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*第2章*
見回りという名の……?(3)
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──ドンッ。
向かいから歩いて来た人があたしの肩にぶつかって、思わずよろける。
その瞬間、ふわりと背中から抱き留められる、あたしの身体。
「大丈夫?」
「は、はい……」
見上げると、すぐそばに広瀬先輩の顔。
ち、近い……。
「す、すみませ……」
あたしが急いで広瀬先輩から離れようとするも、ものすごい力で引き寄せられて、あたしはそのまま広瀬先輩に後ろから抱きしめられていた。
「……さっきは変なこと言ってごめん。でも、全部が全部冗談なわけでもないから……」
耳元で響く、どこか切なげな広瀬先輩の声。
こんな広瀬先輩の声を初めて聞くだけに、戸惑いも増した。
「あ、あの……」
しかし、次の瞬間にはあたしの身体は解放されていて。
「じゃあ、次行こっか!」
広瀬先輩は、いつもの明るい笑みを浮かべていた。
そして、広瀬先輩は突然あたしの手を取って歩き始める。
「せ、先輩、手……!?」
あたしはとっさに広瀬先輩に掴まれた手を引く。
「やっぱり人混みだし? また優芽ちゃんが、他の人にぶつかったら困るじゃん」
確かにそうかもしれないけど……。
仕方なくそのまましばらく歩いたあと。
広瀬先輩が指さしたのは、商店街から出たところにある百貨店の屋上に備え付けられた、大観覧車。
「優芽ちゃん、あれ乗ったことある?」
「いや、ないです」
「じゃあ、乗ってみよ? きっと景色、超キレイだよ?」
無邪気に笑う広瀬先輩。
なんだか、本来の見回りという目的から、だいぶ逸れていってる気がするんだけど……。
「優芽ちゃん、どーする?」
軽く首をかしげて、あたしに優しく聞く、広瀬先輩。
だけど、あたしが何かを答える前に、あたしの前から広瀬先輩の姿が消えた。
それと同時に離れていく広瀬先輩の手の温もり。
え……?
次の瞬間聞こえて来たのは、広瀬先輩のうめき声と、神崎先輩の怒鳴り声。
「どーするもこーするもねえよ!!」
「れ、蓮!? なんでおまえがここに居んだよ!」
「代表者委員会が終わってみたら、おまえとカレー女の姿がどこにもなかったからな。おまえの考えなんて、ちょっと考えればすぐ分かんだよ!」
広瀬先輩に一気にまくし立てる神崎先輩。
見回りっぽくはなかったけど、見回り用の腕章もつけてるし、これも生徒会の仕事なんじゃなかったの……!?
「神崎先輩! あたしと広瀬先輩は放課後の商店街の見回りを……」
「おまえも、そんなのこいつの口実だって気づけ! そんな腕章までつけて、一体どういうつもりなんだよ」
えええっ!?
口実って……。
思い返してみれば、確かに最初、広瀬先輩はデートだって言ってたけど……。
ちらりと広瀬先輩に視線を移すと、広瀬先輩は面倒臭そうに神崎先輩を見て口を開く。
「いーじゃん。せっかく生徒会の一員として出会ったからには、仲良くなりたいじゃん」
「良かねえよ! コソコソ連れ出しやがって!!」
そうしているうちに、いつの間にかあたしのそばには、呆れ顔の妹尾先輩と笹倉先輩が立っていた。
「ほんま、達也には油断も隙もないわ!」
「今回は完全に達也にやられたね」
でも、先輩たちが責めてるのは広瀬先輩だけど、あたしも一緒に怒られてるのも同然だよね?
だって、あたしも広瀬先輩と一緒に行動してたんだから……。
「す、すみません……」
弱々しく言うと、あたしの頭は妹尾先輩によってポンポンと優しく撫でられた。
「優芽ちゃんは何も悪くないで?」
「それとも、今の間に達也とデキちゃったとか? 手繋いでたみたいだし」
その声に顔を上げると、笹倉先輩はニヤリと口角を上げてあたしを見ていた。
「あ、あれは違います! あれは広瀬先輩が……」
「おまえの言い分がどこまで本当かなんて知らねえが、カレー女もカレー女だ! 勘違いされて困るような行動は慎め!」
神崎先輩にピシャリとそう言われて、あたしは黙って小さくなることしかできなかった。
向かいから歩いて来た人があたしの肩にぶつかって、思わずよろける。
その瞬間、ふわりと背中から抱き留められる、あたしの身体。
「大丈夫?」
「は、はい……」
見上げると、すぐそばに広瀬先輩の顔。
ち、近い……。
「す、すみませ……」
あたしが急いで広瀬先輩から離れようとするも、ものすごい力で引き寄せられて、あたしはそのまま広瀬先輩に後ろから抱きしめられていた。
「……さっきは変なこと言ってごめん。でも、全部が全部冗談なわけでもないから……」
耳元で響く、どこか切なげな広瀬先輩の声。
こんな広瀬先輩の声を初めて聞くだけに、戸惑いも増した。
「あ、あの……」
しかし、次の瞬間にはあたしの身体は解放されていて。
「じゃあ、次行こっか!」
広瀬先輩は、いつもの明るい笑みを浮かべていた。
そして、広瀬先輩は突然あたしの手を取って歩き始める。
「せ、先輩、手……!?」
あたしはとっさに広瀬先輩に掴まれた手を引く。
「やっぱり人混みだし? また優芽ちゃんが、他の人にぶつかったら困るじゃん」
確かにそうかもしれないけど……。
仕方なくそのまましばらく歩いたあと。
広瀬先輩が指さしたのは、商店街から出たところにある百貨店の屋上に備え付けられた、大観覧車。
「優芽ちゃん、あれ乗ったことある?」
「いや、ないです」
「じゃあ、乗ってみよ? きっと景色、超キレイだよ?」
無邪気に笑う広瀬先輩。
なんだか、本来の見回りという目的から、だいぶ逸れていってる気がするんだけど……。
「優芽ちゃん、どーする?」
軽く首をかしげて、あたしに優しく聞く、広瀬先輩。
だけど、あたしが何かを答える前に、あたしの前から広瀬先輩の姿が消えた。
それと同時に離れていく広瀬先輩の手の温もり。
え……?
次の瞬間聞こえて来たのは、広瀬先輩のうめき声と、神崎先輩の怒鳴り声。
「どーするもこーするもねえよ!!」
「れ、蓮!? なんでおまえがここに居んだよ!」
「代表者委員会が終わってみたら、おまえとカレー女の姿がどこにもなかったからな。おまえの考えなんて、ちょっと考えればすぐ分かんだよ!」
広瀬先輩に一気にまくし立てる神崎先輩。
見回りっぽくはなかったけど、見回り用の腕章もつけてるし、これも生徒会の仕事なんじゃなかったの……!?
「神崎先輩! あたしと広瀬先輩は放課後の商店街の見回りを……」
「おまえも、そんなのこいつの口実だって気づけ! そんな腕章までつけて、一体どういうつもりなんだよ」
えええっ!?
口実って……。
思い返してみれば、確かに最初、広瀬先輩はデートだって言ってたけど……。
ちらりと広瀬先輩に視線を移すと、広瀬先輩は面倒臭そうに神崎先輩を見て口を開く。
「いーじゃん。せっかく生徒会の一員として出会ったからには、仲良くなりたいじゃん」
「良かねえよ! コソコソ連れ出しやがって!!」
そうしているうちに、いつの間にかあたしのそばには、呆れ顔の妹尾先輩と笹倉先輩が立っていた。
「ほんま、達也には油断も隙もないわ!」
「今回は完全に達也にやられたね」
でも、先輩たちが責めてるのは広瀬先輩だけど、あたしも一緒に怒られてるのも同然だよね?
だって、あたしも広瀬先輩と一緒に行動してたんだから……。
「す、すみません……」
弱々しく言うと、あたしの頭は妹尾先輩によってポンポンと優しく撫でられた。
「優芽ちゃんは何も悪くないで?」
「それとも、今の間に達也とデキちゃったとか? 手繋いでたみたいだし」
その声に顔を上げると、笹倉先輩はニヤリと口角を上げてあたしを見ていた。
「あ、あれは違います! あれは広瀬先輩が……」
「おまえの言い分がどこまで本当かなんて知らねえが、カレー女もカレー女だ! 勘違いされて困るような行動は慎め!」
神崎先輩にピシャリとそう言われて、あたしは黙って小さくなることしかできなかった。
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