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4.親子をむすぶいよかんムース
4ー4
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幼い頃の晃さんは、今のクールな印象とはかけ離れていて、活発で明るくてオープンな性格だったらしい。
それゆえに、晃さんは“見えるものすべて”を、何のためらいもなく周囲に話していたのだそうだ。
自分の目に映るものが、自分以外の大半の人には見えていないだなんて、まだ幼い子どもが知るはずもないのだ。
幽霊が見えてしまう晃さんの体質を、彼のお父さんは受け入れられなかったそうだ。幼い晃さんを気味悪がり、やがて家に帰って来なくなってしまったのだ。
お父さんの仕事の関係で東京に住んでいたらしい晃さんたち親子は、お父さんが出ていったあとも、残されたお母さんと晃さんと二人でそのまま東京で暮らすことを選んだ。
看護師として働いていた晃さんのお母さんが仕事でいいポジションについていたからだそうだ。
お父さんには受け入れてもらえなかった晃さんだけど、誰の目から見ても、お母さんからは愛されていたように見えた。実際に、晃さんとお母さんの仲は良く、上手くやれているようだった。
しかし晃さんが中学生のとき、二人の信頼関係は大きく崩れ去った。
いつも晃さんの話し相手だったお母さんは、話を聞いてくれなくなってしまったのだ。それどころか、晃さんはお母さんに目さえ合わせてもらえなくなった。
お母さんの様子がおかしいことに気づいた晃さんは、少なからずお母さんのことを気にかけて、顔を合わせる度に話しかけていた。
しかし、それから少ししたある日のことだ。幽霊が見えるせいで学校でも浮いていた晃さんの唯一の心の支えだったお母さんは、晃さんを罵倒し突き放したのだ。
『見えないものが見えるあんたなんて気持ち悪い。あんたがいたら、私は幸せになれない』
そのすぐあとのことだった。晃さんが松山に住んでいた母方のおじいさんとその長女の家族──つまり拓也さんやなずなさんたちの家族と暮らすことになったのは。
「晃くん、一緒に住み始めた頃は昔の面影なんて全く残ってなくて、全くしゃべらんくなってたんよ」
お母さんに拒絶された晃さんの負った心の傷は、それだけ大きくて深いものだったということだ。
「今ではそれなりにしゃべってくれるようになったし、昔のように優しい一面も感じられるようにはなったんやけどね。晃くんは今も自分を捨てたお母さんのことも、お父さんのことも許せんみたい」
人には見えないものが見えてしまう。
他人と違う能力は、なかなか快く受け入れてもらえるものではない。
望んで見ているわけではないのに、自分には当たり前に見えているのに、そのことを口にすると、まるでおかしな人のように言われてしまう。
私も経験があるからわかる。
皆には見えていないものについて言ってしまったときの困惑したような顔が、今でも印象深く胸に刻まれている。
友達や、時には両親さえも、得体の知れない何かが見える自分にまるで恐ろしいものを見るような目を向けてくるのだ。
自分が他人と違うのだと気づいてからは、誰から教わったでもなく、私は誰にも自分の視界に映るものについて意識して話題には出さないようになった。
だから今、両親や友達に気味悪がられているということはないと思う。
子どもの頃のことだし、覚えている人もほとんどいないだろう。
けれど一方で、自分が見えているものを他の人にもわかってほしいという気持ちはわからなくもない。
幼い子なら、なおさらそうだろう。
自分の目で見たものを言葉にして伝えていた。たったそれだけのことで、晃さんは結果的に家族を失ってしまったのだ。
*
なずなさんの話を聞いて、大まかな事情はつかめたものの、胸の中は何とも言い難いやるせない気持ちでいっぱいだった。
話を聞く限りでは、お母さんの方が晃さんを突き放している。恨まれるくらいに酷いことをしたにも関わらず、どうして晃さんに会いに来たのだろう。
仮に、お母さんが過去の出来事を謝りに来たのだとしてもおかしいのだ。
晃さんの能力、もしくは晃さんそのものを本当に嫌って突き放したのであれば、幽霊になってまで会いに来ないだろう。
お母さんのやったことに憤りを覚える一方で、矛盾する行動に疑問を感じていた。
それゆえに、晃さんは“見えるものすべて”を、何のためらいもなく周囲に話していたのだそうだ。
自分の目に映るものが、自分以外の大半の人には見えていないだなんて、まだ幼い子どもが知るはずもないのだ。
幽霊が見えてしまう晃さんの体質を、彼のお父さんは受け入れられなかったそうだ。幼い晃さんを気味悪がり、やがて家に帰って来なくなってしまったのだ。
お父さんの仕事の関係で東京に住んでいたらしい晃さんたち親子は、お父さんが出ていったあとも、残されたお母さんと晃さんと二人でそのまま東京で暮らすことを選んだ。
看護師として働いていた晃さんのお母さんが仕事でいいポジションについていたからだそうだ。
お父さんには受け入れてもらえなかった晃さんだけど、誰の目から見ても、お母さんからは愛されていたように見えた。実際に、晃さんとお母さんの仲は良く、上手くやれているようだった。
しかし晃さんが中学生のとき、二人の信頼関係は大きく崩れ去った。
いつも晃さんの話し相手だったお母さんは、話を聞いてくれなくなってしまったのだ。それどころか、晃さんはお母さんに目さえ合わせてもらえなくなった。
お母さんの様子がおかしいことに気づいた晃さんは、少なからずお母さんのことを気にかけて、顔を合わせる度に話しかけていた。
しかし、それから少ししたある日のことだ。幽霊が見えるせいで学校でも浮いていた晃さんの唯一の心の支えだったお母さんは、晃さんを罵倒し突き放したのだ。
『見えないものが見えるあんたなんて気持ち悪い。あんたがいたら、私は幸せになれない』
そのすぐあとのことだった。晃さんが松山に住んでいた母方のおじいさんとその長女の家族──つまり拓也さんやなずなさんたちの家族と暮らすことになったのは。
「晃くん、一緒に住み始めた頃は昔の面影なんて全く残ってなくて、全くしゃべらんくなってたんよ」
お母さんに拒絶された晃さんの負った心の傷は、それだけ大きくて深いものだったということだ。
「今ではそれなりにしゃべってくれるようになったし、昔のように優しい一面も感じられるようにはなったんやけどね。晃くんは今も自分を捨てたお母さんのことも、お父さんのことも許せんみたい」
人には見えないものが見えてしまう。
他人と違う能力は、なかなか快く受け入れてもらえるものではない。
望んで見ているわけではないのに、自分には当たり前に見えているのに、そのことを口にすると、まるでおかしな人のように言われてしまう。
私も経験があるからわかる。
皆には見えていないものについて言ってしまったときの困惑したような顔が、今でも印象深く胸に刻まれている。
友達や、時には両親さえも、得体の知れない何かが見える自分にまるで恐ろしいものを見るような目を向けてくるのだ。
自分が他人と違うのだと気づいてからは、誰から教わったでもなく、私は誰にも自分の視界に映るものについて意識して話題には出さないようになった。
だから今、両親や友達に気味悪がられているということはないと思う。
子どもの頃のことだし、覚えている人もほとんどいないだろう。
けれど一方で、自分が見えているものを他の人にもわかってほしいという気持ちはわからなくもない。
幼い子なら、なおさらそうだろう。
自分の目で見たものを言葉にして伝えていた。たったそれだけのことで、晃さんは結果的に家族を失ってしまったのだ。
*
なずなさんの話を聞いて、大まかな事情はつかめたものの、胸の中は何とも言い難いやるせない気持ちでいっぱいだった。
話を聞く限りでは、お母さんの方が晃さんを突き放している。恨まれるくらいに酷いことをしたにも関わらず、どうして晃さんに会いに来たのだろう。
仮に、お母さんが過去の出来事を謝りに来たのだとしてもおかしいのだ。
晃さんの能力、もしくは晃さんそのものを本当に嫌って突き放したのであれば、幽霊になってまで会いに来ないだろう。
お母さんのやったことに憤りを覚える一方で、矛盾する行動に疑問を感じていた。
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