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第4章
◆真剣勝負の行方-広夢Side-(5)
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「修学旅行なんだし、仕方ないよ。みんなここぞとばかりに必死なんだから」
呆れ顔で俺にそう言ってくるのは、結人だ。
「はぁ? 何だそれ。こっちの気持ちも考えろよな~?」
自分で言うのも気が引けるが、俺も結人もそれなりにモテるらしい。
以前までの俺なら、誰かに本気になることなんてなかったとはいえ、それでもやっぱり好意を示されたら嬉しかった。
とはいえ、今は美姫以外の奴に好意を寄せられたところで、正直興味すらない。
というより、俺の恋路を邪魔するなと声を大にして言いたい!
そんなこと、言えねーけどさ……。
「ここぞとばかりに必死といえば、あの生徒会長もそうだろうな」
生徒会長と言われて頭に浮かぶのは、持田の姿。
結人に言われなくても、それがこの修学旅行中のイライラの一番の原因だっていうのに……。
「彼、今まで以上に本気でヒメに行動を起こし始めてるよね。俺の目から見ても、この前話した、どっちが先にヒメの心を射止めるかっていうのを意識してると思う」
改めてこうして俺の中で懸念していたことを結人の口から聞かされると、不安になって一人イライラする。
「ほら、また怖い顔」
「うるせっ、もとからこういう顔なんだよ」
「そういう顔するくらいなら、広夢も何か行動起こしなよ」
「は? だって邪魔ばっか入ってそれどころじゃなかっただろ?」
結人だって、ずっと俺と行動してたんだから、そのくらいわかるだろうに。
「邪魔されたとか、言い訳。本当にヒメがほしいなら、そんなの構ってないで奪いに行けよ。お前らしくなくて、見ててこっちがイライラする」
結人の勢いに、思わず言い返す言葉がすぐには出てこなかった。
どうしようもない場面も多々あったが、確かに結人の言うことも一理ある。
明らかに俺が美姫のところに行く前に怯んでしまっていたところもあったから。
ったく、いつから俺はこんなチキンになったんだよ……。
それでいて、口から飛び出すのはかっこ悪い嫉妬や愚痴だらけなんだから、結人のことを不快にさせてしまっていても不思議じゃない。
「……ごめん」
そう思うと、自然とそう言っていた。
「まぁ、別に広夢がそれでいいなら俺は構わないけど。でも、広夢を見る限り納得してないのは一目瞭然なんだから、広夢の後悔がないように、当たってくだけるくらいの覚悟で行ってみろよ」
修学旅行っていう雰囲気を利用して、勢いで行動に起こせたら楽だよ、俺だって。
男が苦手で、最初は俺にも怯えていた美姫。
とはいえ、この前は疲れて眠ってた俺を膝枕で寝かせてくれてたくらいだ。
あのときの美姫が何を思ってたのかはわからない。
だけど、確実に美姫との心の距離は近づいて来てるんじゃないかって思うんだ。
それだけに、下手に行動に出て振り出しに戻ってしまうのを恐れてしまう。
そんな弱い自分がいるのは確かだった。
それで、慎重になりすぎて行動に移せてないところはあったんだと思う。
だけど、そのせいで美姫を他の奴に奪われるのはもっと嫌だ……っ!
「結人、ありがとな。愚痴ってるくらいなら、俺も行動に移すわ」
いくら嫉妬したって、愚痴ってたって何も変わらない。
そんな暇があれば、少しでも多く美姫に絡みに行く。
それが、俺のやり方だったじゃないか。
そう思うと、途端に今までの自分が戻ってくるようだった。
呆れ顔で俺にそう言ってくるのは、結人だ。
「はぁ? 何だそれ。こっちの気持ちも考えろよな~?」
自分で言うのも気が引けるが、俺も結人もそれなりにモテるらしい。
以前までの俺なら、誰かに本気になることなんてなかったとはいえ、それでもやっぱり好意を示されたら嬉しかった。
とはいえ、今は美姫以外の奴に好意を寄せられたところで、正直興味すらない。
というより、俺の恋路を邪魔するなと声を大にして言いたい!
そんなこと、言えねーけどさ……。
「ここぞとばかりに必死といえば、あの生徒会長もそうだろうな」
生徒会長と言われて頭に浮かぶのは、持田の姿。
結人に言われなくても、それがこの修学旅行中のイライラの一番の原因だっていうのに……。
「彼、今まで以上に本気でヒメに行動を起こし始めてるよね。俺の目から見ても、この前話した、どっちが先にヒメの心を射止めるかっていうのを意識してると思う」
改めてこうして俺の中で懸念していたことを結人の口から聞かされると、不安になって一人イライラする。
「ほら、また怖い顔」
「うるせっ、もとからこういう顔なんだよ」
「そういう顔するくらいなら、広夢も何か行動起こしなよ」
「は? だって邪魔ばっか入ってそれどころじゃなかっただろ?」
結人だって、ずっと俺と行動してたんだから、そのくらいわかるだろうに。
「邪魔されたとか、言い訳。本当にヒメがほしいなら、そんなの構ってないで奪いに行けよ。お前らしくなくて、見ててこっちがイライラする」
結人の勢いに、思わず言い返す言葉がすぐには出てこなかった。
どうしようもない場面も多々あったが、確かに結人の言うことも一理ある。
明らかに俺が美姫のところに行く前に怯んでしまっていたところもあったから。
ったく、いつから俺はこんなチキンになったんだよ……。
それでいて、口から飛び出すのはかっこ悪い嫉妬や愚痴だらけなんだから、結人のことを不快にさせてしまっていても不思議じゃない。
「……ごめん」
そう思うと、自然とそう言っていた。
「まぁ、別に広夢がそれでいいなら俺は構わないけど。でも、広夢を見る限り納得してないのは一目瞭然なんだから、広夢の後悔がないように、当たってくだけるくらいの覚悟で行ってみろよ」
修学旅行っていう雰囲気を利用して、勢いで行動に起こせたら楽だよ、俺だって。
男が苦手で、最初は俺にも怯えていた美姫。
とはいえ、この前は疲れて眠ってた俺を膝枕で寝かせてくれてたくらいだ。
あのときの美姫が何を思ってたのかはわからない。
だけど、確実に美姫との心の距離は近づいて来てるんじゃないかって思うんだ。
それだけに、下手に行動に出て振り出しに戻ってしまうのを恐れてしまう。
そんな弱い自分がいるのは確かだった。
それで、慎重になりすぎて行動に移せてないところはあったんだと思う。
だけど、そのせいで美姫を他の奴に奪われるのはもっと嫌だ……っ!
「結人、ありがとな。愚痴ってるくらいなら、俺も行動に移すわ」
いくら嫉妬したって、愚痴ってたって何も変わらない。
そんな暇があれば、少しでも多く美姫に絡みに行く。
それが、俺のやり方だったじゃないか。
そう思うと、途端に今までの自分が戻ってくるようだった。
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