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第4章
◆素直になって-広夢Side-(1)
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美姫から彼女の過去の話を聞いたのは、俺が美姫のことを思い出した直後のことだった。
美姫のその当時の記憶から、俺のことはすっかり抜け落ちてしまってるみたいだったけれど……。
だけど美姫の話を聞いて、美姫はあのときの女の子に間違いないんだと確信した。
──つまり俺は過去、一度美姫に会っていたんだ。
何で今まで気づかなかったんだろう?
こんなに彼女のそばにいたというのに。
あの頃はまだ小学生だったし、仕方ないところもあるのだろうけれど。
男性恐怖症を克服するだなんて、随分無茶させちゃったんだろうな……。
美姫はそのことに関しては自分が決めたことだからと言ってたけどさ。
まあそのおかげで美姫との距離を縮めることができたと言ってもいいくらいなんだから、俺にとってはある意味結果オーライだったのかもしれないけれど。
でもこれ、下手すれば余計に男に対するトラウマを植え付けただけだったよなとも思わなくもない。
そんなことを考えてしまって、美姫に何かを言われたわけではないけれど、配慮のない自分に少し落ち込んでいたのは事実。
しかも美姫のことを特別だと思ってる、だなんて、どう聞いても告白染みたことを言ってしまったし……。
「はぁぁ~」
次の日になっても、あの美姫との会話を思い出す度にいろんな意味でため息が出る。
しかもその俺の告白染みた言葉に対しては、嘘だと思われてるかもしれないっていう……。
ちゃんと“好きだ”ってはっきり伝えられなかった俺も悪いんだろうけどさ。
「またため息かよ。今朝から5回目。昨日のバーベキューのときからは20回目」
「お前、いちいち数えんなよな~」
「そりゃ数えたくもなるだろ。昨日の自由行動で海で泳いでたときのテンションと、まるで違うじゃないか」
その通りなことを言われて、言い返す言葉もない。
そもそも、言い返す気力すら今の俺にはないのだけれど。
目の前の水槽の中には、沖縄のサンゴ礁を再現したという空間が広がっている。
3日目の今日は、俺たちは沖縄の水族館に来ていたんだ。
「ってか、昨日の自由行動でお前が突然抜けたあとからおかしいよな。どうせヒメと密会してたんだろ? 何があった?」
「密会って、お前なぁ。そんなつもりで俺は……っ」
思わず口を開きかけて、ハッとする。
そうだ。美姫がナンパ野郎に絡まれたことは、俺と学年主任と担任以外には知られてないんだ。
それなのに俺がここで口を滑らすわけにもいかないので、不本意ながらに密会ということにしておいた。
「……美姫に、俺の中で美姫が特別だって伝えた」
「は? マジで? 急にどうした」
「どうしたもこうしたも、そういう雰囲気になったんだよ」
さすがに美姫との会話を勝手に暴露してしまうわけにはいかないので、そこに関してははぐらかす。
だけど、結人はそこには触れることなく、
「で、ヒメはなんて?」
淡々とそう聞いてくる。
「信じてもらえなかったよ。嘘だって言われて。他の女子と仲良くしてるからどうとか言ってさ」
「まぁ、お前見た目チャラいもんな」
おいっ!
親友なら少しはフォローしろよ!
あのとき、嫉妬してるのか聞いたら、全否定してたとはいえ顔を真っ赤にしていた美姫。
おいてけぼりを喰らった俺はその場は呆気に取られたとはいえ、あんな表情を見せられて全く期待してないといえば嘘になる。
でも……。相手はあの“ヒメ”だ。
もし、俺の気持ちに気づいてる上で、美姫の本心からの言葉だとしたら……。
俺、この修学旅行から帰ったら、どうやって過ごせばいいんだよ……。
「広夢、さっきからネチネチうざい」
「わっ、何だよいきなり。しかもネチネチって何?」
いろいろ頭の中でぐじゃぐじゃ考えていると、隣から結人にキレられて思わず身をそらす。
美姫のその当時の記憶から、俺のことはすっかり抜け落ちてしまってるみたいだったけれど……。
だけど美姫の話を聞いて、美姫はあのときの女の子に間違いないんだと確信した。
──つまり俺は過去、一度美姫に会っていたんだ。
何で今まで気づかなかったんだろう?
こんなに彼女のそばにいたというのに。
あの頃はまだ小学生だったし、仕方ないところもあるのだろうけれど。
男性恐怖症を克服するだなんて、随分無茶させちゃったんだろうな……。
美姫はそのことに関しては自分が決めたことだからと言ってたけどさ。
まあそのおかげで美姫との距離を縮めることができたと言ってもいいくらいなんだから、俺にとってはある意味結果オーライだったのかもしれないけれど。
でもこれ、下手すれば余計に男に対するトラウマを植え付けただけだったよなとも思わなくもない。
そんなことを考えてしまって、美姫に何かを言われたわけではないけれど、配慮のない自分に少し落ち込んでいたのは事実。
しかも美姫のことを特別だと思ってる、だなんて、どう聞いても告白染みたことを言ってしまったし……。
「はぁぁ~」
次の日になっても、あの美姫との会話を思い出す度にいろんな意味でため息が出る。
しかもその俺の告白染みた言葉に対しては、嘘だと思われてるかもしれないっていう……。
ちゃんと“好きだ”ってはっきり伝えられなかった俺も悪いんだろうけどさ。
「またため息かよ。今朝から5回目。昨日のバーベキューのときからは20回目」
「お前、いちいち数えんなよな~」
「そりゃ数えたくもなるだろ。昨日の自由行動で海で泳いでたときのテンションと、まるで違うじゃないか」
その通りなことを言われて、言い返す言葉もない。
そもそも、言い返す気力すら今の俺にはないのだけれど。
目の前の水槽の中には、沖縄のサンゴ礁を再現したという空間が広がっている。
3日目の今日は、俺たちは沖縄の水族館に来ていたんだ。
「ってか、昨日の自由行動でお前が突然抜けたあとからおかしいよな。どうせヒメと密会してたんだろ? 何があった?」
「密会って、お前なぁ。そんなつもりで俺は……っ」
思わず口を開きかけて、ハッとする。
そうだ。美姫がナンパ野郎に絡まれたことは、俺と学年主任と担任以外には知られてないんだ。
それなのに俺がここで口を滑らすわけにもいかないので、不本意ながらに密会ということにしておいた。
「……美姫に、俺の中で美姫が特別だって伝えた」
「は? マジで? 急にどうした」
「どうしたもこうしたも、そういう雰囲気になったんだよ」
さすがに美姫との会話を勝手に暴露してしまうわけにはいかないので、そこに関してははぐらかす。
だけど、結人はそこには触れることなく、
「で、ヒメはなんて?」
淡々とそう聞いてくる。
「信じてもらえなかったよ。嘘だって言われて。他の女子と仲良くしてるからどうとか言ってさ」
「まぁ、お前見た目チャラいもんな」
おいっ!
親友なら少しはフォローしろよ!
あのとき、嫉妬してるのか聞いたら、全否定してたとはいえ顔を真っ赤にしていた美姫。
おいてけぼりを喰らった俺はその場は呆気に取られたとはいえ、あんな表情を見せられて全く期待してないといえば嘘になる。
でも……。相手はあの“ヒメ”だ。
もし、俺の気持ちに気づいてる上で、美姫の本心からの言葉だとしたら……。
俺、この修学旅行から帰ったら、どうやって過ごせばいいんだよ……。
「広夢、さっきからネチネチうざい」
「わっ、何だよいきなり。しかもネチネチって何?」
いろいろ頭の中でぐじゃぐじゃ考えていると、隣から結人にキレられて思わず身をそらす。
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