キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

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*第1章*

またおまえかよ!(2)

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「本当にすみません……。あたしができることなら、何でもしますから……」

 どうして良いかわからず、あわあわと両手を合わせて頭を下げる。


「何でも、ねえ……」

 神崎先輩は、ジトッと綺麗な瞳で見下げるようにあたしに視線を向ける。

 やっぱり、こんなので許してなんて、無理だよね……。

 神崎先輩は再びため息を落とすと、


「ちょっとついて来い」

 と言って、あたしに背を向けて歩き出した。


「は、はい……」

 あたしも慌ててそのあとを追った。


 神崎先輩の後ろを歩いているからか、周囲の視線が痛い……。

 かろうじてさっきは食堂内のザワつきである程度掻き消されてたみたいで、あたしたちの騒ぎに気づいてる人の方が少なかったみたいだけど……。

 でも、このチラチラ注がれる視線の中、カレー染みをつけて歩かなきゃならない神崎先輩の方が、よっぽど苦痛だよね……。

 ウワサのイケメン生徒会長が、事故とはいえ、カッターシャツにカレー染み……。

 あああ……、もう絶対神崎先輩に許してもらえないよ……。


「入れよ」

 目的の場所に着いたのか、神崎先輩の声に顔を上げる。

 そこは、生徒会室へと続く部屋の入り口だった。


「お邪魔、します……」

 生徒会室とか、入るの初めてだよ……。

 中学のときも、あたしは生徒会とは無縁だったからなあ。

 でも、ここに連れて来られたってことは、間違いなく生徒会長による生徒指導だよね……。


 生徒会室は二重扉になっているようで、神崎先輩に促されて室内に入ると、再び目の前に扉が現れた。

 神崎先輩が目の前の内扉に手をかけて、視界が開ける。


 目の前に広がる信じられない光景。

 真ん中にずんと置かれた、赤い三人がけのソファーに寝そべって雑誌を眺める広瀬先輩。

 そのソファーの後ろでサッカーボールを操る、小麦色の肌の妹尾先輩。

 そして、妹尾先輩とは反対側のスペースでは、至近距離の的にスポーティーな形の弓で矢を射る、笹倉先輩。

 異様に広い部屋で、明らかに好き勝手してる生徒会メンバー。

 もちろん、その隅にはちゃんと黒板や教卓や長テーブルといった生徒会室らしいものはあるんだけど……。


「蓮、戻ったなら何か言えよ。静かに部屋に入られると気持ち悪……、って、えええ!?」

 ふわふわの髪の広瀬先輩が、読んでいた雑誌をそばらに置いて起き上がる。

 神崎先輩の後ろに立つあたしを見るなり、広瀬先輩は大きな丸い瞳をさらに大きく見開いた。


「何だよ」

 驚き固まる広瀬先輩に、神崎先輩は一言言い放つ。


「誰かと思えば、この前の子やん!? 確か優芽ちゃんやんなあ?」

「へえ、蓮がこの生徒会室に僕ら以外の人間を入れること自体珍しいのに、女の子を連れて来るとはね」

 妹尾先輩も笹倉先輩も手を止めて、次々に口を開く。


「まあ、ちょっと事情があってな」

 そう言って、あたしを見下げる神崎先輩。

 あたしは反射的に身を縮ませた。


「す、すみません……」

「うわっ!! 目だけで女の子脅すなよ、可哀相~」

 あたしのその様子を見てなのか、広瀬先輩が一喝入れる。


「それより、カッターシャツに素敵な食べ染みをつけて食堂から女の子と帰って来た蓮の神経に、僕は拍手を送るよ」

 優しげな表情を崩さないまま、綺麗に微笑む笹倉先輩。

 意外と毒舌……?

 表情と言動が伴ってなくて、逆に怖いです……。


「そ、それは……っ」

 でも、神崎先輩のカッターシャツについてるカッター染みは、神崎先輩の食べ染みなんかじゃないのに……。

 あたしがそのことを伝えようとするも、ようやく喉まで出かけた声は、他の声に掻き消されてしまった。


「ほんまほんま! この色は、蓮の昼飯はカレーライスかカレーうどんやな!」

 確信めいたようにニヤリと笑う妹尾先輩。


「陸人、大正解かも! 蓮のカッターシャツ、見事なカレー臭!!」

 くんくん、と神崎先輩のカッターシャツに鼻を近づけて臭いを嗅ぐ広瀬先輩。

 神崎先輩は広瀬先輩のふわふわの髪の頭を、ガッと手で押さえ付けた。


「うるせえ! 誰が加齢臭だ!!」

「いてえ!! 冗談通じねえな~、加齢臭じゃなくてカレー臭だって!!」

 神崎先輩の手の下から苦し紛れの広瀬先輩の声が聞こえる。
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