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第4章

◆素直になって-広夢Side-(2)

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「広夢、さっきから考えてること全部口に出てるから。いつまでもウダウダ言ったって仕方ねーんだから、男なら潔く腹くくれ」


「腹くくれって、お前簡単に言うなよな~」



 こんなことを言ってくるが、結人は何だかんだで俺のこの恋を応援してくれている。


 信じたい、ずっと一緒にいたいって俺が初めて思った女子だと結人も知ってくれているから。


 こんな気持ちのせいで、ちっともサンゴ礁も熱帯魚も視界に入ってるようで入ってこない。


「でも、脈はあると思うぞ?」


 ほら、と、まるで励ますかのように結人に言われた言葉に、半ば半信半疑で結人の指し示す方向を見ると、



「ん、あ……っ」


 どういうわけか、美姫と目が合ってしまった。


 すぐにあからさまに美姫に目をそらされてしまったが……。


 何だったんだ? 一体……。



「少なくとも今朝からあんな感じだぞ? よく俺らの方を見てる気がする」


「へ?」


「俺とは目が合わないから、広夢のこと見てんじゃね?」


「でも、なんで……」


「俺が知るわけねーだろ。気になるなら、自分で確かめて来い」


 もう一度そっと美姫の方を見るけど、さっきの今で美姫がこっちを見てるわけもなく、俺らとは別の水槽の前で宮園と一緒に持田の話を聞いているようだった。


 って、持田……?


「……なんでまた持田も一緒にいるんだよ」


 さっきは美姫がこっちを見ていることに気を取られて、全く気がつかなかった。


 メラメラとわき上がるジェラシーとひとり葛藤していると、不意に持田がこちらを向いた。


 俺と目が合うなり、持田はニヤリとまるで自分が勝者とでも言いたげな目で俺を見下してくる。


 毎回毎回、マジでムカつくんだけど!


 ぎりぎりと歯ぎしりしてしまいそうになりながら持田の方を睨んでいると、どういうわけか持田は美姫たちに何かを言って、俺の方へ歩いてくる。



「……何だよ」


「まだ何も言ってないのに、突っかかってこないでくれる?」


「いつもお前が俺をイラつかせるようなことしか言わねーからだろ?」

 こちらに来た持田と俺が言い合いを始めたことで、隣から結人が呆れたようにため息をつくのが聞こえた。



「今日はきみにひとつ教えてあげるよ」


「あ? だから何だよ」


「篠原さん、好きな人いるみたいだよ」


「は? 誰がそんなこと言ったんだ」


「本人だよ、本人。まぁ、夏川くんは知らなくて当然か」


 何だよ。いちいちいちいち言い方がしゃくにさわる。


「それだけ。まぁ、あきらめるあきらめないは、夏川くん次第だから」


 持田は言いたいことだけ言うと、再び美姫のところに戻っていった。


 美姫に好きなやつ……?

 そんなの、初耳だ。


 だって、あいつは今まで男が苦手で……。


 だけどそうだと思い込んでいただけで、実は違うのかもしれないっていうことなのか?


 男が苦手=好きな人がいない、と今の今まで思い込んでいたけれど、男は苦手だとしてもその例外がいる可能性だってあるかもしれない。

 今の今まで考えたことなかったけどさ……。


 じゃあ誰なんだよ。美姫の好きな奴って!


「……まさか、持田?」


 それはあり得る。認めたくないけれど。

 あいつは、唯一俺以外の男子で美姫と接点のある男子だから。


「それはないだろ」


「結人、お前いつから」


「最初からいただろうが。めんどくせぇ」


 確かにそうだが、めんどくせぇはないだろ。



「なんでそれはないって思うんだよ」


「あの腹黒生徒会長だぞ? もしあいつがヒメと両思いだったら、あんな回りくどい言い方するか?」


 言われてみればそうだけどさ……。


 じゃあ、一体誰なんだよ!


「そんなに気になるならさ、ヒメにちゃんと告って聞いてみれば? ヒメの好きな奴」


「は? そんなことできるわけねーだろ」


 だって美姫に好きな人がいるっていう話が本当なら、俺はフラれること前提で告白しにいくようなもんじゃねーか。
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