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*第2章*
何でそうなるの!?(3)
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「あたしも気になってました。いつか、先輩たちのファンクラブの人にリンチされたらどうしよう……、とか」
だから、生徒会室以外で話しかけるのはできれば控えてほしい。
そう伝えようとした言葉は、神崎先輩によって掻き消された。
「はあ? リンチ? おまえ、そういうとこだけは頭回るんだな」
「そ、そういうことだけって……」
だって、心配なんだもん……。
「しかも、優芽ちゃんがリンチなんて言葉を知ってたのも、意外」
アーチェリーの弓矢を下ろして、クスッと笑う笹倉先輩。
なんか、さりげなく失礼なことを言われてるような気がしなくもないんですが……。
「でも、優芽ちゃんがそこまで不安がってたとはねー」
「何や俺ら、悪いことしたみたいやんなあ」
広瀬先輩と妹尾先輩がそれぞれ口を開く。
「そ、そういうわけじゃないんですが……」
あたしがゴニョゴニョと言っていると、それに被せるように神崎先輩の声が響く。
「おまえが心配することは何もねえよ」
「え……!?」
「生徒会メンバーの一員であるおまえの身は、会長である俺が保証する。だから、おまえは余計なこと考えずに、俺らのそばにいればいいんだよ」
「で、でも……」
一体、何を根拠に……?
あたしが納得しきれずにいると、神崎先輩は不敵な笑みを浮かべて言った。
「安心しろ。おまえは黙って俺に守られときゃいいんだよ」
何かいい案でもあるのか、自信たっぷりな神崎先輩。
でも、神崎先輩にこんなセリフを言われて、さすがにあたしも平気なわけではない。
「は、はい……」
あたし、何ドキドキしてるんだろう……?
高鳴る鼓動の中、さっきまでの不安が嘘のように消えていくように感じた。
*
「な、何これ……」
翌日の朝、あたしは生徒玄関にある生徒会の掲示板を見て固まった。
確かに昨日の神崎先輩の様子を見て、何かいい案があるのかなとは感じてた。
だけど……。
だけど、さすがにこれはないよぉ……。
目の前にある、広さを持て余したA4の紙には、こう書かれていた。
──────────────
一年三組 葉山 優芽
上の者を第94期生徒会執行部補佐役に任命する。
生徒会長
二年八組 神崎 蓮
──────────────
これ、何か解決になってるの!?
それこそ、ファンクラブの反感買いそうだけど……。
あたしが青ざめながらその紙を眺めていると、背後から神崎先輩の得意げな声が降ってくる。
「どうだ、これで満足だろ?」
ど、どうだって言われても……。
あたしは、ただもうちょっと平穏を求めていただけなのに……。
「僕らが全校生徒からの投票で決まるのに対して、補佐役は生徒会長の指名のみで決まるからね。優芽ちゃんをみんなに認めてもらうには、ちゃんと正式に公表するのが一番なんだよ」
あたしの様子を見てなのか、笹倉先輩があたしを納得させるように言った。
「確かに優芽ちゃんのことは、学校のみんなにはまだ公表してなかったもんな! でも、これでみんなに優芽ちゃんが生徒会の一員だってことが知れて、俺らも遠慮なく優芽ちゃんに話しかけられるな!」
ニッと白い歯を見せて、眩しい笑みを浮かべる広瀬先輩。
今まで先輩たちがあたしに話しかけるのを遠慮してた素振りなんて、一ミリもなかったと思うんですが……。
そうしているうちに、ザワザワと何事かと掲示板に集まる生徒たち。
中には、あたしを指さして何かを言っている女子の姿もあって、足がすくみそうになる。
「ギャラリーが増えてきたね」
周囲を目だけでちらりと見渡す笹倉先輩。
「ほんまやなあ。優芽ちゃん、ここで一発おもろい挨拶かましたらどうや?」
「そんな、挨拶を一発芸みたいに言わないでくださいよ!」
妹尾先輩の言葉に思わず言い返すも、妹尾先輩はケラケラ笑うだけだった。
もう、何でこうなるの……!?
たくさんの注目を浴びる中、あたしは思わずうつむいて目をつむった。そのときだった。
──フワッ。
え……?
気づけばあたしは、神崎先輩に肩を抱き寄せられていて……。
「みんな! 新しい俺らの仲間ができた。ここにも書いてある、補佐の子だ」
神崎先輩の声に、ザワザワしていた空間が一瞬にして静まり返る。
「これからは俺ら五人でこの学校をより良いものに変えていきたいと思う。みんな、こいつのこともよろしくな!」
ポンポンとあたしの背中を叩く神崎先輩。
見上げると、おまえも挨拶しろと、神崎先輩は目であたしに言っていた。
「生徒会補佐役の葉山優芽です。よろしくお願いします」
一瞬ざわつくも、次第にそれは、温かい拍手へと変わった。
きっと、みんながみんな、あたしのことを良く思ってるわけではないと思う。
だけど、神崎先輩の一言で、これだけみんなの意識を変えてしまうなんて……。
これが桜ヶ丘高校生徒会長、神崎蓮の力なんだと思った。
だから、生徒会室以外で話しかけるのはできれば控えてほしい。
そう伝えようとした言葉は、神崎先輩によって掻き消された。
「はあ? リンチ? おまえ、そういうとこだけは頭回るんだな」
「そ、そういうことだけって……」
だって、心配なんだもん……。
「しかも、優芽ちゃんがリンチなんて言葉を知ってたのも、意外」
アーチェリーの弓矢を下ろして、クスッと笑う笹倉先輩。
なんか、さりげなく失礼なことを言われてるような気がしなくもないんですが……。
「でも、優芽ちゃんがそこまで不安がってたとはねー」
「何や俺ら、悪いことしたみたいやんなあ」
広瀬先輩と妹尾先輩がそれぞれ口を開く。
「そ、そういうわけじゃないんですが……」
あたしがゴニョゴニョと言っていると、それに被せるように神崎先輩の声が響く。
「おまえが心配することは何もねえよ」
「え……!?」
「生徒会メンバーの一員であるおまえの身は、会長である俺が保証する。だから、おまえは余計なこと考えずに、俺らのそばにいればいいんだよ」
「で、でも……」
一体、何を根拠に……?
あたしが納得しきれずにいると、神崎先輩は不敵な笑みを浮かべて言った。
「安心しろ。おまえは黙って俺に守られときゃいいんだよ」
何かいい案でもあるのか、自信たっぷりな神崎先輩。
でも、神崎先輩にこんなセリフを言われて、さすがにあたしも平気なわけではない。
「は、はい……」
あたし、何ドキドキしてるんだろう……?
高鳴る鼓動の中、さっきまでの不安が嘘のように消えていくように感じた。
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「な、何これ……」
翌日の朝、あたしは生徒玄関にある生徒会の掲示板を見て固まった。
確かに昨日の神崎先輩の様子を見て、何かいい案があるのかなとは感じてた。
だけど……。
だけど、さすがにこれはないよぉ……。
目の前にある、広さを持て余したA4の紙には、こう書かれていた。
──────────────
一年三組 葉山 優芽
上の者を第94期生徒会執行部補佐役に任命する。
生徒会長
二年八組 神崎 蓮
──────────────
これ、何か解決になってるの!?
それこそ、ファンクラブの反感買いそうだけど……。
あたしが青ざめながらその紙を眺めていると、背後から神崎先輩の得意げな声が降ってくる。
「どうだ、これで満足だろ?」
ど、どうだって言われても……。
あたしは、ただもうちょっと平穏を求めていただけなのに……。
「僕らが全校生徒からの投票で決まるのに対して、補佐役は生徒会長の指名のみで決まるからね。優芽ちゃんをみんなに認めてもらうには、ちゃんと正式に公表するのが一番なんだよ」
あたしの様子を見てなのか、笹倉先輩があたしを納得させるように言った。
「確かに優芽ちゃんのことは、学校のみんなにはまだ公表してなかったもんな! でも、これでみんなに優芽ちゃんが生徒会の一員だってことが知れて、俺らも遠慮なく優芽ちゃんに話しかけられるな!」
ニッと白い歯を見せて、眩しい笑みを浮かべる広瀬先輩。
今まで先輩たちがあたしに話しかけるのを遠慮してた素振りなんて、一ミリもなかったと思うんですが……。
そうしているうちに、ザワザワと何事かと掲示板に集まる生徒たち。
中には、あたしを指さして何かを言っている女子の姿もあって、足がすくみそうになる。
「ギャラリーが増えてきたね」
周囲を目だけでちらりと見渡す笹倉先輩。
「ほんまやなあ。優芽ちゃん、ここで一発おもろい挨拶かましたらどうや?」
「そんな、挨拶を一発芸みたいに言わないでくださいよ!」
妹尾先輩の言葉に思わず言い返すも、妹尾先輩はケラケラ笑うだけだった。
もう、何でこうなるの……!?
たくさんの注目を浴びる中、あたしは思わずうつむいて目をつむった。そのときだった。
──フワッ。
え……?
気づけばあたしは、神崎先輩に肩を抱き寄せられていて……。
「みんな! 新しい俺らの仲間ができた。ここにも書いてある、補佐の子だ」
神崎先輩の声に、ザワザワしていた空間が一瞬にして静まり返る。
「これからは俺ら五人でこの学校をより良いものに変えていきたいと思う。みんな、こいつのこともよろしくな!」
ポンポンとあたしの背中を叩く神崎先輩。
見上げると、おまえも挨拶しろと、神崎先輩は目であたしに言っていた。
「生徒会補佐役の葉山優芽です。よろしくお願いします」
一瞬ざわつくも、次第にそれは、温かい拍手へと変わった。
きっと、みんながみんな、あたしのことを良く思ってるわけではないと思う。
だけど、神崎先輩の一言で、これだけみんなの意識を変えてしまうなんて……。
これが桜ヶ丘高校生徒会長、神崎蓮の力なんだと思った。
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