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第5章
◆俺以外、こいつに触れるの禁止-広夢Side-(1)
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お互いに残りの夏休みは、それぞれの親と過ごした。
俺は何年ぶりかわからないくらいに久しぶりに、父さんとキャンプに行った。
もう父さんと何かをするって歳でもないような気もするが、やっぱり楽しかったし、いい思い出になった。
たまには、こういうのも悪くないって。
きっとそんな風に思えるようになったのも、美姫のおかげ。
父さんにイライラしながら生きてた頃より、ずっと心に余裕が持てているような気がするんだ。
美姫には、本当に感謝してる。
美姫も、美姫のお母さんと楽しい夏休みを過ごせたみたい。
美姫のお母さんは美姫と違ってびっくりするくらいにパワフルだけど、結構あの二人は仲は良さそうだし俺が心配する必要はなさそうだ。
そして、9月の初日。
2学期が始まると同時に、俺と美姫は再び同居生活に戻った。
そうしているうちに9月も半ばに移り、2学期が始まって約半月が経つ。
その間、俺と美姫が付き合っているという噂は、瞬く間に学校内に広まった。
「わーっ、見てみて! さすが学園のヒメはいつ見ても可愛い~!」
「彼氏もカッコいいし、本当に二人、お似合いだよね~」
どこからともなく聞こえて来た会話に、思わず頬が緩むのを感じる。
あの学園のヒメと付き合ってるのが俺だなんて、周りの反応が気にならないと言えば嘘になる。
だけどお世辞でも、周りからはお似合いだと言ってもらえることが多くて、内心ホッとしているのも事実。
「じゃあ今夜はハンバーグにするから、買い物、よろしくね」
「おう! 遅くなりそうなら迎えに学校戻るから、遠慮なく連絡して」
「そ、そんな。悪いよ……っ」
「悪くない。ただでさえ美姫は可愛いんだから、変な奴に襲われないか心配」
放課後。
今日は美姫の生徒会の活動日のため、俺は生徒会室前まで美姫を送った。
まぁ、送ったって言っても、ただ教室から一緒に歩いて来ただけなんだけどな。
「うぅ……っ。そ、そんな、心配しなくても大丈夫だよ……ひゃっ」
心配なのは事実だし、襲われないか不安に思ってるのも本心。
だけど、強がりの表情でそんなことを言う美姫を見ていると、何だか離れ難くなって、思わずきゅっと軽く抱きしめた。
「も、もう! ここ、学校!」
「大丈夫。誰も見てない」
「そういう問題じゃないでしょ!」
真っ赤になって怒る美姫も可愛くて、つい怒らせてしまう悪い俺。
「じゃあ、嫌だった?」
でも、怒るくせに、本心は嫌だって思ってないことも知ってる。
「……もう、広夢くんの意地悪っ!」
「知ってる。だって、意地悪したくなるくらい好きなんだもん」
「~~~~っ。もうもうもうもう!」
俺の胸元をポコポコポコと両手の拳で攻撃してくる美姫。
「──もう! 私だって好きだもん」
俺の胸元に両手の拳を置いたまま、美姫がぼそりと呟く言葉に、思わずドキリとさせられる。
「じゃ、じゃあ私、行くからっ! 気をつけて帰ってね」
そして、美姫は顔を真っ赤にさせたままそう言うと、バタバタと逃げるように生徒会室の中に姿を消した。
何だよ今の。マジで反則だって。
思わず跳ね上がった鼓動を抑えようと、その場で深呼吸をしていると。
「あーあ。結局くっついちゃうなんてな」
どこかつまらなさそうに、そう言う声が耳に届く。
「あ? 結局ってなんだよ。ってか、修学旅行のときは、紛らわしいこと言いやがって」
声のした方を見ると、やっぱり生徒会長の持田が立っていた。
美姫のことを狙ってた奴の一人だ。
そもそも、こいつから美姫に好きな人がいるって聞いたんだよな。
紛らわしい言い方で。
「何? 勘違いしたのはきみだろ? 僕は間違ったことは言ってなかったじゃないか」
確かにそうかもしれない。
だけど、こいつの言い方っていちいちしゃくにさわるっていうか、ムカつくんだよ。
俺は何年ぶりかわからないくらいに久しぶりに、父さんとキャンプに行った。
もう父さんと何かをするって歳でもないような気もするが、やっぱり楽しかったし、いい思い出になった。
たまには、こういうのも悪くないって。
きっとそんな風に思えるようになったのも、美姫のおかげ。
父さんにイライラしながら生きてた頃より、ずっと心に余裕が持てているような気がするんだ。
美姫には、本当に感謝してる。
美姫も、美姫のお母さんと楽しい夏休みを過ごせたみたい。
美姫のお母さんは美姫と違ってびっくりするくらいにパワフルだけど、結構あの二人は仲は良さそうだし俺が心配する必要はなさそうだ。
そして、9月の初日。
2学期が始まると同時に、俺と美姫は再び同居生活に戻った。
そうしているうちに9月も半ばに移り、2学期が始まって約半月が経つ。
その間、俺と美姫が付き合っているという噂は、瞬く間に学校内に広まった。
「わーっ、見てみて! さすが学園のヒメはいつ見ても可愛い~!」
「彼氏もカッコいいし、本当に二人、お似合いだよね~」
どこからともなく聞こえて来た会話に、思わず頬が緩むのを感じる。
あの学園のヒメと付き合ってるのが俺だなんて、周りの反応が気にならないと言えば嘘になる。
だけどお世辞でも、周りからはお似合いだと言ってもらえることが多くて、内心ホッとしているのも事実。
「じゃあ今夜はハンバーグにするから、買い物、よろしくね」
「おう! 遅くなりそうなら迎えに学校戻るから、遠慮なく連絡して」
「そ、そんな。悪いよ……っ」
「悪くない。ただでさえ美姫は可愛いんだから、変な奴に襲われないか心配」
放課後。
今日は美姫の生徒会の活動日のため、俺は生徒会室前まで美姫を送った。
まぁ、送ったって言っても、ただ教室から一緒に歩いて来ただけなんだけどな。
「うぅ……っ。そ、そんな、心配しなくても大丈夫だよ……ひゃっ」
心配なのは事実だし、襲われないか不安に思ってるのも本心。
だけど、強がりの表情でそんなことを言う美姫を見ていると、何だか離れ難くなって、思わずきゅっと軽く抱きしめた。
「も、もう! ここ、学校!」
「大丈夫。誰も見てない」
「そういう問題じゃないでしょ!」
真っ赤になって怒る美姫も可愛くて、つい怒らせてしまう悪い俺。
「じゃあ、嫌だった?」
でも、怒るくせに、本心は嫌だって思ってないことも知ってる。
「……もう、広夢くんの意地悪っ!」
「知ってる。だって、意地悪したくなるくらい好きなんだもん」
「~~~~っ。もうもうもうもう!」
俺の胸元をポコポコポコと両手の拳で攻撃してくる美姫。
「──もう! 私だって好きだもん」
俺の胸元に両手の拳を置いたまま、美姫がぼそりと呟く言葉に、思わずドキリとさせられる。
「じゃ、じゃあ私、行くからっ! 気をつけて帰ってね」
そして、美姫は顔を真っ赤にさせたままそう言うと、バタバタと逃げるように生徒会室の中に姿を消した。
何だよ今の。マジで反則だって。
思わず跳ね上がった鼓動を抑えようと、その場で深呼吸をしていると。
「あーあ。結局くっついちゃうなんてな」
どこかつまらなさそうに、そう言う声が耳に届く。
「あ? 結局ってなんだよ。ってか、修学旅行のときは、紛らわしいこと言いやがって」
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美姫のことを狙ってた奴の一人だ。
そもそも、こいつから美姫に好きな人がいるって聞いたんだよな。
紛らわしい言い方で。
「何? 勘違いしたのはきみだろ? 僕は間違ったことは言ってなかったじゃないか」
確かにそうかもしれない。
だけど、こいつの言い方っていちいちしゃくにさわるっていうか、ムカつくんだよ。
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