


 優芽ちゃんたちが店員に注文を伝える。

 楽しそうに友達と会話を交わす優芽ちゃん。

 でも、そんな風に俺らが優芽ちゃんを見ていたからか、とうとう優芽ちゃんは俺らに気づいてしまった。


「あ……っ」

 と小さく声を漏らしたのが、優芽ちゃんの口の形で分かった。

 優芽ちゃんが友達に何を言われてるのかは分からないけど、激しく首を横に振ったり、手を頭に当てたりを繰り返す。

 小動物じゃあるまいし……。

 見ていて、本当に飽きない。

 そして、優芽ちゃんはその友達の手を引っ張るようにして俺たちの方へやってきた。
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