55 / 79
第4章
◆素直になって-広夢Side-(2)
しおりを挟む
「広夢、さっきから考えてること全部口に出てるから。いつまでもウダウダ言ったって仕方ねーんだから、男なら潔く腹くくれ」
「腹くくれって、お前簡単に言うなよな~」
こんなことを言ってくるが、結人は何だかんだで俺のこの恋を応援してくれている。
信じたい、ずっと一緒にいたいって俺が初めて思った女子だと結人も知ってくれているから。
こんな気持ちのせいで、ちっともサンゴ礁も熱帯魚も視界に入ってるようで入ってこない。
「でも、脈はあると思うぞ?」
ほら、と、まるで励ますかのように結人に言われた言葉に、半ば半信半疑で結人の指し示す方向を見ると、
「ん、あ……っ」
どういうわけか、美姫と目が合ってしまった。
すぐにあからさまに美姫に目をそらされてしまったが……。
何だったんだ? 一体……。
「少なくとも今朝からあんな感じだぞ? よく俺らの方を見てる気がする」
「へ?」
「俺とは目が合わないから、広夢のこと見てんじゃね?」
「でも、なんで……」
「俺が知るわけねーだろ。気になるなら、自分で確かめて来い」
もう一度そっと美姫の方を見るけど、さっきの今で美姫がこっちを見てるわけもなく、俺らとは別の水槽の前で宮園と一緒に持田の話を聞いているようだった。
って、持田……?
「……なんでまた持田も一緒にいるんだよ」
さっきは美姫がこっちを見ていることに気を取られて、全く気がつかなかった。
メラメラとわき上がるジェラシーとひとり葛藤していると、不意に持田がこちらを向いた。
俺と目が合うなり、持田はニヤリとまるで自分が勝者とでも言いたげな目で俺を見下してくる。
毎回毎回、マジでムカつくんだけど!
ぎりぎりと歯ぎしりしてしまいそうになりながら持田の方を睨んでいると、どういうわけか持田は美姫たちに何かを言って、俺の方へ歩いてくる。
「……何だよ」
「まだ何も言ってないのに、突っかかってこないでくれる?」
「いつもお前が俺をイラつかせるようなことしか言わねーからだろ?」
こちらに来た持田と俺が言い合いを始めたことで、隣から結人が呆れたようにため息をつくのが聞こえた。
「今日はきみにひとつ教えてあげるよ」
「あ? だから何だよ」
「篠原さん、好きな人いるみたいだよ」
「は? 誰がそんなこと言ったんだ」
「本人だよ、本人。まぁ、夏川くんは知らなくて当然か」
何だよ。いちいちいちいち言い方がしゃくにさわる。
「それだけ。まぁ、あきらめるあきらめないは、夏川くん次第だから」
持田は言いたいことだけ言うと、再び美姫のところに戻っていった。
美姫に好きなやつ……?
そんなの、初耳だ。
だって、あいつは今まで男が苦手で……。
だけどそうだと思い込んでいただけで、実は違うのかもしれないっていうことなのか?
男が苦手=好きな人がいない、と今の今まで思い込んでいたけれど、男は苦手だとしてもその例外がいる可能性だってあるかもしれない。
今の今まで考えたことなかったけどさ……。
じゃあ誰なんだよ。美姫の好きな奴って!
「……まさか、持田?」
それはあり得る。認めたくないけれど。
あいつは、唯一俺以外の男子で美姫と接点のある男子だから。
「それはないだろ」
「結人、お前いつから」
「最初からいただろうが。めんどくせぇ」
確かにそうだが、めんどくせぇはないだろ。
「なんでそれはないって思うんだよ」
「あの腹黒生徒会長だぞ? もしあいつがヒメと両思いだったら、あんな回りくどい言い方するか?」
言われてみればそうだけどさ……。
じゃあ、一体誰なんだよ!
「そんなに気になるならさ、ヒメにちゃんと告って聞いてみれば? ヒメの好きな奴」
「は? そんなことできるわけねーだろ」
だって美姫に好きな人がいるっていう話が本当なら、俺はフラれること前提で告白しにいくようなもんじゃねーか。
「腹くくれって、お前簡単に言うなよな~」
こんなことを言ってくるが、結人は何だかんだで俺のこの恋を応援してくれている。
信じたい、ずっと一緒にいたいって俺が初めて思った女子だと結人も知ってくれているから。
こんな気持ちのせいで、ちっともサンゴ礁も熱帯魚も視界に入ってるようで入ってこない。
「でも、脈はあると思うぞ?」
ほら、と、まるで励ますかのように結人に言われた言葉に、半ば半信半疑で結人の指し示す方向を見ると、
「ん、あ……っ」
どういうわけか、美姫と目が合ってしまった。
すぐにあからさまに美姫に目をそらされてしまったが……。
何だったんだ? 一体……。
「少なくとも今朝からあんな感じだぞ? よく俺らの方を見てる気がする」
「へ?」
「俺とは目が合わないから、広夢のこと見てんじゃね?」
「でも、なんで……」
「俺が知るわけねーだろ。気になるなら、自分で確かめて来い」
もう一度そっと美姫の方を見るけど、さっきの今で美姫がこっちを見てるわけもなく、俺らとは別の水槽の前で宮園と一緒に持田の話を聞いているようだった。
って、持田……?
「……なんでまた持田も一緒にいるんだよ」
さっきは美姫がこっちを見ていることに気を取られて、全く気がつかなかった。
メラメラとわき上がるジェラシーとひとり葛藤していると、不意に持田がこちらを向いた。
俺と目が合うなり、持田はニヤリとまるで自分が勝者とでも言いたげな目で俺を見下してくる。
毎回毎回、マジでムカつくんだけど!
ぎりぎりと歯ぎしりしてしまいそうになりながら持田の方を睨んでいると、どういうわけか持田は美姫たちに何かを言って、俺の方へ歩いてくる。
「……何だよ」
「まだ何も言ってないのに、突っかかってこないでくれる?」
「いつもお前が俺をイラつかせるようなことしか言わねーからだろ?」
こちらに来た持田と俺が言い合いを始めたことで、隣から結人が呆れたようにため息をつくのが聞こえた。
「今日はきみにひとつ教えてあげるよ」
「あ? だから何だよ」
「篠原さん、好きな人いるみたいだよ」
「は? 誰がそんなこと言ったんだ」
「本人だよ、本人。まぁ、夏川くんは知らなくて当然か」
何だよ。いちいちいちいち言い方がしゃくにさわる。
「それだけ。まぁ、あきらめるあきらめないは、夏川くん次第だから」
持田は言いたいことだけ言うと、再び美姫のところに戻っていった。
美姫に好きなやつ……?
そんなの、初耳だ。
だって、あいつは今まで男が苦手で……。
だけどそうだと思い込んでいただけで、実は違うのかもしれないっていうことなのか?
男が苦手=好きな人がいない、と今の今まで思い込んでいたけれど、男は苦手だとしてもその例外がいる可能性だってあるかもしれない。
今の今まで考えたことなかったけどさ……。
じゃあ誰なんだよ。美姫の好きな奴って!
「……まさか、持田?」
それはあり得る。認めたくないけれど。
あいつは、唯一俺以外の男子で美姫と接点のある男子だから。
「それはないだろ」
「結人、お前いつから」
「最初からいただろうが。めんどくせぇ」
確かにそうだが、めんどくせぇはないだろ。
「なんでそれはないって思うんだよ」
「あの腹黒生徒会長だぞ? もしあいつがヒメと両思いだったら、あんな回りくどい言い方するか?」
言われてみればそうだけどさ……。
じゃあ、一体誰なんだよ!
「そんなに気になるならさ、ヒメにちゃんと告って聞いてみれば? ヒメの好きな奴」
「は? そんなことできるわけねーだろ」
だって美姫に好きな人がいるっていう話が本当なら、俺はフラれること前提で告白しにいくようなもんじゃねーか。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる