キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

文字の大きさ
上 下
20 / 81
*第2章*

何でそうなるの!?(3)

しおりを挟む
「あたしも気になってました。いつか、先輩たちのファンクラブの人にリンチされたらどうしよう……、とか」

 だから、生徒会室以外で話しかけるのはできれば控えてほしい。

 そう伝えようとした言葉は、神崎先輩によって掻き消された。


「はあ? リンチ? おまえ、そういうとこだけは頭回るんだな」

「そ、そういうことだけって……」

 だって、心配なんだもん……。


「しかも、優芽ちゃんがリンチなんて言葉を知ってたのも、意外」

 アーチェリーの弓矢を下ろして、クスッと笑う笹倉先輩。

 なんか、さりげなく失礼なことを言われてるような気がしなくもないんですが……。


「でも、優芽ちゃんがそこまで不安がってたとはねー」

「何や俺ら、悪いことしたみたいやんなあ」

 広瀬先輩と妹尾先輩がそれぞれ口を開く。


「そ、そういうわけじゃないんですが……」

 あたしがゴニョゴニョと言っていると、それに被せるように神崎先輩の声が響く。


「おまえが心配することは何もねえよ」

「え……!?」

「生徒会メンバーの一員であるおまえの身は、会長である俺が保証する。だから、おまえは余計なこと考えずに、俺らのそばにいればいいんだよ」

「で、でも……」

 一体、何を根拠に……?

 あたしが納得しきれずにいると、神崎先輩は不敵な笑みを浮かべて言った。


「安心しろ。おまえは黙って俺に守られときゃいいんだよ」

 何かいい案でもあるのか、自信たっぷりな神崎先輩。

 でも、神崎先輩にこんなセリフを言われて、さすがにあたしも平気なわけではない。


「は、はい……」

 あたし、何ドキドキしてるんだろう……?

 高鳴る鼓動の中、さっきまでの不安が嘘のように消えていくように感じた。


 *


「な、何これ……」

 翌日の朝、あたしは生徒玄関にある生徒会の掲示板を見て固まった。

 確かに昨日の神崎先輩の様子を見て、何かいい案があるのかなとは感じてた。


 だけど……。

 だけど、さすがにこれはないよぉ……。

 目の前にある、広さを持て余したA4の紙には、こう書かれていた。



 ──────────────
 一年三組 葉山 優芽
 上の者を第94期生徒会執行部補佐役に任命する。
 生徒会長
 二年八組 神崎 蓮
 ──────────────



 これ、何か解決になってるの!?

 それこそ、ファンクラブの反感買いそうだけど……。

 あたしが青ざめながらその紙を眺めていると、背後から神崎先輩の得意げな声が降ってくる。


「どうだ、これで満足だろ?」

 ど、どうだって言われても……。

 あたしは、ただもうちょっと平穏を求めていただけなのに……。



「僕らが全校生徒からの投票で決まるのに対して、補佐役は生徒会長の指名のみで決まるからね。優芽ちゃんをみんなに認めてもらうには、ちゃんと正式に公表するのが一番なんだよ」

 あたしの様子を見てなのか、笹倉先輩があたしを納得させるように言った。


「確かに優芽ちゃんのことは、学校のみんなにはまだ公表してなかったもんな! でも、これでみんなに優芽ちゃんが生徒会の一員だってことが知れて、俺らも遠慮なく優芽ちゃんに話しかけられるな!」

 ニッと白い歯を見せて、眩しい笑みを浮かべる広瀬先輩。

 今まで先輩たちがあたしに話しかけるのを遠慮してた素振りなんて、一ミリもなかったと思うんですが……。


 そうしているうちに、ザワザワと何事かと掲示板に集まる生徒たち。

 中には、あたしを指さして何かを言っている女子の姿もあって、足がすくみそうになる。


「ギャラリーが増えてきたね」

 周囲を目だけでちらりと見渡す笹倉先輩。


「ほんまやなあ。優芽ちゃん、ここで一発おもろい挨拶かましたらどうや?」

「そんな、挨拶を一発芸みたいに言わないでくださいよ!」

 妹尾先輩の言葉に思わず言い返すも、妹尾先輩はケラケラ笑うだけだった。


 もう、何でこうなるの……!?

 たくさんの注目を浴びる中、あたしは思わずうつむいて目をつむった。そのときだった。


 ──フワッ。

 え……?

 気づけばあたしは、神崎先輩に肩を抱き寄せられていて……。


「みんな! 新しい俺らの仲間ができた。ここにも書いてある、補佐の子だ」

 神崎先輩の声に、ザワザワしていた空間が一瞬にして静まり返る。


「これからは俺ら五人でこの学校をより良いものに変えていきたいと思う。みんな、こいつのこともよろしくな!」


 ポンポンとあたしの背中を叩く神崎先輩。

 見上げると、おまえも挨拶しろと、神崎先輩は目であたしに言っていた。


「生徒会補佐役の葉山優芽です。よろしくお願いします」

 一瞬ざわつくも、次第にそれは、温かい拍手へと変わった。

 きっと、みんながみんな、あたしのことを良く思ってるわけではないと思う。

 だけど、神崎先輩の一言で、これだけみんなの意識を変えてしまうなんて……。

 これが桜ヶ丘高校生徒会長、神崎蓮の力なんだと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【短編集2】恋のかけらたち

美和優希
恋愛
魔法のiらんどの企画で書いた恋愛小説の短編集です。 甘々から切ない恋まで いろんなテーマで書いています。 【収録作品】 1.百年後の未来に、きみと(2020.04.24) →誕生日に、彼女からどこにでも行ける魔法のチケットをもらって──!? 魔法のiらんど企画「#つながる魔法で続きをつくろう」 で書いたSSです。 2.優しい鈴の音と鼓動(2020.11.08) →幼なじみの凪くんは最近機嫌が悪そうで意地悪で冷たい。嫌われてしまったのかと思っていたけれど──。 3.歌声の魔法(2020.11.15) →地味で冴えない女子の静江は、いつも麗奈をはじめとしたクラスメイトにいいように使われていた。そんなある日、イケメンで不真面目な男子として知られる城野に静江の歌と麗奈への愚痴を聞かれてしまい、麗奈をギャフンと言わせる作戦に参加させられることになって──!? 4.もしも突然、地球最後の日が訪れたとしたら……。(2020.11.23) →“もしも”なんて来てほしくないけれど、地球消滅の危機に直面した二人が最後に見せたものは──。 5.不器用なサプライズ(2021.01.08) →今日は彼女と付き合い始めて一周年の記念日。それなのに肝心のサプライズの切り出し方に失敗してしまって……。 *()内は初回公開・完結日です。 *いずれも「魔法のiらんど」で公開していた作品になります。サービス終了に伴い、ページ分けは当時のままの状態で公開しています。 *現在は全てアルファポリスのみの公開です。 アルファポリスでの公開日*2025.02.11 表紙画像は、イラストAC(がらくった様)の画像に文字入れをして使わせていただいてます。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...