キケンな放課後☆生徒会室のお姫様!?

美和優希

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*第1章*

ドタバタな入学式(2)

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「す、すみません!! あ、あたし、行きます!!」

 あたしはとっさに立ち上がり、クルリと後ろを向いて方向転換しようとした。

 しかし……。

 突然立ち上がったのがいけなかったのだろう。

 あたしの身体はフラついて、バランスを崩した。


「……きゃっ」

 再びこけるのかと思い、息を呑んだ瞬間──。


「大丈夫?」

 ふわりとあたしの身体は抱き留められた。


「え……っ」

 見上げると、さっきの優しそうな男子生徒の顔がすぐ近くにあった。


「あ、ありがとうございます」

 中性的な整った顔立ち、どこか艶っぽい瞳があたしに向けられる。


 うわあ、すごく綺麗な人……。

 女子のあたしなんかより、この人の方がずっと綺麗だよ……。


 思わず見とれていると、ふわりと優しく微笑みかけられる。


「あまり見ない顔だけど、新入生? 入学式、もうすぐだけど時間大丈夫?」


 そうだ! 忘れてた!
 これから入学式だった!!


「そ、そうです! だけどあたし、体育館の場所分からなくて……」

「やっぱり新入生だったんだ~! お名前、何て言うの?」


 あたしが最後まで話し終える前に、ふわふわの髪の男子生徒の陽気な声が飛んできた。


「えっと、葉山はやま 優芽ゆめです」

「優芽ちゃんねー! 俺、広瀬ひろせ 達也たつや! この四人、みんな二年だから。よろしく~」


 い、いきなり名前呼び!?

 次の瞬間、あたしの両手は、広瀬先輩にひょいと掴まれる。


「あ、あの……」

 持ち前の大きな瞳を細めて、嬉しそうにあたしと繋いだ両手を上下に揺らす広瀬先輩。

 あたしが戸惑っていると、関西弁の人がぐいっと広瀬先輩の手をあたしの手から引き離してくれた。



「達也、入学早々の新入生に手出すなや! 優芽ちゃん、ごめんな? 因みに俺は、妹尾せのお 陸人りくと っていうねん。よろしくな!」

「は、はい……」


 妹尾先輩は片手で広瀬先輩を押さえ付けたまま、ニッと爽やかな笑みを浮かべた。


「みんな自己紹介始めちゃったね。僕は笹倉ささくら 琉生るい。体育館までは、僕が案内するよ」

 さっきの優しそうな綺麗な先輩は、笹倉先輩って言うんだ……。


 そして、

「あ? 俺も名乗らなきゃなんねーのかよ」

「当たり前やろ!」


 そんな会話が聞こえて振り返ると、さっきあたしがダイブした男子生徒が妹尾先輩に背中を叩かれていた。

 男子生徒は面倒臭そうにあたしを見ると、小さく口を開いた。


神崎かんざき 蓮れん


 それだけ言うと、神崎先輩はあたしに背を向けてスタスタと歩き出した。

 呆然とその後ろ姿を眺めていると、神崎先輩はくるりと振り返ってあたしを見る。


「なにボーッと突っ立ってんだよ。体育館の場所、分かんねえんだろ?」

 再びくるりとあたしに背を向けて歩みを進める神崎先輩。


 え……?


 神崎先輩の意図することが分からずにキョトンとしていると、笹倉先輩がクスリと笑う。


「案内するつもりなら、そう言えばいいのにね」

「ほんまに。蓮らしいっちゃ蓮らしいけど……」

「蓮の奴、素直じゃねーからな。じゃあ、優芽ちゃんも体育館行こっか! 入学早々遅刻はヤバいっしょ?」

「は、はい!」


 広瀬先輩に両肩を優しく押されて、それに誘われるようにあたしも先輩たちも神崎先輩のあとに続いた。



 体育館まで案内してもらったあたしは、先程の先輩たちと別れ、無事に体育館の入口で受付を済ませる。


「それでは葉山さんは、一年三組ね」

「はい」


 体育館に足を踏み入れ、一年三組と書かれた札を持った年配の男の先生のところへ急ぐ。


「間に合って良かった。私は一年三組の担任の澤田です。葉山さんの席はあそこだから」


 名前を告げると先生はそう言って、一箇所だけ空いたパイプ椅子を指し示した。

 ギリギリとはいえ遅刻を免れたあたしは、椅子に腰を下ろすと同時にはああとため息を落とす。


 朝から寝坊するし、迷子になるし、散々だったんだもん……。

 でも、さっきの先輩たち、みんなかっこ良かったなあ……。
 また、会えたらお礼言わなきゃ。


 そのとき、隣から可愛らしい小さな声が聞こえる。


「大丈夫?」

「え? あ、うん」


 あたし、そんなに思いっきりため息ついてたかな……?

 少し恥ずかしくなりながら、声の聞こえた右隣りに顔を向ける。


 か、可愛い……!


 肩くらいまでの黒い艶のあるストレートの髪に、綺麗な目鼻立ちの女の子と目が合う。
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