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4.親子をむすぶいよかんムース
4ー16
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*
「ほらよ」
コンビニから出ると、晃さんからカフェオレを受け取る。
「ありがとうございます。何だかすみません、おごってもらっちゃって」
「別に」
晃さんはブラックコーヒーの缶を開けて口をつけた。
私もそれにならって、受け取ったカフェオレに口をつける。
勢いだけでむすび屋から出てきたけれど、まさかこんなにあっさりと晃さんをつかまえられるとは思わなかった。
それに安堵するのも束の間、問題はここからだ。
「さっきはすみません。気を悪くさせてしまって」
晃さんは何もこたえない。
私の話すら聞いてるのか怪しいけれど、この距離で聞こえてないなんていうことはないだろう。
「余計なことをしてしまったことは承知しています。晃さんにとっては触れられたくないことなのだということも理解してます。それでも、私は最善の方法を考えたかったんです。だって、晃さんはこれまでずっとお母さんのことで苦しんできたんですよね? それなら、もう充分晃さんは苦しんだと思うんです」
このまま終わってほしくなくて、晃さんの目をまっすぐ見ながら、私はさっき言えなかったことを伝えていく。
「お母さんが晃さんにしたことは、私も許せないです。私も同じ立場だったら、今更話し合いだなんてふざけるなって拒絶して、突き放してしまうと思います。そう思うことは、自然なことだと思います」
「…………」
「でも、ずっと抱えてきた“想い”を聞いたら、お母さんだけを責められなくなってしまいました」
打ち明けられたお母さんにとっての真実を思い出して、私は目を伏せる。
不運な境遇は誰のせいでもない。だからといって、間違った選択をして晃さんを傷つけたのは決して許されることではないけれど。
「……おまえは、あの女に同情してるのか?」
同情する価値すらないと言いたげな、冷たい声を投げられる。
けれど、そうじゃない。
「違います。勘違いしないでくだい。私は、お母さんのためにお願いしているわけじゃありません」
「は……?」
「晃さんのためにお願いしているんです」
「俺のためって、意味わかんね。俺の何を知ってそんなこと言って……」
不機嫌そうに言い返してきた晃さんの言葉を遮って、畳み掛けるように声を上げる。
「それなら、晃さんこそお母さんの何を知っているんですか? 晃さんはなぜおじいさんのところに預けられたのか、どうして優しかったお母さんが感情的に晃さんを突き放したのか、知っているのですか?」
部外者の私だけじゃなく、当事者の晃さんですら、全てを知っているようで何も知らない。
突然大好きなお母さんに傷つけられて、訳もわからないままおじいさんに預けられて、何も事情を知らないまま振り回されていただけなのだから。
「……そんなの、知りたくもねえよ」
晃さんは吐き捨てるように口にした。
けれど、本当にそれでいいのだろうか。
「本当は怖いんじゃないですか?」
「何?」
「面と向かって、要らない子だったと言われたらと思うと、怖いんじゃないですか?」
「そんなわけ……」
「それなら、お母さんの話、聞くだけ聞いてあげてください」
私は真剣な瞳で晃さんに訴えかけて、深々と頭を下げる。
「晃さんには、後悔してほしくないんです」
「は? 俺? あの女じゃなくて?」
「はい」
晃さんはこちらの意図を探るように、じっと私を見据える。
その表情からはやはり彼の感情は読み取れない。
けれど、晃さんの心に少しでも届いてほしいと願って、私は続けた。
「そうです。本当は、ずっと知りたかったんじゃないですか? お母さんのこと」
一体あのとき、お母さんに何があったのか。
どうして晃さんを突き放したのか。
「やっと聞けるときがきたんです。これを逃したら、本当のことを聞ける機会を永遠に逃してしまいます」
いくら晃さんは幽霊が見えるとはいえ、いつまでもお母さんがここに留まり続けるとは限らない。
晃さんに伝えることを諦めてしまうかもしれないし、お母さんの中で踏ん切りがついて成仏するかもしれないのだ。
それで良いと決して思えない。知らないまま終わってほしくない。
「ほらよ」
コンビニから出ると、晃さんからカフェオレを受け取る。
「ありがとうございます。何だかすみません、おごってもらっちゃって」
「別に」
晃さんはブラックコーヒーの缶を開けて口をつけた。
私もそれにならって、受け取ったカフェオレに口をつける。
勢いだけでむすび屋から出てきたけれど、まさかこんなにあっさりと晃さんをつかまえられるとは思わなかった。
それに安堵するのも束の間、問題はここからだ。
「さっきはすみません。気を悪くさせてしまって」
晃さんは何もこたえない。
私の話すら聞いてるのか怪しいけれど、この距離で聞こえてないなんていうことはないだろう。
「余計なことをしてしまったことは承知しています。晃さんにとっては触れられたくないことなのだということも理解してます。それでも、私は最善の方法を考えたかったんです。だって、晃さんはこれまでずっとお母さんのことで苦しんできたんですよね? それなら、もう充分晃さんは苦しんだと思うんです」
このまま終わってほしくなくて、晃さんの目をまっすぐ見ながら、私はさっき言えなかったことを伝えていく。
「お母さんが晃さんにしたことは、私も許せないです。私も同じ立場だったら、今更話し合いだなんてふざけるなって拒絶して、突き放してしまうと思います。そう思うことは、自然なことだと思います」
「…………」
「でも、ずっと抱えてきた“想い”を聞いたら、お母さんだけを責められなくなってしまいました」
打ち明けられたお母さんにとっての真実を思い出して、私は目を伏せる。
不運な境遇は誰のせいでもない。だからといって、間違った選択をして晃さんを傷つけたのは決して許されることではないけれど。
「……おまえは、あの女に同情してるのか?」
同情する価値すらないと言いたげな、冷たい声を投げられる。
けれど、そうじゃない。
「違います。勘違いしないでくだい。私は、お母さんのためにお願いしているわけじゃありません」
「は……?」
「晃さんのためにお願いしているんです」
「俺のためって、意味わかんね。俺の何を知ってそんなこと言って……」
不機嫌そうに言い返してきた晃さんの言葉を遮って、畳み掛けるように声を上げる。
「それなら、晃さんこそお母さんの何を知っているんですか? 晃さんはなぜおじいさんのところに預けられたのか、どうして優しかったお母さんが感情的に晃さんを突き放したのか、知っているのですか?」
部外者の私だけじゃなく、当事者の晃さんですら、全てを知っているようで何も知らない。
突然大好きなお母さんに傷つけられて、訳もわからないままおじいさんに預けられて、何も事情を知らないまま振り回されていただけなのだから。
「……そんなの、知りたくもねえよ」
晃さんは吐き捨てるように口にした。
けれど、本当にそれでいいのだろうか。
「本当は怖いんじゃないですか?」
「何?」
「面と向かって、要らない子だったと言われたらと思うと、怖いんじゃないですか?」
「そんなわけ……」
「それなら、お母さんの話、聞くだけ聞いてあげてください」
私は真剣な瞳で晃さんに訴えかけて、深々と頭を下げる。
「晃さんには、後悔してほしくないんです」
「は? 俺? あの女じゃなくて?」
「はい」
晃さんはこちらの意図を探るように、じっと私を見据える。
その表情からはやはり彼の感情は読み取れない。
けれど、晃さんの心に少しでも届いてほしいと願って、私は続けた。
「そうです。本当は、ずっと知りたかったんじゃないですか? お母さんのこと」
一体あのとき、お母さんに何があったのか。
どうして晃さんを突き放したのか。
「やっと聞けるときがきたんです。これを逃したら、本当のことを聞ける機会を永遠に逃してしまいます」
いくら晃さんは幽霊が見えるとはいえ、いつまでもお母さんがここに留まり続けるとは限らない。
晃さんに伝えることを諦めてしまうかもしれないし、お母さんの中で踏ん切りがついて成仏するかもしれないのだ。
それで良いと決して思えない。知らないまま終わってほしくない。
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