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第4章
◇踏み出す勇気-美姫Side-(7)
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「ごめんね。そんな大変な時期に出張に出てて、何も手伝えなくて」
「そんなっ。泰志おじさんにはこれまでおばあちゃんのことで、本当によくしていただいたので……。おばあちゃんも泰志おじさんが来てくれて、喜びます」
おばあちゃんの知り合いの息子さんで、おばあちゃんとも交流があり、私のお母さんの幼なじみであり、お父さんの親友でもあった泰志おじさん。
もともと介護の方の仕事もしていたことがあったんだという泰志おじさんは、時間が許す限りおばあちゃんのことを助けに来てくれていた。
そんな泰志おじさんは、お母さんの仕事が忙しいときは代わりにおばあちゃんの様子を見に来てくれたこともあったくらいだ。
そのくらい私たち家族に対してよくしてもらった泰志おじさんには、本当に感謝してもしきれない。
「あ、どうぞ上がってください。広夢くんも来てますよ」
スリッパを出して、泰志おじさんをおばあちゃんのところにつれていく。
おばあちゃんのところに戻ると、まだお母さんは広夢くんと話しているようだった。
お母さん、よっぽど広夢くんのこと気に入ったんだな。
私が戻ってきたことすら気づかずに話し続けるお母さん。
「え!? じゃあ二人ってまだ付き合ってたわけじゃなかったの!?」
「まぁ……」
って、お母さんったら何を話してるの!
広夢くんも困ってるじゃん……。
「お、お母さん……っ!」
思わずお母さんを呼ぶと、「あら、戻ってきてたのね」とお母さんはばつが悪そうに笑う。
「もう、変なこと話さないでよね。泰志おじさんが来てくれたよ」
「あ、泰志くん。いらっしゃい。日本に戻ってくるの、今日だったのね!」
泰志おじさんはお母さんに誘導されて、おばあちゃんの前で手を合わせる。
「肝心なときに、不在ですみません」
そして泰志おじさんは、本当に申し訳なさそうにそう言った。
「出張中だったんだから仕方ないわよ。それに、ムーくんがたくさん手伝ってくれたから、本当に助かったのよ」
泰志おじさんが広夢くんの方を見たとき、何となく私も隣に座る広夢くんを見た。
……広夢くん……?
だけど、広夢くんは泰志おじさんのことを睨むように見ていたんだ。
え、広夢くんってもしかして泰志おじさん……つまり、広夢くんのお父さんと仲悪かったりするのかな……?
これまで一緒に住んでる間、広夢くんの口からひとつも泰志おじさんのことが語られることはなかった。
私も最初はおばあちゃんのことは触れられたくなくて黙ってたから、泰志おじさんのことについては話さなかったし……。
でも、広夢くんのこんな表情、見たことないよ。
その瞳は嫌悪にあふれてて、まるで汚いものでも見ているような、視線の先にいる相手を軽蔑しているかのようにも見えなくない……。
一体どうしたというのだろう。
ちょっと意地悪だけど優しい広夢くん。
私の知っている彼とは別の人のような雰囲気に、内心思わず戸惑っていた。
「そんなっ。泰志おじさんにはこれまでおばあちゃんのことで、本当によくしていただいたので……。おばあちゃんも泰志おじさんが来てくれて、喜びます」
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もともと介護の方の仕事もしていたことがあったんだという泰志おじさんは、時間が許す限りおばあちゃんのことを助けに来てくれていた。
そんな泰志おじさんは、お母さんの仕事が忙しいときは代わりにおばあちゃんの様子を見に来てくれたこともあったくらいだ。
そのくらい私たち家族に対してよくしてもらった泰志おじさんには、本当に感謝してもしきれない。
「あ、どうぞ上がってください。広夢くんも来てますよ」
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おばあちゃんのところに戻ると、まだお母さんは広夢くんと話しているようだった。
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「まぁ……」
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そして泰志おじさんは、本当に申し訳なさそうにそう言った。
「出張中だったんだから仕方ないわよ。それに、ムーくんがたくさん手伝ってくれたから、本当に助かったのよ」
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……広夢くん……?
だけど、広夢くんは泰志おじさんのことを睨むように見ていたんだ。
え、広夢くんってもしかして泰志おじさん……つまり、広夢くんのお父さんと仲悪かったりするのかな……?
これまで一緒に住んでる間、広夢くんの口からひとつも泰志おじさんのことが語られることはなかった。
私も最初はおばあちゃんのことは触れられたくなくて黙ってたから、泰志おじさんのことについては話さなかったし……。
でも、広夢くんのこんな表情、見たことないよ。
その瞳は嫌悪にあふれてて、まるで汚いものでも見ているような、視線の先にいる相手を軽蔑しているかのようにも見えなくない……。
一体どうしたというのだろう。
ちょっと意地悪だけど優しい広夢くん。
私の知っている彼とは別の人のような雰囲気に、内心思わず戸惑っていた。
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