キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

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*第2章*

何でそうなるの!?(2)

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 結局化学の実験はギリギリ間に合ったけど、あたしは疲労感たっぷりで、グッタリと実験台に身体を預けた。


「優芽ってば疲れすぎ! 教科書取りに戻っただけで、普通そんなに疲れないでしょ」

「うん、ちょっといろいろあって……」

 そう一息吐いたところで、あたしと結衣のそばに、少し興奮気味のクラスメイトの女の子三人組がやってきた。


「ねえねえ! あたし、さっき見ちゃった!!」

「葉山さんが、生徒会の皆さまに声をかけられてるところ!!」

 きゃっきゃと騒ぎながら、まくし立てるように言う三人組。


「どうやったらあんなに近づけたの!?」

「だって、生徒会メンバーって言えば、各々ファンクラブがついてて、なかなかあたしたちから近づける存在じゃないじゃない!!」

「そうそう! うらやましいなあ~、あたしらにも紹介してよ~」

 一気にそう言われても、あたしも何て言っていいか分からなくて……。


「え、あ、う……」

 しどろもどろになりながら、出てくるのは、答えになってない言葉。


「みんなそろったかー! 実験始めるぞー!」

 だけど、その何とも言い難い雰囲気は、ちょうど入って来た化学の先生によって中断される。

 目の前の三人組は、残念そうに自分たちの実験台へと戻っていった。


 ひとまず助かった……。

 そっと胸を撫で下ろすのも束の間。

 先生の実験の操作方法の説明を聞き流していると、隣から視線を感じてそちらを見る。

 やっぱり結衣が何か言いたげにこちらを見ていた。

 あたしと目が合うと、結衣はすかさず自分の実験ノートにシャーペンで走り書きをする。


『あの生徒会メンバーと知り合いだったの?』

 高校に入学して一番の友達の結衣にも、生徒会メンバーとの出来事は話していなかった。

 話すタイミングが掴めなかっただけで、特別隠していたわけでもないし、むしろ結衣なら隠す必要はない。

 あたしはノートの白いページをちぎって、入学式の日から今日までの出来事を簡単に書いて説明した。


「とにかく大変だったんだね」

 先生の実験の説明と、あたしの説明がほぼ同じタイミングで終わり、ビーカーの中で薬品を混ぜながら結衣が言う。


「でも、ちゃんと優芽の口から聞けて良かったよ」

「うん、ごめんね。なかなか話すタイミングが掴めなくて……」

「いいよいいよ。そんなとこだろうと思ってたし。それに、優芽と生徒会メンバーに何らかの接触があるのは、何となく感じてた」

「え……?」

「妹尾先輩、時々サッカー部の練習に助っ人で入ってくれるんだけど、この前、“優芽ちゃんの友達やんな?”って話しかけられたの」

「そうだったんだ……」

「だけど、まさか無理矢理メンバーに引き込まれてたとは、会長も強引すぎでしょ」

 結衣はあははとおかしそうに笑いながら、目の前のガスバーナーに火をつけた。

 こういうあっさりしたところが、結衣のいいところなんだと思う。


「でもまあ、あまり人目につくところでメンバーにちやほやされるのは避けた方がいいと思うよ?」

「ちやほやって……」

 何もそんな言い方しなくても、そんなんじゃないもん。


「悪く捉えないで。ただ生徒会メンバーのファンクラブを作ってるような先輩方は、優芽のことを良く思わない可能性だって有り得るし、気をつけるだけ、ね?」

 結衣はあたしの顔色をうかがうように言った。

 でも、確かに結衣の言う通りだ。

 上級生に呼び出されてリンチされるとか、この状況なら一般的な少女漫画ではありがちな展開だもん。

 さすがに、それはごめんだよ……。

 フツフツと泡を出しながら色を変化させる試験官の中の薬品を観察しながら、思わず小さなため息が出た。


 *


「……女子の威力ってやべえ」

 放課後、あたしが実験を終えて生徒会室へ向かうと、そんな風に言って会長机に突っ伏す神崎先輩の姿があった。


「あれ? どうされたんですか?」

 すると、赤いソファーに寝転がって雑誌を読んでいた広瀬先輩が上体を起こして答えてくれる。


「あー、蓮の奴、さっきまで女子に捕まって、散々優芽ちゃんについて根掘り葉掘り聞かれてたんだよねー」

「え、あたしのこと、ですか……?」

「まあ、あんだけ派手に廊下で話したんが問題やったんやろうなあ」

 サッカーボールをヘディングしながら口を開く、妹尾先輩。


「でも、優芽ちゃんは生徒会の一員なのに、そうそう周りに騒がれちゃ、僕らも非常に活動しづらいよね」

 笹倉先輩は、今日もアーチェリーの弓矢を引きながら口を開く。


「そうそう! でもだからって俺らが遠慮するのもおかしな話だしさあ~」

 広瀬先輩は不服そうに口を尖らせた。

 やっぱり先輩たちも、あの取り巻きの存在のことを気にしてくれてたんだ……。
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