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*第2章*
フキゲンいちごみるく(1)
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【達也Side】
「れーん。おい、蓮ってばー」
放課後、生徒会室へと向かう廊下。
蓮の背後から声をかけるも、まるで俺の声が聞こえてないかのように、蓮はこちらを見向きもしない。
ガン無視かよ!
見回りと見せかけて、優芽ちゃんをデートに連れ出した日から、早くも三日。
土日を挟んだ週明けの今日、時間をおけば直ると思ってた蓮の機嫌は相変わらずだった。
教室で話しかければ周囲の目もあるからか、気持ち悪い作り笑いを張りつけて、当たり障りのない会話はしてくれたが……。
蓮と俺は、こう見えて案外長い付き合いだ。
小学五年生のとき、蓮が俺のクラスに転入してきたときから、長いこと親友をやっている。
強情な蓮とは最初こそよく喧嘩もしたが、ここまで口もきいてもらえなくなったのは初めてで、俺自身少し戸惑っていた。
蓮のあとをつけるように蓮を追いかけていた俺は、気づけば生徒会室に入っていた。
「うわっ!!」
その瞬間、誰かにものすごい力で腕を引かれる。
「何すんだよ!!」
睨みつけるようにそいつを見ると、心配したような陸人の姿がそこにあった。
陸人は蓮に聞こえないように、小声で俺に言う。
「おまえ、まだ蓮と和解できてへんのか?」
「知るかよ! だって口すら聞いてくれねえんだもん」
すると、陸人の後ろから、アーチェリーの道具を持った琉生が姿を現す。
「よっぽど蓮も堪えたんだろうね。ま、できるなら僕も、達也をこれで壁に貼り付けてやりたいくらいだし?」
そう言って、怪しげな笑みを浮かべて、手に持っていたアーチェリーの矢の先端をこちらに向けて、弓を引く琉生。
「おまえ、マジ怖ええ。ってか、それやったらマジで犯罪だから!」
「はあ? 優芽ちゃんを勝手に連れ出したおまえが犯罪を語んなや」
次の瞬間聞こえた陸人の声は、さっきの心配そうな声とは対照的に低く、背筋がゾッとする。
「何だよ、陸人。まさか、おまえまで……」
「そうや。おまえをサッカーのゴールにして、強烈なシュートをお見舞いしてやりたいくらいや」
いやいやいやいや……。
琉生のアーチェリーの的になるのも勘弁だけど、陸人のシュートを受けるのもねえわ……。
命が何個あっても、生きて帰れる気がしねえ。
会長机のある方を見ると、俺らに背を向けて黙々と作業をしている蓮。
俺は蓮に何か言わなきゃと口を開く。
「あのさ、蓮……」
しかし、それを遮るように、バタバタという足音とともに、勢いよく生徒会室の扉が開かれた。
「こんにちは! 遅くなってすみません……!!」
狙ったかのようなタイミングで現れた優芽ちゃん。
優芽ちゃん、タイミング悪すぎるよ……。
「お疲れさん、優芽ちゃん」
「僕らも今来たところだから大丈夫だよ」
こいつら……。
陸人と琉生は、さっきとは打って変わって優しい声で優芽ちゃんに話しかける。
さっきの恐ろしい二人の姿を、優芽ちゃんにも見せてやりたいくらいだわ……。
陸人も琉生も、優芽ちゃんのことを気に入っていて、何かしら好意を持っているのは一目瞭然だった。
「神崎先輩……」
やっぱり蓮を怒らせたのを気にしてるんだろうな。
恐る恐るといった感じに、口を開く優芽ちゃん。
「やっと来たか、カレー女」
蓮はくるりと身体を優芽ちゃんの方へと向けて、真っ直ぐに優芽ちゃんを見つめる。
優芽ちゃんのことを“カレー女”とか言ったり、意地悪言ったりしてる蓮だけど、蓮がかなり優芽ちゃんのことを気に入っているのは、長年蓮のそばに居れば分かる。
「れーん。おい、蓮ってばー」
放課後、生徒会室へと向かう廊下。
蓮の背後から声をかけるも、まるで俺の声が聞こえてないかのように、蓮はこちらを見向きもしない。
ガン無視かよ!
見回りと見せかけて、優芽ちゃんをデートに連れ出した日から、早くも三日。
土日を挟んだ週明けの今日、時間をおけば直ると思ってた蓮の機嫌は相変わらずだった。
教室で話しかければ周囲の目もあるからか、気持ち悪い作り笑いを張りつけて、当たり障りのない会話はしてくれたが……。
蓮と俺は、こう見えて案外長い付き合いだ。
小学五年生のとき、蓮が俺のクラスに転入してきたときから、長いこと親友をやっている。
強情な蓮とは最初こそよく喧嘩もしたが、ここまで口もきいてもらえなくなったのは初めてで、俺自身少し戸惑っていた。
蓮のあとをつけるように蓮を追いかけていた俺は、気づけば生徒会室に入っていた。
「うわっ!!」
その瞬間、誰かにものすごい力で腕を引かれる。
「何すんだよ!!」
睨みつけるようにそいつを見ると、心配したような陸人の姿がそこにあった。
陸人は蓮に聞こえないように、小声で俺に言う。
「おまえ、まだ蓮と和解できてへんのか?」
「知るかよ! だって口すら聞いてくれねえんだもん」
すると、陸人の後ろから、アーチェリーの道具を持った琉生が姿を現す。
「よっぽど蓮も堪えたんだろうね。ま、できるなら僕も、達也をこれで壁に貼り付けてやりたいくらいだし?」
そう言って、怪しげな笑みを浮かべて、手に持っていたアーチェリーの矢の先端をこちらに向けて、弓を引く琉生。
「おまえ、マジ怖ええ。ってか、それやったらマジで犯罪だから!」
「はあ? 優芽ちゃんを勝手に連れ出したおまえが犯罪を語んなや」
次の瞬間聞こえた陸人の声は、さっきの心配そうな声とは対照的に低く、背筋がゾッとする。
「何だよ、陸人。まさか、おまえまで……」
「そうや。おまえをサッカーのゴールにして、強烈なシュートをお見舞いしてやりたいくらいや」
いやいやいやいや……。
琉生のアーチェリーの的になるのも勘弁だけど、陸人のシュートを受けるのもねえわ……。
命が何個あっても、生きて帰れる気がしねえ。
会長机のある方を見ると、俺らに背を向けて黙々と作業をしている蓮。
俺は蓮に何か言わなきゃと口を開く。
「あのさ、蓮……」
しかし、それを遮るように、バタバタという足音とともに、勢いよく生徒会室の扉が開かれた。
「こんにちは! 遅くなってすみません……!!」
狙ったかのようなタイミングで現れた優芽ちゃん。
優芽ちゃん、タイミング悪すぎるよ……。
「お疲れさん、優芽ちゃん」
「僕らも今来たところだから大丈夫だよ」
こいつら……。
陸人と琉生は、さっきとは打って変わって優しい声で優芽ちゃんに話しかける。
さっきの恐ろしい二人の姿を、優芽ちゃんにも見せてやりたいくらいだわ……。
陸人も琉生も、優芽ちゃんのことを気に入っていて、何かしら好意を持っているのは一目瞭然だった。
「神崎先輩……」
やっぱり蓮を怒らせたのを気にしてるんだろうな。
恐る恐るといった感じに、口を開く優芽ちゃん。
「やっと来たか、カレー女」
蓮はくるりと身体を優芽ちゃんの方へと向けて、真っ直ぐに優芽ちゃんを見つめる。
優芽ちゃんのことを“カレー女”とか言ったり、意地悪言ったりしてる蓮だけど、蓮がかなり優芽ちゃんのことを気に入っているのは、長年蓮のそばに居れば分かる。
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