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第3章
◇真夜中に、膝枕で-美姫Side-(4)
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「ご、ごめんね……」
とっさに目をぎゅっと閉じて謝るけれど、広夢くんからは何の反応もない。
バクバクと大きな音で聞こえる心臓の音だけが聞こえる中、恐る恐る目を開ける。
すると、一瞬起きたように見えた広夢くんだったけど、さっきと同じように寝ているように見えた。
その様子にホッと胸を撫で下ろしたのも束の間──。
「おいて、かないで……っ」
突然聞こえてきた弱々しい声に、驚いて再び広夢くんの方へ視線を落とす。
……寝言?
広夢くんは、やっぱり寝ているように見えるけれど、さっきまで気持ち良さそうに寝ていた顔は今は悲しみに満ちていて、苦しそうに歪んでいる。
「……しんじて、たのに……っ」
どうしたの!?
何か、悪い夢でも見てるのかな……!?
「ひ、広夢くん、大丈夫……っ!?」
あまりに苦しそうな広夢くんを見てられなくて、広夢くんにそう呼びかける。
すると、パチっと目を開けてこちらを見る広夢くん。
「美姫……? 俺……」
さっきまでの苦しそうな表情は一切なくなって、今度は不思議そうに私の顔を見つめる広夢くん。
「あ……」
だけど、広夢くんはキョロキョロと今の状況を確認するような素振りを見せたあと、
「わ、悪い。俺……っ」
まるで私の上から飛び退くように、慌てて上体を起こした。
「や、マジでごめん。その、怖がらせてないか?」
そして、両手を合わせてペコペコと私に向かって頭を下げてくる広夢くん。
「え……、だ、大丈夫。ビックリはしたけど、と、特訓の成果が出てるみたいで……っ」
ううっ、何だかすごく緊張する……。
広夢くんは起きて私から離れていったって言うのに、全然鼓動がおさまらない。
「なら、いいんだけど」
「……あの。もしかして、怖い夢でも見てた?」
「……え?」
「うなされてたから……」
いつも明るくて元気な広夢くんからは想像もつかないような、悲しげで苦しそうな表情。
寝言とはいえ、私には広夢くんの心の叫びのように聞こえて、頭から離れない。
だけど、私の言葉に少し戸惑うような表情を浮かべた広夢くん。
もしかして、聞いちゃいけなかったのかな?
広夢くんはそんな私を見て、いつものような明るい笑みを浮かべると、
「へーき! 何か夢を見てたような気もするけど、美姫の膝枕が気持ちよすぎて忘れたや。にしても、まさか美姫が俺のために膝枕をしてくれるなんてな~」
最後は意地悪な笑みを浮かべて、軽い口調でそう言ってきた。
「あ、あれは、広夢くんが突然倒れてきたからで……っ」
もう、こっちは本気で心配してるのに!
「理由は何であれ、よく眠れたよ。ありがとう。ちょうど時間通りだな」
広夢くんの声にリビングの時計へ視線を動かすと、ちょうど今広夢くんに頼まれた時間になったところのようだった。
再び広夢くんの方へ視線を戻そうとするも、不意に広夢くんの手がこっちに伸びてきて、思わずビクッと身体を縮こませる。
「おっと。さっき膝枕が大丈夫みたいだったからいけると思ったけど、そういうわけではなかったのか」
「……や、そういうわけじゃ」
今のはどちらかと言うと、びっくりしただけだと思うんだけど……。
「何? そんなに俺に頭撫でてほしかったの?」
「や、違うけど」
即答で返すも、なぜかがっかりしたようにうなだれてしまう広夢くん。
だけど次の瞬間には、広夢くんは、両拳を上に突き上げて伸びをした。
「さて、もうひと頑張りするかな。美姫もありがとう。遅くならないうちにゆっくり休んでな」
「広夢くんこそ、無理しすぎないで休んでね」
私の言葉に広夢くんはニカっと笑って、顔の前で片手をピースにして見せてくれたのだった。
とっさに目をぎゅっと閉じて謝るけれど、広夢くんからは何の反応もない。
バクバクと大きな音で聞こえる心臓の音だけが聞こえる中、恐る恐る目を開ける。
すると、一瞬起きたように見えた広夢くんだったけど、さっきと同じように寝ているように見えた。
その様子にホッと胸を撫で下ろしたのも束の間──。
「おいて、かないで……っ」
突然聞こえてきた弱々しい声に、驚いて再び広夢くんの方へ視線を落とす。
……寝言?
広夢くんは、やっぱり寝ているように見えるけれど、さっきまで気持ち良さそうに寝ていた顔は今は悲しみに満ちていて、苦しそうに歪んでいる。
「……しんじて、たのに……っ」
どうしたの!?
何か、悪い夢でも見てるのかな……!?
「ひ、広夢くん、大丈夫……っ!?」
あまりに苦しそうな広夢くんを見てられなくて、広夢くんにそう呼びかける。
すると、パチっと目を開けてこちらを見る広夢くん。
「美姫……? 俺……」
さっきまでの苦しそうな表情は一切なくなって、今度は不思議そうに私の顔を見つめる広夢くん。
「あ……」
だけど、広夢くんはキョロキョロと今の状況を確認するような素振りを見せたあと、
「わ、悪い。俺……っ」
まるで私の上から飛び退くように、慌てて上体を起こした。
「や、マジでごめん。その、怖がらせてないか?」
そして、両手を合わせてペコペコと私に向かって頭を下げてくる広夢くん。
「え……、だ、大丈夫。ビックリはしたけど、と、特訓の成果が出てるみたいで……っ」
ううっ、何だかすごく緊張する……。
広夢くんは起きて私から離れていったって言うのに、全然鼓動がおさまらない。
「なら、いいんだけど」
「……あの。もしかして、怖い夢でも見てた?」
「……え?」
「うなされてたから……」
いつも明るくて元気な広夢くんからは想像もつかないような、悲しげで苦しそうな表情。
寝言とはいえ、私には広夢くんの心の叫びのように聞こえて、頭から離れない。
だけど、私の言葉に少し戸惑うような表情を浮かべた広夢くん。
もしかして、聞いちゃいけなかったのかな?
広夢くんはそんな私を見て、いつものような明るい笑みを浮かべると、
「へーき! 何か夢を見てたような気もするけど、美姫の膝枕が気持ちよすぎて忘れたや。にしても、まさか美姫が俺のために膝枕をしてくれるなんてな~」
最後は意地悪な笑みを浮かべて、軽い口調でそう言ってきた。
「あ、あれは、広夢くんが突然倒れてきたからで……っ」
もう、こっちは本気で心配してるのに!
「理由は何であれ、よく眠れたよ。ありがとう。ちょうど時間通りだな」
広夢くんの声にリビングの時計へ視線を動かすと、ちょうど今広夢くんに頼まれた時間になったところのようだった。
再び広夢くんの方へ視線を戻そうとするも、不意に広夢くんの手がこっちに伸びてきて、思わずビクッと身体を縮こませる。
「おっと。さっき膝枕が大丈夫みたいだったからいけると思ったけど、そういうわけではなかったのか」
「……や、そういうわけじゃ」
今のはどちらかと言うと、びっくりしただけだと思うんだけど……。
「何? そんなに俺に頭撫でてほしかったの?」
「や、違うけど」
即答で返すも、なぜかがっかりしたようにうなだれてしまう広夢くん。
だけど次の瞬間には、広夢くんは、両拳を上に突き上げて伸びをした。
「さて、もうひと頑張りするかな。美姫もありがとう。遅くならないうちにゆっくり休んでな」
「広夢くんこそ、無理しすぎないで休んでね」
私の言葉に広夢くんはニカっと笑って、顔の前で片手をピースにして見せてくれたのだった。
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