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*第2章*
何でそうなるの!?(1)
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少しずつ四月も終わりに近づく。
生徒会メンバーとの出会い。
半強制的に入ることになった生徒会執行部。
この一ヶ月、ただ高校に入学したというだけでは片付けられないくらいに、あたしの周りの環境は変化を遂げた。
だけど少しずつそんな高校生活にも慣れてきた中、あたしにはさらなる問題がふりかかっていた。
「おっ、優芽ちゃんじゃん! 優芽ちゃーん!!」
廊下中に響く、明るい声。
それと同時にあたしに向けられる、好奇の眼差し。
化学室へと急いでいたあたしは足を緩めて、声のした方へ顔を向ける。
……やっぱり。
そこには、にこやかな笑みを浮かべて、無邪気にあたしに手を振る広瀬先輩の姿があった。
何人もの女子生徒に取り巻きのように囲まれる姿に、改めて広瀬先輩の人気の高さを感じ取る。
それにくわえて、そばに居た数人の女子生徒が不服そうにあたしを見ている。
うわあ……。
絶対、この人たち先輩だよね……。
「何、あの子?」
「達也のなんなの?」
そんなヒソヒソ声さえ耳に留まって、気が滅入りそうになる。
最近は、二年生の階の廊下を歩く度に生徒会の皆さんが声をかけてきてくれることが増えた。
だけど、今はそれが悩みの種に変わりつつあった。
だって、入学早々上級生に目をつけられることになるなんて……。
先輩たちの気持ちは嬉しいけど、もっと状況を考えてほしいよ……。
あたしはぎこちなく広瀬先輩に苦笑いを浮かべることしかできなかった。
そのまま歩みを早めた瞬間。
──バフンッ。
「ふぎゃあっ!!」
よそ見をしていたあたしは、正面から誰かにぶつかった。
「す、すみませ……」
あたしがそう言い終える前に、頭上から声が降って来る。
「おまえなあ、ちゃんと前見て歩けよ。危ねえだろ?」
「か、神崎先輩!? に皆さんお揃いで……」
顔を上げると、神崎先輩に妹尾先輩に、笹倉先輩の三人が立っていた。
どうやらあたしは、神崎先輩の胸元に顔をぶつけてしまったらしい……。
「それにしても、ふぎゃあって。全然色気のかけらもない悲鳴だったね」
クククと笑う笹倉先輩。
そして、それに神崎先輩と妹尾先輩が続ける。
「確かに。もうちょっと色気ある声くらい上げられねえのかよ」
「まあ、そこが優芽ちゃんらしくて良いねんけどな!」
三人に囲まれたことによって、より周囲の視線が刺さる。
もう、逃げ出したくなってくるよ……。
「優芽ちゃんは、これから化学?」
「え、あ、はい。これから実験で……」
笹倉先輩の問いに答えると、神崎先輩が軽く首をかしげる。
「あれ? 化学の実験って通常の授業開始時刻より早く始まるんじゃなかったか?」
「せやで! 俺、それ知らんとサッカー部の昼練に付き合って、遅刻してめっちゃ絞られたことあるもん」
神崎先輩の言葉に、昔を思い出して身震いする妹尾先輩。
「え……、それは困ります」
昼休みも残り少しとなった中。
教室に忘れた教科書を取りに戻って、再び化学室に急いでる途中だったあたし。
だから、時間がそんなにないことはわかってた。
「今から走ればなんとかなるよ。何なら、僕がおぶろうか?」
笹倉先輩のその言葉に反応した廊下の一部の女子生徒から、悲鳴のような声が上がる。
こんな公衆の面前で、そんな冗談をサラリと言わないでよ……。
あたしがどうしていいか分からずにうつむいていると、神崎先輩の声が降って来る。
「ったく、琉生もいちいちこいつをからかうな。おまえも、琉生の冗談に乗せられてねえで、早く行かねえと遅刻するぞ?」
「ん? 僕は本気だけど?」
「おまえは黙ってろ」
笹倉先輩と神崎先輩のやり取りに呆気に取られていると、妹尾先輩に背中を押される。
「二人にかまってたらほんまに遅刻してまうから、気にせんとはよ行き?」
「は、はい」
「また放課後な!」
あたしはぺこりとお辞儀をして、皆さんに背を向ける。
「優芽ちゃーん! またあとでねー!」
最後にここぞと言わんばかりに、広瀬先輩の明るい声が響いた。
「またあとでだって!?」
「蓮サマとも会話してたし、本当に何なのあの子!!」
「あの子じゃない? 最近、やたらと生徒会のメンバーに取り入ってるってウワサの子」
化学室へと急ぐ中、聞こえる先輩たちの取り巻きの声。
先輩たちに話しかけてもらえること自体、悪い気はしないけど、これだけは勘弁だよ……。
地味でもいいから、平穏に高校生活を送りたいよぉ……。
生徒会メンバーとの出会い。
半強制的に入ることになった生徒会執行部。
この一ヶ月、ただ高校に入学したというだけでは片付けられないくらいに、あたしの周りの環境は変化を遂げた。
だけど少しずつそんな高校生活にも慣れてきた中、あたしにはさらなる問題がふりかかっていた。
「おっ、優芽ちゃんじゃん! 優芽ちゃーん!!」
廊下中に響く、明るい声。
それと同時にあたしに向けられる、好奇の眼差し。
化学室へと急いでいたあたしは足を緩めて、声のした方へ顔を向ける。
……やっぱり。
そこには、にこやかな笑みを浮かべて、無邪気にあたしに手を振る広瀬先輩の姿があった。
何人もの女子生徒に取り巻きのように囲まれる姿に、改めて広瀬先輩の人気の高さを感じ取る。
それにくわえて、そばに居た数人の女子生徒が不服そうにあたしを見ている。
うわあ……。
絶対、この人たち先輩だよね……。
「何、あの子?」
「達也のなんなの?」
そんなヒソヒソ声さえ耳に留まって、気が滅入りそうになる。
最近は、二年生の階の廊下を歩く度に生徒会の皆さんが声をかけてきてくれることが増えた。
だけど、今はそれが悩みの種に変わりつつあった。
だって、入学早々上級生に目をつけられることになるなんて……。
先輩たちの気持ちは嬉しいけど、もっと状況を考えてほしいよ……。
あたしはぎこちなく広瀬先輩に苦笑いを浮かべることしかできなかった。
そのまま歩みを早めた瞬間。
──バフンッ。
「ふぎゃあっ!!」
よそ見をしていたあたしは、正面から誰かにぶつかった。
「す、すみませ……」
あたしがそう言い終える前に、頭上から声が降って来る。
「おまえなあ、ちゃんと前見て歩けよ。危ねえだろ?」
「か、神崎先輩!? に皆さんお揃いで……」
顔を上げると、神崎先輩に妹尾先輩に、笹倉先輩の三人が立っていた。
どうやらあたしは、神崎先輩の胸元に顔をぶつけてしまったらしい……。
「それにしても、ふぎゃあって。全然色気のかけらもない悲鳴だったね」
クククと笑う笹倉先輩。
そして、それに神崎先輩と妹尾先輩が続ける。
「確かに。もうちょっと色気ある声くらい上げられねえのかよ」
「まあ、そこが優芽ちゃんらしくて良いねんけどな!」
三人に囲まれたことによって、より周囲の視線が刺さる。
もう、逃げ出したくなってくるよ……。
「優芽ちゃんは、これから化学?」
「え、あ、はい。これから実験で……」
笹倉先輩の問いに答えると、神崎先輩が軽く首をかしげる。
「あれ? 化学の実験って通常の授業開始時刻より早く始まるんじゃなかったか?」
「せやで! 俺、それ知らんとサッカー部の昼練に付き合って、遅刻してめっちゃ絞られたことあるもん」
神崎先輩の言葉に、昔を思い出して身震いする妹尾先輩。
「え……、それは困ります」
昼休みも残り少しとなった中。
教室に忘れた教科書を取りに戻って、再び化学室に急いでる途中だったあたし。
だから、時間がそんなにないことはわかってた。
「今から走ればなんとかなるよ。何なら、僕がおぶろうか?」
笹倉先輩のその言葉に反応した廊下の一部の女子生徒から、悲鳴のような声が上がる。
こんな公衆の面前で、そんな冗談をサラリと言わないでよ……。
あたしがどうしていいか分からずにうつむいていると、神崎先輩の声が降って来る。
「ったく、琉生もいちいちこいつをからかうな。おまえも、琉生の冗談に乗せられてねえで、早く行かねえと遅刻するぞ?」
「ん? 僕は本気だけど?」
「おまえは黙ってろ」
笹倉先輩と神崎先輩のやり取りに呆気に取られていると、妹尾先輩に背中を押される。
「二人にかまってたらほんまに遅刻してまうから、気にせんとはよ行き?」
「は、はい」
「また放課後な!」
あたしはぺこりとお辞儀をして、皆さんに背を向ける。
「優芽ちゃーん! またあとでねー!」
最後にここぞと言わんばかりに、広瀬先輩の明るい声が響いた。
「またあとでだって!?」
「蓮サマとも会話してたし、本当に何なのあの子!!」
「あの子じゃない? 最近、やたらと生徒会のメンバーに取り入ってるってウワサの子」
化学室へと急ぐ中、聞こえる先輩たちの取り巻きの声。
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