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第4章
◆真剣勝負の行方-広夢Side-(3)
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「冗談だよ。よく描けてると思うよ、広夢にしては」
「“広夢にしては”が余計なんだよ!」
結人から顔をそらせば、再び美姫と持田が楽しそうに会話してる姿が目に入ってイライラする。
くっそ、何をそんなに二人で楽しく話してるんだよ。
どいつもこいつも、マジでイライラする……!
「広夢くん、広夢くん」
そのとき、通路を挟んで隣の女子にツンツンと袖を引っ張られた。
何だよっ!
内心イライラしたまま、振り向けば口の中に何かを突っ込まれる。
「んぐ……っ」
「やーん。んぐっだって! かーわーいーい!」
「可愛くねぇから。変なもん食わせんな!」
「変なものだなんてひどーい! ちゃんとしたお菓子だよ~?」
口に突っ込まれた細長いものの持ち手を持ってみれば、どうやらそれはイチゴ味のポッキーのようだ。
さすがに口に入ったものを突き返すのも気が引けるので、いただくことにした。
口の中に、いちごの甘酸っぱい味が広がっていく。
「最近、広夢くん、以前よりチャラい感じがなくなったよね~? さては好きな子でもできた?」
「ゲホッゲホッ……」
唐突に聞かれた言葉に、思わず激しくむせてしまう。
そもそも、俺は元々チャラくないし。
それに好きな子って……。
「大丈夫~? じゃあやっぱりウワサは本当なんだ」
その声に隣の女子の顔をちゃんと視界に入れると、同じクラスの丸山がつまらなさそうにそう言っている。
丸山とはそんなに親しいってほどではないが、去年から同じクラスで、時々話す程度の女子だ。
「う、ウワサ……?」
「ヒメに本気で惚れた広夢くんが、生徒会長からヒメを奪うのに必死だってウワサ。有名だよ?」
「はぁ!? 持田から奪うって、何だそれ。第一、美姫は持田のじゃねーし」
「聞いた!? 広夢くん、ヒメのこと美姫って呼んでる!」
「聞いた聞いた! え、もしかして広夢くん、ヒメと付き合ってるとか!?」
丸山の隣に座っていた女子も一緒に会話に入ってきて、余計に騒ぎ立てられる。
「や。付き合ってなんかねぇから」
あちゃー。
もう今となっては美姫って呼ぶのが普通になってたとはいえ、この子たちの前ではあえてヒメって呼び方に戻しておいた方が良かったかも……。
「本当? じゃあ、今度うちらと遊びに行こうよ~」
「はぁ?」
だから、何でそうなる!
何で俺が美姫と付き合ってなかったら、この子たちと遊ばなきゃなんないわけ?
席も少し離れてるし、機内の音もそれなりにしている空間の中。まさか美姫にこの会話を聞かれてないかと、特にやましいことを話しているわけではないのに気になって、美姫の方を見てしまう。
すると、バチっと音がしそうな勢いで美姫と目が合って、ヤバイくらいに心臓の鼓動が速まった。
「……ぐっ」
だけどその瞬間、また口の中にポッキーを突っ込まれる感触に丸山の方へと向き直る。
ったく、何すんだよ!
「今ヒメの方見てたでしょ?」
「そ、んなわけねーだろ」
「うっそだぁ。動揺してるの丸わかりだもん」
クククと笑う丸山とその隣の女子。
口の中に突っ込まれたいちごポッキーを仕方なく咀嚼しながら、ふと思う。
まさか、今のも美姫に見られてた?
俺がうっかりしていたとはいえ、離れたところからなら女子に“あーん”されてたようにも見えなくもない光景。
さっき美姫と目が合ったことを思えば、見られてたとしても不思議じゃない。
だけど、再び今度はさりげなく美姫の方を見るも、すでに美姫はこちらを見ることなく持田の話を聞いてるようだった。
それからも丸山のマシンガントークに付き合わされて、沖縄に到着する頃には、すっかり俺は疲れ果ててしまっていた。
隣の座席だったはずの結人は、いつの間にか寝ていて、全然俺のことを助ける気すらなかったし……。
「“広夢にしては”が余計なんだよ!」
結人から顔をそらせば、再び美姫と持田が楽しそうに会話してる姿が目に入ってイライラする。
くっそ、何をそんなに二人で楽しく話してるんだよ。
どいつもこいつも、マジでイライラする……!
「広夢くん、広夢くん」
そのとき、通路を挟んで隣の女子にツンツンと袖を引っ張られた。
何だよっ!
内心イライラしたまま、振り向けば口の中に何かを突っ込まれる。
「んぐ……っ」
「やーん。んぐっだって! かーわーいーい!」
「可愛くねぇから。変なもん食わせんな!」
「変なものだなんてひどーい! ちゃんとしたお菓子だよ~?」
口に突っ込まれた細長いものの持ち手を持ってみれば、どうやらそれはイチゴ味のポッキーのようだ。
さすがに口に入ったものを突き返すのも気が引けるので、いただくことにした。
口の中に、いちごの甘酸っぱい味が広がっていく。
「最近、広夢くん、以前よりチャラい感じがなくなったよね~? さては好きな子でもできた?」
「ゲホッゲホッ……」
唐突に聞かれた言葉に、思わず激しくむせてしまう。
そもそも、俺は元々チャラくないし。
それに好きな子って……。
「大丈夫~? じゃあやっぱりウワサは本当なんだ」
その声に隣の女子の顔をちゃんと視界に入れると、同じクラスの丸山がつまらなさそうにそう言っている。
丸山とはそんなに親しいってほどではないが、去年から同じクラスで、時々話す程度の女子だ。
「う、ウワサ……?」
「ヒメに本気で惚れた広夢くんが、生徒会長からヒメを奪うのに必死だってウワサ。有名だよ?」
「はぁ!? 持田から奪うって、何だそれ。第一、美姫は持田のじゃねーし」
「聞いた!? 広夢くん、ヒメのこと美姫って呼んでる!」
「聞いた聞いた! え、もしかして広夢くん、ヒメと付き合ってるとか!?」
丸山の隣に座っていた女子も一緒に会話に入ってきて、余計に騒ぎ立てられる。
「や。付き合ってなんかねぇから」
あちゃー。
もう今となっては美姫って呼ぶのが普通になってたとはいえ、この子たちの前ではあえてヒメって呼び方に戻しておいた方が良かったかも……。
「本当? じゃあ、今度うちらと遊びに行こうよ~」
「はぁ?」
だから、何でそうなる!
何で俺が美姫と付き合ってなかったら、この子たちと遊ばなきゃなんないわけ?
席も少し離れてるし、機内の音もそれなりにしている空間の中。まさか美姫にこの会話を聞かれてないかと、特にやましいことを話しているわけではないのに気になって、美姫の方を見てしまう。
すると、バチっと音がしそうな勢いで美姫と目が合って、ヤバイくらいに心臓の鼓動が速まった。
「……ぐっ」
だけどその瞬間、また口の中にポッキーを突っ込まれる感触に丸山の方へと向き直る。
ったく、何すんだよ!
「今ヒメの方見てたでしょ?」
「そ、んなわけねーだろ」
「うっそだぁ。動揺してるの丸わかりだもん」
クククと笑う丸山とその隣の女子。
口の中に突っ込まれたいちごポッキーを仕方なく咀嚼しながら、ふと思う。
まさか、今のも美姫に見られてた?
俺がうっかりしていたとはいえ、離れたところからなら女子に“あーん”されてたようにも見えなくもない光景。
さっき美姫と目が合ったことを思えば、見られてたとしても不思議じゃない。
だけど、再び今度はさりげなく美姫の方を見るも、すでに美姫はこちらを見ることなく持田の話を聞いてるようだった。
それからも丸山のマシンガントークに付き合わされて、沖縄に到着する頃には、すっかり俺は疲れ果ててしまっていた。
隣の座席だったはずの結人は、いつの間にか寝ていて、全然俺のことを助ける気すらなかったし……。
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