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第5章
◆俺以外、こいつに触れるの禁止-広夢Side-(3)
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さっき、美姫が言い返したのを見て、一瞬踏みとどまった自分を呪いたい。
ビクッと肩を小さく震わせる美姫。
その汚い手で、美姫に触れてんじゃねーよ!
グッと美姫を抱き寄せて、男から美姫を引き剥がす。
「俺から美姫を奪う? すげぇ自信だな」
「な、夏川、先輩……っ」
1年男子を睨み付けてやると、1年男子はサッと血の気が引いたような表情を浮かべる。
「チャラそうで悪かったな。こう見えて、こっちは大真面目なんだよ! 美姫を想う気持ちも、誰にも負けないって言えるくらいにな」
「……うっ」
まさかさっきの会話を俺に聞かれてるとは思わなかったんだろうな。
言葉に詰まる1年男子に、俺は容赦なく続けた。
「それに……。そんな強引なやり方じゃ美姫を怖がらせるだけだから、マジでやめて」
「そんな、怖がらせるなんて。そんなつもりじゃ……」
「お前にそのつもりがなくても、美姫が怖がってたら一緒だろうが」
実際に俺の腕の中にいる美姫は、少し肩が震えてるし……。
可哀想なことしてんじゃねーよ。
「ほら、わかったならあきらめろ。俺は、誰にもこいつを渡すつもりはねーから」
悔しそうにしながらも、1年男子はその場を走り去っていった。
「……ありがとう。あの子、何回断ってもしつこくて、助かった。でも、何で?」
お礼を言いながらも不思議そうにする美姫。
きっと美姫から見たら、帰ったはずの俺が突然現れたと思ってるんだろう。
「さて、何ででしょう」
「何それ」
だけど、何となく恥ずかしくてはぐらかすと、美姫は少し不服そうに口を尖らせる。
そんな美姫も可愛い。
事あるごとにそう思ってしまう俺は、きっと重症だ。
「ってか、俺のためにあんな風に言い返してくれて、嬉しかった」
「えっ!? 聞いてたの?」
さっきまで口を尖らせてたかと思えば、今度はポッと頬を赤らめる美姫。
「まぁ。でも、男に告白されて困ってたんなら、尚更俺に相談しろよなー」
美姫が強がりなのは知ってるけど、何のための俺だよ。
「で、でも。なるべく丸く事をおさめたいし、広夢くんに迷惑かけたくないし……」
丸く事をおさめたいってなんだよ。
俺が出てきたら、まるで丸く事がおさまらないみたいに聞こえなくね?
「ふーん。美姫がそんなんじゃ、明日から美姫を連れて周りに言って回らないといけないな」
「え? 何を?」
「俺以外、こいつに触れるの禁止。って、広く知らしめないと」
「な、な……っ」
「だって、そうだろ? 変なとこ遠慮して、美姫が怖い思いさせられる方が俺は嫌だよ」
誰よりも、何よりも美姫が大切だから。
美姫のことを傷つけられるくらいなら、できることなら何だってやってやる。
それに、実際に思ってるし。
俺以外の男が美姫に触れるのはやっぱり許せない、って。
そんなつもりはなくても、だ。
俺って、こんなに独占欲強いのな。
でも、それもこれも、美姫がこんなに俺を好きにさせたから。
美姫はそれをわかってるのかな?
いや、きっとわかってないだろうな。
「そのくらい、俺にとって美姫は大切で守りたい女の子なんだから」
途端に頬を真っ赤に染める美姫。
本当に美姫は分かりやすい。
でも、そこがまた好き。
「好きだよ、美姫」
ストレートに想いを伝えると、余計に真っ赤になってうろたえる美姫。
「じゃあ今度こそ俺、帰るな」
そう言って正門の方へ足を向けると、美姫が小走りで駆け寄ってきて、
「私も好きだよ……っ」
俺の耳元で囁くようにそう言った。
俺が好きと言えば、好きと返してくれる美姫。
だけど、照れ屋な美姫のその伝え方に、いつも俺の方がドキドキさせられてるんじゃないかと思ってしまう。
恥ずかしそうに校舎の中に戻って行く美姫の姿を見ながら、思わず頬が緩んだ。
*END*
ビクッと肩を小さく震わせる美姫。
その汚い手で、美姫に触れてんじゃねーよ!
グッと美姫を抱き寄せて、男から美姫を引き剥がす。
「俺から美姫を奪う? すげぇ自信だな」
「な、夏川、先輩……っ」
1年男子を睨み付けてやると、1年男子はサッと血の気が引いたような表情を浮かべる。
「チャラそうで悪かったな。こう見えて、こっちは大真面目なんだよ! 美姫を想う気持ちも、誰にも負けないって言えるくらいにな」
「……うっ」
まさかさっきの会話を俺に聞かれてるとは思わなかったんだろうな。
言葉に詰まる1年男子に、俺は容赦なく続けた。
「それに……。そんな強引なやり方じゃ美姫を怖がらせるだけだから、マジでやめて」
「そんな、怖がらせるなんて。そんなつもりじゃ……」
「お前にそのつもりがなくても、美姫が怖がってたら一緒だろうが」
実際に俺の腕の中にいる美姫は、少し肩が震えてるし……。
可哀想なことしてんじゃねーよ。
「ほら、わかったならあきらめろ。俺は、誰にもこいつを渡すつもりはねーから」
悔しそうにしながらも、1年男子はその場を走り去っていった。
「……ありがとう。あの子、何回断ってもしつこくて、助かった。でも、何で?」
お礼を言いながらも不思議そうにする美姫。
きっと美姫から見たら、帰ったはずの俺が突然現れたと思ってるんだろう。
「さて、何ででしょう」
「何それ」
だけど、何となく恥ずかしくてはぐらかすと、美姫は少し不服そうに口を尖らせる。
そんな美姫も可愛い。
事あるごとにそう思ってしまう俺は、きっと重症だ。
「ってか、俺のためにあんな風に言い返してくれて、嬉しかった」
「えっ!? 聞いてたの?」
さっきまで口を尖らせてたかと思えば、今度はポッと頬を赤らめる美姫。
「まぁ。でも、男に告白されて困ってたんなら、尚更俺に相談しろよなー」
美姫が強がりなのは知ってるけど、何のための俺だよ。
「で、でも。なるべく丸く事をおさめたいし、広夢くんに迷惑かけたくないし……」
丸く事をおさめたいってなんだよ。
俺が出てきたら、まるで丸く事がおさまらないみたいに聞こえなくね?
「ふーん。美姫がそんなんじゃ、明日から美姫を連れて周りに言って回らないといけないな」
「え? 何を?」
「俺以外、こいつに触れるの禁止。って、広く知らしめないと」
「な、な……っ」
「だって、そうだろ? 変なとこ遠慮して、美姫が怖い思いさせられる方が俺は嫌だよ」
誰よりも、何よりも美姫が大切だから。
美姫のことを傷つけられるくらいなら、できることなら何だってやってやる。
それに、実際に思ってるし。
俺以外の男が美姫に触れるのはやっぱり許せない、って。
そんなつもりはなくても、だ。
俺って、こんなに独占欲強いのな。
でも、それもこれも、美姫がこんなに俺を好きにさせたから。
美姫はそれをわかってるのかな?
いや、きっとわかってないだろうな。
「そのくらい、俺にとって美姫は大切で守りたい女の子なんだから」
途端に頬を真っ赤に染める美姫。
本当に美姫は分かりやすい。
でも、そこがまた好き。
「好きだよ、美姫」
ストレートに想いを伝えると、余計に真っ赤になってうろたえる美姫。
「じゃあ今度こそ俺、帰るな」
そう言って正門の方へ足を向けると、美姫が小走りで駆け寄ってきて、
「私も好きだよ……っ」
俺の耳元で囁くようにそう言った。
俺が好きと言えば、好きと返してくれる美姫。
だけど、照れ屋な美姫のその伝え方に、いつも俺の方がドキドキさせられてるんじゃないかと思ってしまう。
恥ずかしそうに校舎の中に戻って行く美姫の姿を見ながら、思わず頬が緩んだ。
*END*
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