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第5章
◆俺以外、こいつに触れるの禁止-広夢Side-(2)
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「で、俺に何の用だよ」
「ああ。生徒会室の前でイチャつかれるの、毎回毎回迷惑だなって思って」
「何だよ。さてはお前、悔しいんだろ」
今日のは確かにイチャついてるって言われても仕方ないかもしれないが、いつもはただ一緒にここまで来て、手を振って別れるだけだ。
それはさすがにイチャついてるって言わないだろ。
「別に。正直、他の男に夢中の女には興味ないんで」
「あっそ。まぁ、いつまでも美姫に興味持たれても迷惑だからいいけどさ」
「っていうか、何、さっきの会話。一緒に住んでるの?」
さっきの、聞かれてたんかよ。
それにこいつ、他の男に夢中の女には興味ないんじゃなかったのか?
「……そこはお前の想像に任せるよ」
本当なら同居してることは他の人たちには極力内緒にしてるから、きっぱり否定するところなのだが。
美姫のことを気にしてるようにしか見えない発言に、俺は思わず意地悪言いたくなった。
そのときだった。
「……篠原美姫さん、居られますか?」
1年生と思われる男子が、生徒会室の中に声をかけていた。
「どうしましたか?」
名指しで呼ばれただけあって、奥から出てきた美姫。
「またあいつか」
「……え?」
「あの1年、二学期入ってから、やたらと篠原さんに絡みに来るんだ。迷惑極まりない」
その1年男子とどこかへ歩いて行く美姫を見て、持田は眉間にシワを寄せてため息を吐き出す。
それは、1年男子に対する嫉妬というより、生徒会長として生徒会メンバーの邪魔をされて困ると言ってるようだった。
「そうか。じゃあ、俺どうせこのあと暇だし、ちょっと見てくるわ」
「……え? ああ」
きょとんとしたような持田の表情に、思わず笑いそうになる。
まさか、俺がここで二人のあとを追うなんて思わなかったんだろうな。
だけど、さすがに目の前で美姫が知らない男と歩いて行く姿を見て、素知らぬフリして帰れねーよ!
……居た!
急に姿が消えたように見えて一瞬焦ったが、校舎と体育館を繋ぐ通路から、体育館裏の方に二人は出ただけだったようだ。
なるべく足音をさせないように、俺も体育館裏の方へと近づく。
すると、1年男子のものと思われる声が聞こえてきた。
「少しは考えてもらえましたか? 俺のこと……」
「……あの、私はこの前もお断りしたはずですが……」
「何でですか! 俺以上に篠原先輩のことを想ってる人はいないですよ? 納得できる理由をください! あれですか? 彼氏がいるからですか!?」
「……それは」
一気に捲し立てられて、少し怯んだ様子を見せる美姫。
いつも凛としたイメージのある学園のヒメだが、意外とそうでもない。
結構、捲し立てられたり、迫られたり、脅されたり、それが男なら尚更美姫は弱い。
美姫の男性恐怖症自体は、日常生活に支障がない程度にまで落ち着いたけれど、それでもやっぱり人より男性に対する警戒心は強い方に思える。
ったく、美姫には困ったら俺に言えっていつも言ってんのに。
しかも、こんなに粘着質な奴から告白されてたなんて……。
「そんなの俺には関係ないです。夏川先輩ってあのチャラそうな先輩ですよね? あんなの、くそ食らえです。必ず夏川先輩より、俺のことを好きにさせてみせますから!」
な……っ!
思わずその1年男子に言い返してやろうと、二人の前に飛び出してしまいそうになった瞬間。
「そんな言い方……っ。ひ、広夢くんは、真面目で、優しくて、私にとってなくてはならない人なの!」
美姫が怒る声が聞こえた。
俺のために怒る美姫を見て、胸が熱くなる。
だけど、グッと俺がその場に踏みとどまったのも束の間。
「そんなに夏川先輩がいいんですか? 篠原先輩がそんなに言うなら、無理やりでも奪ってみせるので」
次の瞬間、1年男子が美姫の肩につかみかかったのが見えて、俺は思わず前に出た。
「ああ。生徒会室の前でイチャつかれるの、毎回毎回迷惑だなって思って」
「何だよ。さてはお前、悔しいんだろ」
今日のは確かにイチャついてるって言われても仕方ないかもしれないが、いつもはただ一緒にここまで来て、手を振って別れるだけだ。
それはさすがにイチャついてるって言わないだろ。
「別に。正直、他の男に夢中の女には興味ないんで」
「あっそ。まぁ、いつまでも美姫に興味持たれても迷惑だからいいけどさ」
「っていうか、何、さっきの会話。一緒に住んでるの?」
さっきの、聞かれてたんかよ。
それにこいつ、他の男に夢中の女には興味ないんじゃなかったのか?
「……そこはお前の想像に任せるよ」
本当なら同居してることは他の人たちには極力内緒にしてるから、きっぱり否定するところなのだが。
美姫のことを気にしてるようにしか見えない発言に、俺は思わず意地悪言いたくなった。
そのときだった。
「……篠原美姫さん、居られますか?」
1年生と思われる男子が、生徒会室の中に声をかけていた。
「どうしましたか?」
名指しで呼ばれただけあって、奥から出てきた美姫。
「またあいつか」
「……え?」
「あの1年、二学期入ってから、やたらと篠原さんに絡みに来るんだ。迷惑極まりない」
その1年男子とどこかへ歩いて行く美姫を見て、持田は眉間にシワを寄せてため息を吐き出す。
それは、1年男子に対する嫉妬というより、生徒会長として生徒会メンバーの邪魔をされて困ると言ってるようだった。
「そうか。じゃあ、俺どうせこのあと暇だし、ちょっと見てくるわ」
「……え? ああ」
きょとんとしたような持田の表情に、思わず笑いそうになる。
まさか、俺がここで二人のあとを追うなんて思わなかったんだろうな。
だけど、さすがに目の前で美姫が知らない男と歩いて行く姿を見て、素知らぬフリして帰れねーよ!
……居た!
急に姿が消えたように見えて一瞬焦ったが、校舎と体育館を繋ぐ通路から、体育館裏の方に二人は出ただけだったようだ。
なるべく足音をさせないように、俺も体育館裏の方へと近づく。
すると、1年男子のものと思われる声が聞こえてきた。
「少しは考えてもらえましたか? 俺のこと……」
「……あの、私はこの前もお断りしたはずですが……」
「何でですか! 俺以上に篠原先輩のことを想ってる人はいないですよ? 納得できる理由をください! あれですか? 彼氏がいるからですか!?」
「……それは」
一気に捲し立てられて、少し怯んだ様子を見せる美姫。
いつも凛としたイメージのある学園のヒメだが、意外とそうでもない。
結構、捲し立てられたり、迫られたり、脅されたり、それが男なら尚更美姫は弱い。
美姫の男性恐怖症自体は、日常生活に支障がない程度にまで落ち着いたけれど、それでもやっぱり人より男性に対する警戒心は強い方に思える。
ったく、美姫には困ったら俺に言えっていつも言ってんのに。
しかも、こんなに粘着質な奴から告白されてたなんて……。
「そんなの俺には関係ないです。夏川先輩ってあのチャラそうな先輩ですよね? あんなの、くそ食らえです。必ず夏川先輩より、俺のことを好きにさせてみせますから!」
な……っ!
思わずその1年男子に言い返してやろうと、二人の前に飛び出してしまいそうになった瞬間。
「そんな言い方……っ。ひ、広夢くんは、真面目で、優しくて、私にとってなくてはならない人なの!」
美姫が怒る声が聞こえた。
俺のために怒る美姫を見て、胸が熱くなる。
だけど、グッと俺がその場に踏みとどまったのも束の間。
「そんなに夏川先輩がいいんですか? 篠原先輩がそんなに言うなら、無理やりでも奪ってみせるので」
次の瞬間、1年男子が美姫の肩につかみかかったのが見えて、俺は思わず前に出た。
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