キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

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*第2章*

アブナイ夜の学校(1)

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 家に着く頃には、空はすでに茜色から夜の闇へと変わりつつあった。


「ただいまー」

「あら、お帰り。今日も遅かったわね」

 台所の方から聞こえて来る、母親の声。


「夕飯できるまでもう少しかかりそうだから、先に宿題してきなさい」

 あたしはその声を聞きながら、二階の自分の部屋へと足を運んだ。

 あたしの家は、お父さんとお母さんと、二つ歳の離れた妹の四人家族。

 特別仲が良いわけでも悪いわけでもない、至って普通の家庭だと思う。

 部屋に着くなり、かばんの中身を出したあたしは、愕然とした。


 あれ? ない……。

 あたしはもう一度、かばんの中身を掻き回すように探す。


 やっぱり見つからない……。

 今日出された数学の課題……。

 でも、何でだろう?

 あたし、教室に忘れて帰ってきちゃったのかな……?

 どうしよう……。

 明日の朝提出だから、あたしの頭じゃ今夜のうちにやっておかないと、絶対に間に合わないよ……。

 せっかく仲良くなれた結衣に、友達になって早々に宿題を写させてもらうなんて、申し訳ないし……。

 今ならまだ誰か学校に残ってるかもしれないし、取りに戻った方がいいよね……?


 あたしはお母さんに忘れ物をしたと伝えて、学校までの夜道を走ることにした。

 学校まで徒歩20分弱の距離で、助かったよ……。


 学校に着くも、明かりのついてる部屋はほんの一部で、学校は夜の闇に包まれていた。


 わ……。

 夜の学校って初めて来たけど、思ってた以上に怖いかも……。

 とりあえず、課題だけ持って帰ろう。

 気後れしながらも、あたしはまだ開いていた職員玄関から学校に入り、自分の教室までの道を急いだ。


 薄明かりの中、廊下を歩く。

 自分の足音さえ不気味だよ……。

 まさか、幽霊とか出ないよね……?


 恐る恐る何とか自分の教室の近くの廊下まで来たものの、


「誰だ!」

「きゃあああ!!」

 突然背後から聞こえた声に飛び上がった。


 あたしに浴びせられる、オレンジがかったライト。

 次に聞こえたのは、驚き呆れたような、よく知った人の声だった。


「は? カレー女がこんなところで何してんだよ」

「か、神崎先輩……!? 脅かさないでくださいよ」

「日が落ちる前には家に着くように帰れって言ったよな?」

 うぅ……。

 まさかこんなところで見つかっちゃうなんて……。


「いや、ちょっと忘れ物を……」

「忘れ物……? 何を忘れたんだ?」

「……数学の課題、です」

 あたしの返事に神崎先輩は、はあっと息を吐く。


「課題なんて、明日の朝早めに来てやれば、すぐできるだろうが」

 そう言われてもなあ……。

 神崎先輩はできても、あたしには朝の少ない時間で課題を終わらせるなんて、至難の技……。


「まあ、いい。俺がついてってやるから、課題持ったらすぐに帰れ」

「……は、はい」

 神崎先輩のあとに続いて、すぐそばまで来ていたあたしの教室に足を踏み入れる。


「ほら、早く探せ」

 神崎先輩があたしの机を懐中電灯で照らす。

 あたしが机の中を覗き込むも、その中は空で……。


「あれ……?」

 何で?

 思わず首をかしげてしまった。


「何だよ、見つかんねえのか? どけよ」

 そう言って、あたしを押しのけるようにしてあたしの机の中を覗き込む神崎先輩と、一気に距離が縮まる。

 ふわりと鼻腔をくすぐる神崎先輩の香りと、すぐそばから伝わる体温に一気に心拍数が跳ね上がった。
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